各国の家庭の蔵書数については、ISSP調査の結果を図録3956aに示したが、ここでは、OECDが行っているPISA調査の結果を掲げる。世界の学校生徒の学力テストであるPISA調査では、生徒の学力に影響を及ぼす可能性のある要素として、親の経済的地位など家庭環境をいろいろ調べているが、ここで取り上げたのは生徒が家庭で読むことのでいる本の冊数である。

 成人対象のISSP調査では回答者の年齢バイアスを避けるために回答者が15歳だった頃の家の蔵書数を調べているが、PISA調査はそもそも対象者が15歳生徒なので直接現在の家の蔵書数をきいている。従って、ISSP調査は過去の蔵書数(日本なら平均して34年前の蔵書数)を聞いているがPISA調査では現在の蔵書数を聞いているのである。

 日本の結果は平均170冊であり、OECD諸国34カ国の中で13位、対象国全体65か国中では14位と比較的蔵書数が多いという結果である。ISSP調査の結果は91冊で、調査対象国38か国中29位と絶対数でも相対順位でも少なかったのと比べると蔵書数はかなり増えているという印象である。

 世界の中で最も蔵書数が多いのはルクセンブルクの234冊であり、韓国の229冊、ハンガリーの222冊、アイスランドの208冊がこれに続いている。ISSP調査ではアイスランドが336冊で世界一多かったが、やや過大評価だったといえよう。

 ヨーロッパの中では北欧、中東欧で蔵書数が多く、ギリシャ、フランス、ポルトガル、イタリアといった南欧で相対的に蔵書数が少ない傾向、あるいは先進国と比べて途上国では蔵書数が少ない傾向はISSP調査と共通である。主要先進国の中では米国が少ないのが目立っている。

(蔵書数と読書率)

 次に、 図録3956aと同様に、蔵書数と読書率との相関を確かめた図を以下に作成した。

 これをみると蔵書数の多い国ほど読書率も高いことが分かる。スウェーデンなどの北欧諸国、エストニアなどのバルト海諸国は蔵書数も読書率も高く、イタリア、スペイン、フランスなどの南欧諸国は両方とも低くなっている。やはり寒暖の差が関係しているとしか思えない。こうした環境の差が子どもの学力と大人の知力の相関関係に影響している点については図録3937参照。

 それにしても文化芸術の国とされるフランスの読書率がこれほど低いとは意外であった。国民の平均像と一部インテリ階層のイメージとは異なるのかも知れない。フランスに関しては恋愛率も通念とは異なって低くなっており、案外の国という印象が否めない(図録2302参照)。


 取り上げている国を蔵書数の多い順に掲げると、OECD諸国は、ルクセンブルク、韓国、ハンガリー、アイスランド、ドイツ、ノルウェー、イスラエル、スウェーデン、オーストラリア、エストニア、ニュージーランド、スペイン、日本、カナダ、オーストリア、チェコ、英国、アイルランド、フィンランド、イタリア、スイス、ベルギー、デンマーク、ギリシャ、オランダ、フランス、ポーランド、スロベニア、米国、スロバキア、ポルトガル、トルコ、チリ、メキシコであり、非OECD諸国では、リヒテンシュタイン、台湾、ラトビア、ロシア、キプロス、モンテネグロ、カタール、シンガポール、リトアニア、ブルガリア、アラブ首長国連邦、上海、ルーマニア、香港、マレーシア、セルビア、カザフスタン、ヨルダン、クロアチア、マカオ、アルゼンチン、ウルグアイ、インドネシア、タイ、ベトナム、アルバニア、ペルー、コスタリカ、チュニジア、ブラジル、コロンビアである。

(2015年10月29日収録)


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