犯罪の件数は警察が犯罪を察知した犯罪認知件数であらわされる。ところが外国人の犯罪かどうかは捕まえて見なくては確かなことは分からない。そこで外国人犯罪の推移を外国人検挙人員の推移で追うこととする。 外国人といっても、仕事等で来日し、いずれ帰国する外国人と日本に定着している外国人(実態上は在日の韓国・朝鮮人や中国人が大半を占める)とに分かれる。犯罪統計では前者を「来日外国人」、後者を「その他の外国人」とあらわしている。外国人犯罪が増えているという場合、来日外国人の犯罪を指しているので来日外国人の検挙人員に着目する。いわゆる外国人労働者という概念に対応するのは来日外国人であろう。 外国人の犯罪といっても、来日外国人の犯罪とその他外国人の犯罪とでは、動向がまったく異なる。1980年代に来日外国人の犯罪は急増したが、逆にその他の外国人の犯罪は急減した。1991年以降は前者が後者を上回るに至っている。その他の外国人の犯罪はその後横ばいの推移を続けた後、2002年以降いったん増加し再度減少した(その他外国人の検挙人員のうち韓国人、中国人以外で最も多いブラジル人やフィリピン人は200人を少し上回る程度なのでこれらの犯罪増加では説明できない)。 来日外国人の検挙人員に着目して外国人犯罪の動きを追ってみよう。来日外国人の検挙人員は1980年代後半以降急増した。1985年の1,370人が1993年のピーク7,276人へと8年間で実に5.3倍となった。別の図録で港湾を出入りする貨物の中で国内貨物と貿易貨物との動きから1984年をグローバリゼーション元年としたことがあるが(図録6700参照)、外国人犯罪においても1980年代半ばは画期的な時期だったといえる。 バブル経済崩壊後、1993年から98年にかけても時期は、外国人犯罪は、むしろ減少した。そしてそれ以降再度増加に転じ、2004年には8,900人と再度のピークを見た。 このように外国人犯罪の値は確かに大きく増加してきているのである。しからば検挙人員総数に占める外国人犯罪の比率(外国人犯罪比率)はいかなる推移を辿っているか。1993年の第1次のピークには外国人犯罪比率は2.4%に達した。その後、第2のピークの2003年では2.3%であり、最近2013年は2.1%である。つまり、比率的にはこの10年間やや下がってきている。日本人の犯罪検挙人員とほぼパラレルに推移している側面が大きいと見られる。 この約2%という水準であるが、外国人労働者の比率が1%である(図録3830)ので、2倍の検挙人員となっている。従って、外国人犯罪は多いと評価できる。しかし、最近になって多くなったとは必ずしも言えないようだ。 ここでは検挙人員の比率で分析したが、検挙件数では5%をこえる。外国人犯罪の多さを際立たせるには検挙件数ベースをあげたほうがよい。 凶悪犯罪、組織犯罪といった犯罪の中でも目立った犯罪について外国人の活躍が目立つようになっており、こうした点から分析するとまた異なった絵が描ける。ここでは一般刑法犯全体の動きにフォローに限定した。 次ぎに、それでは外国人犯罪はどのような国籍、出身地の者が犯しているのであるかを見よう。第2の図に国籍別の検挙人員の推移を掲げた。これを見ると中国人の犯罪比率が非常に高いことが分かる。次ぎにブラジル人であり、一時期増加が目立っていた(最近は不況による帰国で特に減っている)。これに次いで多いのは、韓国人、ベトナム人、フィリピン人である。国籍別外国人数と比較するとある種興味深い結果となっている(図録1180参照)。2013年にはベトナム人の検挙人数が急増し、減少を続けていた来日外国人の検挙人数の久しぶりの増加にむすびついた点が目立っている。 (2007年5月28日収録、2009年10月28日更新、2011年12月28日更新、2015年2月21日更新、9月28日更新)
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