(まとめ)

 1985年以降の1世帯当たり月平均食費支出の動きは、中食(調理食品)がリーマンショック後の景気低迷時の一時的落ち込みがあったものの増加傾向をたどった。内食は減少傾向。一時伸びた外食は低迷(特に東日本大震災の年に落ち込み)、その後やや回復。エンゲル係数は95年から23%台で下げ止まり、最近はやや上昇し25%に。

(コメント)

 食費支出の動向は他の消費支出とともに、毎月、総務省統計局の家計調査によって調査されている。消費支出全体に占める食費の比率はエンゲル係数として知られる。食費の内訳は、穀類、野菜、肉類といった家庭で調理される食品(内食)、弁当、レトルト食品、調理済み冷凍食品、惣菜セットといった調理食品(中食)、及び外食と菓子・飲料・酒からなる。

 1950年代初頭以前、日本のエンゲル係数は半分を超えていた(コラムの図を参照)。その後、経済成長と所得の上昇によって低下し続けてきたエンゲル係数が95年の22.9%以降、23%台で横ばいに転じている。全体に消費支出が横這いないし低下する中で必需品的な性格の食費が比較的堅調な動きを示しているためであると解釈できるが、いずれにせよ戦後の経済成長パターンの終焉を示す1つの現象であろう。

 食費の内訳の動きに関しては、それを実質消費レベルで見るため、世帯当たりデータを平均世帯人数で割って1人当たりに換算するとともに、各類別の食費支出を消費者物価指数でデフレートして実質消費支出を算出し、この結果を指数表示した図を掲げた。物価変動のほか消費税上げによる支出額の上昇もキャンセルアウトされる。

 これを見ると、食費全体では、1990年代以降は減少傾向に入っている。高齢化の影響で1人当たりの消費量は減っているといえよう(食料需給表によれば1人当たり供給カロリーも近年減少している−図録0200参照)。ただし、2010年代の前半には底を打っているようである。

 食費の内訳の変化としては、中食が拡大し続けていた点が目立っている。中食は1985年から2006年までに6割以上の増加となった。しかし、2007年にはやや低下、そしてサブプライムローン問題に端を発する世界経済の悪化に見舞われた2008年にはかなりの落ち込みとなり、中食の拡大にも終止符が打たれた。しかし、その後、2010年以降には再度増加傾向となり、生活の忙しさ(図録2320)や高齢単身世帯の増加などによって中食需要がなお堅調であることをあらわす結果となっている。しかし、最近は中食もほぼ横ばい傾向となっている。

 中食の一時停滞は所得が伸びないなか、節約ブームが低価格で調理しやすい内食向け食材の開発を促したためとも思われる。テレビゲーム・ネット・自宅での食事などの消費が好調で、レジャーや旅行などの消費が不調であるような傾向を「巣ごもり消費」(または「引きこもり消費」「イエナカ消費」とも)といわれたが、こうした傾向のあらわれだったともとれる。

 外食は80年代後半に1割以上の増とかなり拡大していたが、90年代以降は横這い、あるいは低下傾向に転じている。「食の外部化」といわれる現象は、外食という形から中食という形態へと転換したからである。特に東日本大震災とその後の原発事故が起った2011年には当時の自粛ムードの中、外食がかなり落ち込んだ。ところがこの年を底に2013年にかけて外食は再度回復傾向をたどった。2014年には消費税が8%に引き上げられ、この回復傾向も止まった。

 1人当たりの消費量の減少と食の外部化が合わさり、家庭で調理して食べる内食の量は1990年代以降2010年ごろまでに2割近い減少となっている。内食に関してはその後はほぼ横ばいの推移である。

(関連図録)

 エンゲル係数の長期推移と最近の上昇については図録2355参照。

(2004年6月14日収録、2010年10月18日更新、2012年11月4日更新、2013年4月8・9日コラム追加、2016年4月12日更新、5月19日エンゲル係数の図を修正、一本化、2017年2月18日コラム「エンゲル係数の長期推移」を独立させ、最近の動きを加えて図録2355作成)


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