日本は海外移民受入による人口増効果は他国と比べ非常に小さいが(図録1170参照)、それでも在留外国人(旧登録外国人)数の推移を見ると、外国人は2002年末の185万人から2022年末の308万人へと20年で1.7倍となっている。特に90年代末からの増加が目立っている。リーマンショック後の不況や東日本大震災、新型コロナの影響で減少する年次もあったが、基本的には増勢が続いている。

 2023年6月末の在留外国人は322万3.858人、対前期増減率8.8%となり、22年12月末の対前期増減率11.4%を若干下回っており、コロナによる落ち込みからの回復度合いはやや落ち着いた。

 データは法務省の在留外国人統計(旧登録外国人統計)。外国人登録の廃止については巻末コラム参照。都道府県別の分布については図録7350参照。外国人が目立っている市区町村については図録7352参照。外国人留学生数の推移については図録6143参照。

 2020年末には前年の293万人から289万人へと2012年以来はじめて在留外国人が減少した。新型コロナの感染拡大の影響と見られる。減少は中国人が多く、ベトナム人はむしろ増加している。その後、2021年末には、さらに、今度はベトナム人を含め、全般的に外国人数は減少した。2022年末には韓国・朝鮮の特別永住者を除いて総じて増加に転じ、特にベトナム、フィリピンでは過去最多となっている。中国は過去最多の88万人を下回る82万人となっている。

 2009年末には前年の222万人から3万人減とはじめて登録外国人数が減少した。これは、前年リーマンショック後の製造業不況により在日ブラジル人が31万人から27万人へと急減した影響である。さらに2010年末もブラジル・ペルー人の減少により6万人減の213万人となった。韓国・朝鮮人の傾向的減少、中国人の傾向的な増加には変化はない。

 さらに2011年末にかけて、2011年3月11日の東日本大震災とそれに伴う原発災害によりそれまで増加を続けてきた中国人が69万人から67万人へとはじめて減少したほか、ブラジル人や韓国人も減少したため、2011年末には合計で208万人と前年と比較し5万人の減少となった。さらに2012年末にも203万人と対前年で5万人減っている。これは、ほとんどの国籍の外国人が減ったためである。

 ところが、4年連続の減少の後、2013年末からは、再度、増加傾向に転じ、2015年末にはついに過去最多を更新し、それ以降も過去最多を更新し続けている。

 長期的には、1980年代後半からの増勢が目立っている。それまでの在日韓国・朝鮮人が60万人でほぼ一定という状況から、1980年代後半以降、中国人、ブラジル人、フィリピン人、ベトナム人など多国籍化が進むという変化が顕著である。

 国勢調査の外国人人口の長期推移を下図に掲げた。1980年代後半〜1990年代前半の時期に高まった外国人人口増の動きが、その後、低下に転じていたが、2010年代の後半に再度、かつてないほどの増勢に転じたことがうかがわれる。


 国籍(出身地)別には、特別永住者が多数を占める韓国・朝鮮人は従来外国人のほとんどを占めていたが近年は高齢化とともに減少を続けている。他方、中国人、フィリピン人、ベトナム人が20年間で大きく増加している。増加数規模では中国人の増加が同期間に58.4万人増と全体の増加数137.7万人の約半分を占めており特に目立っている。ブラジル人、ペルー人は日系人として製造業の働き手として一時期多く流入したが、リーマンショック以降、減少傾向が続いた(もっとも16年以降は再度増加に転じた)。それに代わって、最近は、留学や技能研修で滞在するベトナム人やネパール人などの増加が目立っている。

 2007年末以降には中国人がそれまで最多だった韓国・朝鮮人を上回っている。2017年末にはベトナムがフィリピンを上回り、今や中国の半分近くにまで達している点が目立っている。

 韓国・朝鮮人でも特別永住者以外は増加している。韓国・朝鮮人特別永住者は1998年末の53万人から2018年末の32万人へと21万人の減であるが、特別永住者以外は同時期に11万人から16万人へと5万人の増である。ただ近年は特別永住者以外も横ばい傾向である。

 ニューカマーと呼ばれるブラジル、ペルーなどの日系南米人は、1990年の入管法改正により新たに国内での求職、就労、転職に制限のない「定住者」資格が付与され、自動車産業の下請企業、業務請負業者等に雇用され急増するようになったものである。なお、2008年末から世界経済危機に伴う自動車産業の低迷で帰国した者も多くブラジル人は当時減少した。

 飲食店や興行で働く女性が多いフィリピン人の来日経緯については図録8160参照。国籍別の外国人の状況は、それぞれの人口ピラミッドのかたちに反映している。この点については図録1187参照。

 国勢調査では国籍別人口について産業別就業者数、失業者数を集計している。これを見ると、ブラジル人、ペルー人、ベトナム人は製造業就業比率が5割以上と高い。ブラジル人の失業率は2000年から5年ごとに、3.1%、4.7%、9.2%、6.4%となっており、リーマンショック後の2010年にかなり上昇し、その後低下したことが分かる。これに対し、ベトナム人、インドネシア人の失業率は概して相対的に低い。

 中国人、フィリピン人、タイ人は3次産業就業者が比較的多く、その結果製造業比率は4割前後とブラジル人等と比較して低い。失業率は日本人並みである。インド人は飲食業が多いと見られ、製造業比率も失業率もさらに低い。また、韓国・朝鮮人は失業率が7%台と日本人よりかなり高く、米国人、英国人はビジネス派遣や在日米軍関係が多いと見られ失業率も3%前後とかなり低い。このように、外国人は国籍別に日本経済における位置づけが大きく異なっている。 


【コラム】外国人登録の廃止と住民登録への移行

 住民基本台帳法などの改正で2012年7月9日、在日外国人の外国人登録が廃止され住民登録に移行した。改正法では3カ月を超えて合法的に日本に滞在する外国人に対し、外国人登録証に代わる身分証を発行するとともに、日本人と同様に住民票を作成する(東京新聞7月2日、以下同様)。

 制度変更に当たっては、5月7日時点で外国人登録されていた人の「仮住民票」を作成、登録住所に送付し本人に確認してもらった上で正式な住民票に移行させる。

 ところが、送った仮住民票が宛先不明などで戻ってくるケースが続出している。横浜市で15%、東京都新宿区で29%、大阪市で5%、浜松市で12%、長野県飯田市で4%が返送されたという。多くは転居したとみられるが旅行中などの可能性もある。

 この図録の外国人数も2012年末から影響を受けている可能性がある。

(2004年9月15日収録、2005年5月9日長期時系列追加、2005年12月14日更新、2008年5月12日、7月10日、8月22日更新、2009年9月10日更新、2010年7月12日更新、2011年6月27日更新、2012年6月13日更新、7月3日コラム追加、11月12日国籍別失業率・製造業比率更新、2013年6月20日更新、2014年5月6日更新、9月30日正誤表に基づき補正、2015年4月29日更新、台湾を含める、5月13日いったん欠落してしまった国勢調査データ再掲載、2016年3月19日更新、4月6日特別永住者数追加、2017年3月31日更新、4月27日国調就業データ更新、2018年6月29日更新、2019年7月25日更新、2020年8月16日更新、2021年2月15日図中表ベトナム人増減数の誤り修正、7月18日更新、2022年1月16日国調外国人人口推移、7月18日更新、2023年10月14日更新)


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