日本の食料自給率の推移、及びカロリーベースの食料自給率推移を各国比較した図を掲げた。データは農林水産省の公表数字による。

(日本の食料自給率の推移)

 食料自給率は国内消費に対する国内生産の割合を示したものであり、消費より生産が多く輸出超過の場合は100%を超えることもある。よく使われるのはカロリーベースの食料自給率であり、基礎的な栄養要素であるカロリーに着目して算出を行っている。畜産物は国内生産量に飼料自給率を掛け合わせて算出しており国内生産の肉であっても100%ではない(図録0320参照)。

 1960年度に79%であったカロリーベースの食料自給率は、年々低下を続け、98年度40%に達した後、横ばいで推移していたが、06年度についに40%台を割り込んで39%となったのでマスコミも注目した。07〜08年度は小麦などの価格高騰の影響によるコメの消費量増などで40%、41%と2年連続で上昇した。しかし09年度は穀物価格の低落でパンなどコムギ製品が再度安値となった影響で40%へと低下した。10年度も猛暑による国内農業生産の減少などを背景に39%へと低下し、11〜15年度も横ばいだった。16年度には複数の品目の自給率低下により全体としても38%に低下し、17年度も同値だった。

 2018年度は37%とコメの記録的な不作に見舞われた1993年度と並び、過去最低に落ち込んだ。これは天候不順で北海道の小麦や大豆の生産量が大幅に減少したことが主な要因とされる。「農水省によると、昨年6〜7月に北海道などが低温や日照不足などに見舞われ、小麦の国内生産量が前年度比15.7%、大豆が16.6%の大幅減となった。牛肉や乳製品の輸入量が増加したことも自給率の低下を招いた。主食用米の国内生産が前年並みを維持し、魚介類ではホタテ貝やマイワシの漁獲が好調だったが、小麦などの減少分をカバーできなかった」(毎日新聞2019.8.6)。

 2020年度は記録的なコメの凶作の年である1993年度、天候不順で小麦などの生産量が減少した2018年度に並ぶ37%の自給率となった。これは、自給できているコメの需要減少や小麦の生産量の落ち込みによるものである(東京新聞2021.8.26)。

 他方、カロリーベースの低下とは対照的に、同年度はコロナ禍の影響で家庭食の増加により生産額ベースの自給率は1%ポイント上昇の67%だった。「単価の高い豚肉や鶏肉、野菜、果実の生産額が増加した一方、魚介類などの輸入額が減少したため4年ぶりに上昇した。農水省の担当者は「外出自粛で清涼飲料水や土産物の菓子の需用が落ち込んだ」と説明。これらの原料として使用する砂糖類や食物油脂の輸入額が減ったことも上昇要因となった」(東京新聞同上)。

 2021年度は輸入食品の価格上昇で生産額ベースの自給率は下がった。

 2022年度の生産額ベースの自給率の下げ幅は過去最大となった。これは、輸入飼料の価格高騰が大きく影響したため。2023年度の生産額ベース自給率は再度戻している。

 以上のような動きを裏付ける品目別の動きは図録0317参照。

 この他、食料、貿易品目としての重要性から旧来は主たる指標であった穀物自給率、品目別自給率としてコメの自給率、及び畜産物の付加価値や野菜など食料の単価の違いを評価した金額ベースの食料自給率を参考として掲げた。

 トウモロコシなど大半が輸入の飼料穀物が大きな部分を占めるため穀物自給率はカロリーベースの自給率よりずっと低い。

 我が国の主食の地位を維持している(していた)コメの自給率は、凶作時の緊急輸入が行われた1993年には75%に急落した(図録0380参照)が、この年を除いて長く100%あるいはそれ以上を維持していた。ところが、WTOの前身ガットのウルグアイラウンド合意によってミニマムアクセス(MA、最低限の輸入枠)を認めることとなったので1997年から100%を下回るようになった。ただし、MA米は生産者への影響を考慮し、加工用や海外援助などへの活用が主となっており、主食用のコメだけとると自給率100%を維持している。

 金額ベースの食料自給率は、野菜など重量単価の高い農産物は自給率が高いのでカロリーベースよりずっと高い60%台後半となっている。2008年度における世界的な穀物や輸入農産物の価格高騰以来、国際価格の変動の影響もあって金額自給率は上下に変動している(図録4710参照)。

 金額ベースの食料自給率については、2019年3月に、2002年度以降の値が1%ポイント上昇修正された。これは輸入額の算出が間違っていたためと発表された(毎日新聞2019.3.29)。

 なお、水産物自給率については、図録0312参照。

(各国の食料自給率の推移)

 諸外国のカロリーベースの食料自給率をFAOのデータを使って農林水産省が試算している。これを見ると、米国、フランスといった農業大国で100%を大きく超え、輸出超過となっている。ドイツ、英国、スイスといった従来自給率が100%をかなり下回り、日本よりも低かった西欧諸国では食料自給率を20世紀末にかけて向上させていたが最近は再度低下傾向にある。これに対して、日本や韓国は食料自給率が一貫して低下傾向にあり、50%に満たない先進国中最低レベルにある点で際立った対比を示している。韓国は日本より20%ポイント高い自給率で推移していたが、1990年代に10%ポイントの差、2000年代は10%ポイント以下の差とだんだんと差は縮小し、最近はほとんど同レベルである。

 自給率と農業保護の関係の国際比較については、図録0308参照。

(まとめ)

 1961年に制定され長らく日本の農政の基本をなしていた農業基本法に代わって、1999年に新たに制定された食料・農業・農村基本法は消費者重視の旗印を掲げるとともに新たに食料自給率目標を基本計画で定めることとした。このとき策定された基本計画ではカロリーベース5割以上の食料自給率を目指し、当面、2010年度には45%を達成するものとした。5年ごとの改訂ということで2004年3月に見直された前基本計画でも、同様の考え方で2015年度に45%を目標としている。2010年3月閣議決定の食料・農業・農村基本計画では、それまで「15年度までに45%」としていた自給率目標を「20年度までに50%」に引き上げた。2015年3月閣議決定の現食料・農業・農村基本計画では、現状を踏まえ、10年後の自給率目標を45%に引き下げた。

 どの程度この目標に向け実際の政策手段が取られているかについては、WTOその他の多国間貿易交渉の調整が優先されるなかで、どの程度の予算をどの分野に注ぎ込めば目標の達成の可能性が高いという計算がされていないので、かなり心許ない状況であると言わざるを得ない。

(2004年10月20日更新、2006年5月27日更新、2007年1月10日・8月13日更新、2008年8月5日更新、2009年9月18日更新、2010年8月11日更新、2011年8月16日更新、2012年8月10日更新、2013年8月8日更新、2014年8月6日更新、2015年8月7日更新、2016年8月18日更新、2017年11月12日更新、2018年8月9日更新、2019年3月29日2002年度以降金額ベース自給率改訂、2019年8月6日更新、2020年8月6日更新、2021年8月26日更新、2022年8月6日更新、2023年8月8日更新、2024年8月8日更新)


[ 本図録と関連するコンテンツ ]



関連図録リスト
分野 食品・農林水産業
テーマ  
情報提供 図書案内
アマゾン検索

 

(ここからの購入による紹介料がサイト支援につながります。是非ご協力下さい)