結果を見ると、調査対象38カ国のうち最も家庭の蔵書数が多かったのはアイスランドの平均336冊、最も少なかったのはフィリピンの22冊だった。日本は91冊で多い方から29位となっており、多い方ではない。 設問は、「あなたが15歳の頃」(国によっては14歳、16歳の場合もあり)の家の蔵書数をきいており、例えば日本の場合回答者の平均年齢が49歳であるので、34年前、すなわち1975年頃の状況を尋ねていることになる。 蔵書数の少ない国は途上国が多いことから家庭の蔵書数は所得水準に比例している面があるといえる。ただし、北欧の国の蔵書数が一般に多く、さらにラトビア、エストニア、ロシアなどの蔵書数がドイツ、フランス、英国よりずっと多いところを考え合わせると寒い国かどうかといった要因も働いていると考えられる。外に出たくないほど寒い日が多い国では読書が重要な生活要素となっているのであろう。 図には家に本がなかった家庭の比率も示しておいた。ほぼ蔵書数と逆比例の関係にあるが、もっともこうした蔵書数ゼロの家庭の比率が高かったのはトルコの23.1%であり、フィリピンの15.7%がこれに次いでいる。 ブルガリアは平均蔵書数が128冊と日本の91冊より多いが、蔵書数ゼロの家庭比率は13.4%と日本の3.4%と比較してかなり多い。台湾も同様の状況にある。こうした国では蔵書の多い家と全くない家とに両極に分かれている状態にあるためである。 この点を実際の回答率分布で確認しておこう。以下には日本、韓国、台湾の回答結果を掲げている。回答が最も多くなっているのは、日本と台湾では50冊程度、韓国では100冊程度となっている。また、台湾では1冊もなかったも、500冊程度、1000冊以上も日韓を上回っており、格差が大きいことがうかがえる。 (蔵書数と読書率) 次に、これまで見てきた平均蔵書数と日本の社会生活基本調査やヨーロッパ生活時間調査による読書率との相関図を描いてみると蔵書数の多い国ほど読書率も高いことが分かる(下図参照)。スウェーデンなどの北欧諸国、エストニアなどのバルト海諸国は蔵書数も読書率も高く、スペイン、フランスなどの南欧諸国は両方とも低くなっている。やはり寒暖の差が関係しているとしか思えない。こうした環境の差が子どもの学力と大人の知力の相関関係に影響している点については図録3937参照。
それにしても文化芸術の国とされるフランスの読書率がこれほど低いとは意外であった。国民の平均像と一部インテリ階層のイメージとは異なるのかも知れない。フランスに関しては恋愛率も通念とは異なって低くなっており、案外の国という印象が否めない(図録2302参照)。 調査対象の38カ国は蔵書数の多い順に、アイスランド、エストニア、ラトビア、ノルウェー、スウェーデン、ロシア、スイス、デンマーク、イスラエル、ニュージーランド、チェコ、オーストリア、フィンランド、ドイツ、ブルガリア、オーストラリア、ポーランド、ハンガリー、米国、英国、韓国、フランス、台湾、スペイン、スロベニア、ウクライナ、ベルギー、スロバキア、日本、クロアチア、アルゼンチン、キプロス、ポルトガル、チリ、中国、トルコ、南アフリカ、フィリピンである。
(2012年11月9日収録、2013年3月12日計算ミス訂正、2013年3月23日NHK番組紹介、2014年7月2日NHK番組紹介をコラム化、2015年7月11日日韓台の回答分布図追加)
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