地域別の自殺率とうつの比率との間に相関がないことは、すでに国際比較データによって示した(図録2773)。ここでは、同じことが都道府県データでも言えるかを確かめるための相関図を作成した。 Y軸の自殺率に対して、X軸のうつの比率としては、国民生活基礎調査による「うつ病やその他の心の病気」で通院している者の人口比をとった。 うつの比率としては、対病院調査である患者調査のうつ病・躁うつ病患者数も得られるが、ここでは世帯の対個人調査である国民生活基礎調査の自己申告値を採用した。病名としては患者調査の方が厳密であり国民生活基礎調査はアバウトである。患者調査では抗不安薬(精神安定剤)を含む精神科薬を処方するためレセプト上で患者としてカウントされている者を含むが、国民生活基礎調査では、あくまで自己認識によっている。どちらの値を使うのが適切かははっきりしないが、今回は診療都合を含まない自己認識を重視した。 結果は、国際比較データと同様に、相関は認められない。 岩手のようにうつも自殺も多い県があり、長崎、徳島のようにどちらも少ない県もある。このような県ばかりなら正の相関があることになる。 しかし、一方で、秋田のように自殺率は高いがうつは少ない県もあり、また京都のように自殺は少ないがうつは多い地域もある。京都のこうした特性は「いけず」と言われる京都人の県民性のあらわれと見られないこともなかろう(図録7304、図録7776参照)。 うつは少ないが自殺は多い秋田の地域特性は、国際的には、韓国に似ている。一方、うつは多いが自殺は少ない京都はギリシャに似ている(図録2773)。 つまり、うつと自殺が相関しているとすると例外が多すぎる。自殺率の1〜2位は秋田、岩手であるが、秋田はうつが少なく、岩手はうつが全国1多い。長崎も京都も自殺率は全国でも低い方だが、長崎はうつが最も少なく、京都は岩手に続いて全国で2番目にうつが多い。 こういう状況では、うつと自殺が相関しているとはとてもいえない。 都道府県の自殺率については図録7340にも示した。 (2023年8月29日収録)
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