最新の北京冬季五輪における各国メダル数

 新型コロナウイルスの影響で1年延期となった第32回夏季五輪東京大会は2021年7月23日に開幕した。

「国際オリンピック委員会(IOC)によると、大会には205か国・地域と難民選手団から選手約1万1000人が参加し、過去最多の33競技339種目に臨む。参加国・地域数は北朝鮮の不参加で当初予定の206から一つ減った。組織的なドーピングに対する制裁により、ロシア選手は「ロシア・オリンピック委員会」(ROC)に所属する個人資格の選手として出場する。難民選手団は、前回の2016年リオデジャネイロ大会に続いて編成され、11か国・地域出身の計29選手が出場登録した」(読売新聞2021.7.24)。

 これまでのオリンピック大会の開催都市、参加国・地域数、参加選手数(夏季のみ)をグラフにした。参加数に影響した主な五輪ボイコットは以下の通りである。


 2016年リオデジャネイロ大会は南米初開催の大会となった。これに続く2020年大会の開催都市は東京に決定した。有力候補のマドリードが敗退したのは2016年の次ぎの2024年の開催地を1924年から100年後にあたる同じヨーロッパのパリにしたいという欧州IOC委員の気持ちが影響したともいわれる。

 夏季五輪については、戦前は欧米中心のオリンピックであったのが、戦後、参加国数は世界各地域に広がり、最近は毎回200カ国を越えている。1924年にはじまった冬季五輪も当初の10カ国台から現在87カ国にまで参加国が増加している。

 やはり4年に一度開催されるサッカー・ワールドカップ大会の出場国数の推移については図録3979参照。

 オリンピックの歴史では、世界大戦による開催中止、また戦後の1970年代から80年代にかけては、人種問題や冷戦の影響でボイコットが起こる大会が多かったが、最近は、総ての国が参加する傾向となっている。

 参加選手数(夏季五輪)は今世紀初頭までは千人以下であったのが、今では1万人を超えている。増加してきた選手数がシドニー以降は抑制的に推移している。スポーツライターの小川勝氏は五輪の規模をめぐる動きについてこう述べている。アテネ、北京、ロンドンと「三大会の間、国際オリンピック委員会(IOC)は、大きくすることに対しては抑制的だった。五輪はすでに十分巨大で、ジャック・ロゲ前会長は、競技数の上限を28に決めることで一定の歯止めをかけていた。しかし、ロンドン五輪のあと、新たに就任したトーマス・バッハ会長の下、IOCは開催都市に対して、20年から実施競技の追加を認めた。しかも、追加した競技の選手は、オリンピック憲章で定めている一大会の選手総数1万500人には含めないと決めたことで、開催都市は、いわゆる「自己責任」で、大会の規模を拡大する権限を手にしたのである」(東京新聞「小川勝の直言タックル」2015年9月28日)。追加競技は1大会限りの実施を前提としている。なお、追加の選手数の上限は500人ということなので、選手数のマックスは1万1千人ということになる。

 2015年9月28日には日本の大会組織委員会はIOCに提案する追加競技を野球・ソフトボール、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの5競技18種目とした。候補競技だったスカッシュやボウリングは落選し、日本でそれほどさかんとはいえないスケートボードが提案されたのは、IOCとの下打ち合わせの中で、IOCの若者路線と米国のスケートボード文化に迎合し、その見返りとして、「世界の一部地域でしか人気のない野球・ソフト、テコンドーと似ている空手も理解されるだろうとする政治的な思惑も働いた」とされる(東京新聞2015.9.26)。

 これらの追加競技について来日外国人選手の宿泊、練習場の確保、あるいは競技会場の整備のコストが膨らむことになる。「過去の五輪を見れば分かることだが、適切に運営すれば、大会の収支は黒字になる。もし赤字になったら東京都や国が補てんすることになる」(小川勝、前掲)。

 下表に夏季五輪の男女別選手数を加えたデータを掲げた。女性選手の割合は、第1回アテネではゼロであったのが、アテネでは40%を超え、ロンドンでは44%、東京では48%と上昇を続けている点が目立っている。

 ロンドンでは参加204の国・地域のすべてが女性選手を送り込むという歴史的な大会となった。「カタールのほかブルネイ、そして最も保守的なイスラム国であるサウジアラビアからも、これまで派遣がなかった女子選手の出場が実現」した(毎日新聞2012.7.28夕)。また「ボクシングに女子種目が採用されて26競技すべてに男女がそろ」った(毎日新聞2012.8.13)。さらに体操の新体操、水泳のシンクロナイズドスイミングといった女性のみの競技があるので当然女性選手の参加率が高くなる。日本の選手団がその例である(図録3980)。

