図には葬儀を手伝った人の割合を掲げたが、「近所の人」、「職場の同僚」が半数弱から1〜2割へと激減し、「親類・縁者」が半数以上と多くなっている。 仕事から引退したり、要介護になったりして、親類・縁者以外との社会的なつながりから遠くなった高齢者の死亡が増えているのが一因であろう(図録1555参照)。 「調査を行った「くらしの友」の杉山久夫常務は「葬儀は家族のものという意識が、この11年で一気に強まった」と話す。」(毎日新聞2010.9.11、以下引用は同じ) こうした変化は、近所の人や会社の人に頼まなくとも、ほとんど葬儀社が葬儀をやってくれることが影響している。図の「ほとんど業者まかせ」が1990年代はじめには1割以下であったのに対して、最近は54%と5割を越えている。 隣近所や会社の同僚が手伝い、みんなで弔っていた葬儀がいまや葬儀社おまかせの家族中心の追悼儀式に変化したといえよう。 図録1307では日本の高齢者の場合、同居している夫婦、家族を越える人間関係が他国に比べ希薄である点についてふれた。図録2412では、職場、親戚、地域とのつながりが薄れ家族だけを大切と思う傾向が強まっている点についてふれた。葬儀のあり方にもこうした傾向は反映しているようだ。図録9502でも指摘したが、日本のこうした状況は人と人、そしてコミュニティのつながりが希薄化している側面と人と人とのつながりが希薄化しても困らない社会保障などのシステム、ここでは、葬儀社などサービス供給が充実してきている側面の両面があろう。 なお、葬儀については、小規模化も進展しているという。「白書によると、お通夜と告別式を合わせた会葬者平均人数は延べ118.4人。前回調査は209.6人で、この11年間で半数近くになった。とりわけ「99人以下」と答えた喪主は、前回は全体の2割にとどまったが、今回は55%を占めるまでに至っている。」 毎日新聞(2020年11月19日)は、下図にも見られるような葬儀の簡素化がコロナの影響でさらに促進されているとして、以下のように報じている。 「こうした葬儀の簡素化は、地域とのつながりが薄い都市部で先行していた。近年、家族のみが参列する「家族葬」が増えて参列者数が減っているといい、経済産業省が調査した葬儀業売上高などによると、1件当たりの葬儀費用は最近20年でピークだった2006年から約12%も減少し、19年は134万円になった。 葬儀サービス会社「よりそう」(東京都)の調査によると、コロナ後は通夜を省略した「一日葬」や葬儀を行わずに火葬に立ち会うだけの「直葬」と呼ばれる形式への関心も高まっている。リモート葬儀へのニーズも高い状態が続いており、オンライン葬儀システムを4月に開発した「ライフエンディングテクノロジーズ」(東京都)によると、導入した葬儀社は首都圏を中心に約100社に上る。 相愛大学教授で浄土真宗本願寺派僧侶の釈徹宗さんは「人は大きな悲しみを、みとりや葬儀などの過程で少しずつ受け止めていく。最期に立ち会えなかった人の心には、大きな爪痕を残す可能性がある。一方で、単身世帯の増加や地域コミュニティーの希薄化を背景に、葬儀の簡素化が進んできており、コロナの影響で、流れは今後も続くだろう」と話す」。 (2010年12月13日収録、2020年11月19日葬儀費用の推移)
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