サービス経済化による地域平準化効果などで日本の失業率の地域別格差が縮小傾向にあることは図録7362でふれた。地域別格差縮小の主要な要因がサービス経済化であるとするなら、脱工業化が進む先進国に共通の経済構造の変化なので失業率の地域格差も縮小傾向が各国共通である筈である。

 この点を確認するため、OECDのデータベースを使って、主要先進国における国内各地域の失業率のばらつき度(変動係数)の推移をグラフにした。

 失業率の地域格差の大きさは、ほぼ、@イタリア > Aカナダ・ドイツ > Bオランダ・米国・英国・韓国 > Cフランス・日本という順番になっていたが、最近は英米が多分コロナの影響で格差が拡大したのでAとBのグループは同一水準となっている。

 これは最大と最小の差で比較している図録3090の結果とほぼ一致している。

 イタリアはもともと国内の経済格差が大きいことで知られ、それは南北問題と呼ばれている。失業率にもそれがあらわれているのである。例えば、2021年の失業率はイタリア南部の上位2州のカンパニア州とシチリア州ではそれぞれ、19.3%、18.7%であるのに対して、北端に位置する下位2地域のボルツァーノ自治県域、トレント自治県域は、それぞれ、3.8%、4.8%と差が大きいいる(以上、データは図の資料による)。

 ドイツは旧東西ドイツの格差が根強く変動係数もかなり高かったが、徐々に格差は解消されつつある。

 ここで注目するのは、変動係数から見た各国の地域格差の推移についての長期的な傾向である。結論からいえば、ほぼ横ばい傾向に近い米国と韓国を除いて、いずれの国も低下傾向にあることが分かる。

 主要先進国に関して、国民の間の経済格差は拡大傾向にあるにもかかわらず(所得格差の拡大については図録4652a)、これとは対照的に失業率の地域格差に関しては拡大傾向にある国はひとつもないのである。

 これには、やはり、各国で進むサービス経済化の地域平準化効果によるものと考えるの妥当なようである。

(2022年12月10日収録)


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