夏季オリンピック大会の一覧
開催都市(国名) 参加国・
地域数
参加
選手数
うち
女性
うち
男性
女性
比率
1896 アテネ大会(ギリシャ) 14 241 0 241 0.0
1900 パリ大会(フランス) 24 997 22 975 2.2
04 セントルイス大会(米国) 12 651 6 645 0.9
08 ロンドン大会(英国) 22 2,008 37 1,971 1.8
12 ストックホルム大会(スウェーデン) 28 2,407 48 2,359 2.0
20 アントワープ大会(ベルギー) 29 2,626 65 2,561 2.5
24 パリ大会(フランス) 44 3,089 135 2,954 4.4
28 アムステルダム大会(オランダ) 46 2,883 277 2,606 9.6
32 ロサンゼルス大会(米国) 37 1,332 126 1,206 9.5
36 ベルリン大会(ドイツ) 49 3,963 331 3,632 8.4
48 ロンドン大会(英国) 59 4,104 390 3,714 9.5
52 ヘルシンキ大会(フィンランド) 69 4,955 519 4,436 10.5
56 メルボルン大会(オーストラリア) 72 3,314 376 2,938 11.3
60 ローマ大会(イタリア) 83 5,338 611 4,727 11.4
64 東京大会(日本) 93 5,151 678 4,473 13.2
68 メキシコ大会(メキシコ) 112 5,516 781 4,735 14.2
72 ミュンヘン大会(西ドイツ) 121 7,134 1,059 6,075 14.8
76 モントリオール大会(カナダ) 92 6,084 1,260 4,824 20.7
80 モスクワ大会(ソ連) 80 5,179 1,115 4,064 21.5
84 ロサンゼルス大会(米国) 140 6,829 1,566 5,263 22.9
88 ソウル大会(韓国) 159 8,391 2,194 6,197 26.1
92 バルセロナ大会(スペイン) 169 9,356 2,704 6,652 28.9
96 アトランタ大会(米国) 197 10,318 3,512 6,806 34.0
2000 シドニー大会(オーストラリア) 199 10,651 4,069 6,582 38.2
04 アテネ大会(ギリシャ) 201 10,625 4,329 6,296 40.7
08 北京(中国) 204 10,942 4,637 6,305 42.4
12 ロンドン(英国) 204 10,568 4,676 5,892 44.2
16 リオデジャネイロ(ブラジル) 205 11,238 5,059 6,179 45.0
21 東京(日本) 205 11,420 5,457 5,963 47.8
24 パリ(フランス)
28 ロサンゼルス(米国)
32 ブリスベン(オーストラリア)
(注)開催地選定で複数都市を競わせ投票で選定する方式は東京が最後(2013年)。24年パリ、28年ロス両五輪は異例の
同時決定(17年)、32年ブリスベンは決定方式を見直しIOCの理事会提案を東京五輪時の総会で決定(2021.7.21)。
(資料)国際オリンピック委員会(IOC)HP、(注)は東京新聞(2021.7.22)

 冬季オリンピックで目立っているのは最近の競技種目数の増加である(下図・下表参照)。もともと種目数は1924年の第1回大会の16からだんだんと増加して来ていたのであるが、特に、ソチ大会ではバンクーバー大会から12種目の大幅増となった。女子ジャンプのように従来競技の延長線上の種目追加もあったが、多くは、フリースタイル・スキーやスノーボードなど若者受けする種目の増加だった。

「NBCで2010年冬季オリンピックを観た米国人の半分以上は50歳以上だった。10代が波長を合わせることは難しかったのである。コカコーラやマクドナルドといった主要なスポンサーにとっても、また放送局や広告主にとっても、これは悪いニュースだった。10代は特に家族の消費習慣に大きな影響をもっているのである」(The Economist February 8th 2014)。

 そこで、IOCが五輪大会の放送権料収入の維持拡大のため、ユーチューブやツイッターでフォローされやすいような種目を増加させたというわけである。ソチ大会での日本のメダルの多くはこうした新種目によるものであり、ソチ大会での日本のメダル成績は、それらが、スピードスケートなど在来型冬季スポーツの不振をかなり補ったものの、やはり補いきれない結果だったと評価せざるを得ないであろう(図録3987参照)。


冬季オリンピック大会の一覧
開催都市(国名) 参加国・
地域数
参加
選手数
競技
種目数
1924 シャモニー・モンブラン(フランス) 16 258 16
28 サンモリッツ(スイス) 25 464 14
32 レークプラシッド(米国) 17 252 14
36 ガルミッシュ・パルテンキルヘン(ドイツ) 28 646 17
48 サンモリッツ(スイス) 28 669 22
52 オスロ(ノルウェー) 30 694 22
56 コンティナダンペッツォ(イタリア) 32 821 24
60 スコーバレー(米国) 30 665 27
64 インスブルック(オーストリア) 36 1,091 34
68 グルノーブル(フランス) 37 1,158 35
72 札幌(日本) 35 1,006 35
76 インスブルック(オーストリア) 37 1,123 37
80 レークプラシッド(米国) 37 1,072 38
84 サラエボ(ユーゴスラビア) 49 1,272 39
88 カルガリー(カナダ) 57 1,423 46
92 アルベールビル(フランス) 64 1,801 57
94 リレハンメル(ノルウェー) 67 1,737 61
98 長野(日本) 72 2,176 68
02 ソルトレークシティ(米国) 77 2,399 78
06 トリノ(イタリア) 80 2,508 84
10 バンクーバー(カナダ) 82 2,566 86
14 ソチ(ロシア) 88 2,780 98
18 平昌(韓国) 92 2,833 102
22 北京(中国) 91 2,872 109
(資料)国際オリンピック委員会(IOC)HPほか

(2009年10月1日収録、2012年6月27日北京データ更新、7月28日更新、8月14日更新、2013年9月8日前日に2010大会開催地が東京に決定、2014年2月8日冬季五輪データを追加、2月23日更新、2月26日冬季種目数増のコメント追加、2015年9月28・29日小川勝氏コメント等追加、2016年8月7日更新、2018年2月8日更新、2021年7月22日更新、7月24日更新、12月25日主な五輪ボイコット表、2022年2月1日参加選手数更新、2月4日北京更新)


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