この調査の日本に関する結果から、ここでは、自殺、同性愛、離婚といった倫理規範に関する許容度をグラフ化した。許容度は「全く間違っている」の1から「全く正しい」の10までの10段階評価で回答する形式となっている。ここでは図に付記したように点数ごとに仮に回答を区分している。 自殺に関しては、約8割の者が「間違っている(認められない)」(1〜4)としており、1981年から2000年へかけての変化を見ても、一定方向への変化の傾向は認められなかった。ただし、2010年には「間違っている」がかなり増加している。自殺者数3万人時代に対応して官民あげての自殺防止対策が講じられた反映と見られる。ただし、2019年には自殺数も減少し、対策の緊急性もうすれたせいか、再度、許容度が高まる結果となっている。 男女別・年齢別に自殺許容度を見ると、やや男性、あるいは若者の方が許容度が高くなっている。(自殺許容度に関する国際比較は図録2784参照。) 同性愛と離婚の許容度については、両者ともに約6割が「認められる」(6〜10)に回答しており、また自殺と異なって、1981年以降、それらを許容する方向に、大きく意見が変わってきているのが注目される。離婚に関しては、2000〜2010年には許容度の変化が止まり、「家族の絆」回帰の傾向が見られたが、2019年には再度許容度が高まった。 男女別年齢別に平均点を見ると、同性愛、離婚ともに、男性より、女性の方が許容度が高く、また、年齢の若い層の方が高齢者より許容度が高くなっている。 同性愛は若いほど許容度が高く、年齢による見方の差も大きい。2019年には、他の年齢層と比較して、若年層で男女の差、すなわち女性の方が許容度が高いという傾向があらわれており、新しい潮流かもしれない。 離婚は中年層(30〜40歳代)で許容度が最も高くなっており、若年層(18〜29歳)の許容度は中年層よりかえって低いという特徴がある。若年男女には同性愛と同じように女性の方が寛容という違いが認められる。 男女の関係、あるいはジェンダー観といった分野における価値観は大きく変容してきていると言えよう。また、21世紀に入っての離婚率の急上昇から横ばいへの転換には、離婚への考え方の変化が反映していると思われる(図録2777参照)。 若年男女で男子の方が女性と比べて許容度が低いのは、男性の方が「男らしくあれ」という旧来の儒教道徳に縛られているからという見方も成り立つ。 なお、同性愛の許容度の国際比較は図録2783参照。これらの他、脱税、ワイロ、売春、中絶、安楽死、浮気といった倫理上の問題に関する許容度についての日本の国際的位置づけは図録2785、図録2786、図録2787参照。 (2006年6月21日収録、2014年5月12日更新、2021年5月5日更新)
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