1.概況

 リーマンショック後の経済危機により、2010年にはいずれの項目を生活の力点とする回答も近年における最低値を示したが、その後の経済回復でどの項目もおおむね復活してきている。2014年には食生活の回復が著しかった。

 10月に消費税が引き上げられた2019年は各項目落ち込んだが、調査が休止となった2020年を経て、2021年にはコロナ禍の影響で巣ごもり生活への関心が高まり、食生活や耐久諸費財、特に食生活がこれまでにないほど高い回答率となった。22年も同様の傾向を示している。

2.食生活について(2010年代ごろまでのコメント)

 1990年代前半以降、バブル後の長期的な経済低迷の中で消費者の生活意識が堅実化する中で、食生活への関心は大きく高まってきている。

 図に示した「今後の生活の力点」に関する世論調査結果は、1980年代後半のリゾート・ブームの際によく引用された。レジャー・余暇生活に力点をおく国民が最も多くなったからである。1976年には16.0%だったのに対し、83年には26.3%と上昇し、「住生活」を上回って第1位になった。これ以降、更にそれが上昇し、1990年の37.2%のピークまで行った。

 1990年代以降の特徴は、レジャー・余暇生活に今後の力点をおく国民は横ばいとなり、食生活に今後の力点をおく国民が増加している点にある。こうした変化はもともと食生活を重視する傾向の強い高齢者の割合が高まっている側面もあるが、同じ調査の男女・年齢別の結果において各層とも比率が上昇しており(図録2300-1)、全体的な変化といえる。

 2008年は食生活重視が30.8%と過去最高を更新したが、以上のような長期傾向に加えて、相次ぐ食品偽装事件、中国ギョーザ中毒事件、あるいは世界的な穀物高騰にともなう食料自給への関心の高まり(図録4710、図録0310)が「食」重視の傾向をなおさら高めたためと考えられる。

 長期的な「食」への関心の上昇を受けて、テレビでは食材やグルメを題材にした番組を増加させたが、ここでは細かくふれられないが、男女別年齢別の関心度の高まりの状況、食に関する生活時間調査の結果、中食(調理済み食品)の増加(図録2350参照)などを総合すると、「食」への関心には、以下のような男女別世代別の背景がうかがわれる。

・青年層
 家族が別々の食事をとる「個食」や一人で食事する「孤食」が進んだ環境の中で育った青年層は、栄養や健康への配慮もあって食生活を見直したいと思っているが生活慣習上なかなかきっかけがつかめないである。

・男性壮年層
 健康のためにも食生活は重視したいが仕事が忙しく、食事時間は減っており、また家族と一緒の食事もままならない場合が多い。

・30代前後の女性
 健康や小さな子供との食事を大切に考えて食生活意識が上昇し、食事時間も増加させている。ただ、夫の家事参加がままならないため、中食を取り入れざるを得ず、そのなかで手作りの味を工夫しようとしている。

・高齢者
 長い老後を考えるとレジャーなど経費のかかる時間の過ごし方は出来ないので食生活を充実させることを一層重視するようになっている。しかし、老夫婦や単身高齢者の独立した食生活が中心となってきているので調理に余り時間をかけても効率的でなく中食や外食に頼る比率は増加している。

 米国の広告代理店が行ったアジア14カ国の食調査によると食の欧米化、輸入食品の増加にともなって56%の人が自分の食生活が「5年前と比べて健康に良くない」と感じているとのことであり、日本の状況はアジアに共通した変化でもある(毎日新聞2000年12月22日)。しかし家族揃っての食事を大切に思う人の割合は、日本が66%で最も低かったという(中国91%、韓国・インドネシア87%)。復古的な家族団らんが回復できないのであれば、新しい家族形態や家族を補い家族に代わる人と人とのつながりの中で新しい食生活を築くことが日本人の課題となっているといえよう。

(2004年9月6日・2005年9月27日・2007年1月15日・2008年8月18日・2010年3月31日更新、2010年8月10日更新、2011年12月26日更新、2014年5月22日更新、8月25日更新、2015年8月24日更新、2016年8月30日更新、2017年8月28日更新、2019年7月8日更新、2022年1月22日更新、2023年7月2日更新)


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