ここでは、この点について、日本における1981年以来の長期推移と2時点(1981年と2019年)の年齢別の結果を掲げた。 長期推移では「信じている」はほぼ横ばいか、2000年以降はやや上向きの傾向が見て取れる。国際比較の上で日本の重要な特徴となっている「わからない」という回答の多さについては、むしろ、長期的には、やや低下傾向にあるようだ。 最新年の年齢別の値は非常に興味深い結果となっている。すなわち、「信じている」の割合は、16〜34歳の若者層が42.5%と最も高く、65歳以上の高齢者層は36.7%と最も低くなっているのである。 私が若者だったころを思い出すと、老い先短い高齢者は信心深く、未来のある若者は神の事など考えないのが当然という精神態度が普通だった。図に掲げた1981年の段階の年齢別のデータを見ても、50歳以上で「信じている」の割合は最も高く、「信じていない」の割合は最も低くなっている。それから半世紀近くが経過した現代の老若には何と大きな変化が生じているのだろう。 こうした若年層の先祖返りのように見える現象を「若者の保守化」と呼んで、奇異に見たり、嘆いたりする有識者が多いが、むしろ、高齢者の方がヘンな精神性なのだと見た方がよいと思う。つまり、近代的な思想や社会主義の理想に感化された戦後生まれの日本の若者が、当時の精神性を保持したまま高齢となったため、そうした思想や理想には影響されなくなった現代の若者にとっては理解しがたい理想主義に偏った考え方、つまり神を信じるのは無知蒙昧の輩だけだという考え方を高齢者は抱いているのである。実は、神の存在を信じること方が無理のないことなのだ。 これについては、旧社会主義国における一般的な宗教の復活現象と同じようなことが日本で起きていると理解することができる。この点については、図録9521を参照されたい。下には、そこで掲載した主要国における神の存在を信じている年齢別の割合の図を再掲した。神を信じる者が増えた宗教復活国では若い層の方が高齢層より神を信じる割合が高く、神を信じる者が減った脱宗教化の国ではかつての日本と同様に高齢層ほど神を信じる割合が高いことが見て取れる。 (2021年12月12日収録)
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