高齢者が1秒で何メートル歩いているかという歩行速度のデータの推移を掲げた。

 1997年から2017年の20年間に、男女ともに各年齢層で1秒当たりの歩行距離が10〜20cm伸びており、高齢者の体力が全体的に向上していることがうかがわれる。特に女性の伸びが目立っている。

 男性では、1997年に65〜69歳は1.29m/秒であったが、この速度は20年後の2017年の80〜84歳以上の1.25m/秒よりは若干速いが、75〜79歳の1.34m/秒より遅くなっている。女性の場合、1997年の65〜69歳の歩行速度はほぼ2017年の80〜84歳と等しい。

 すなわち、男女ともに20年でほぼ15歳程度、体力が向上したといえる。同じように、残っている歯の数からは、だいたい、10〜15年で10歳若返っている(図録2170参照)。

 最近、70歳以上で運動習慣をもつ者が増えているので(図録2244)、若返りがさらに進んでいっている可能性もある。

 運動能力全般に関して、この20年間に、高齢男性は7〜8歳、高齢女性は10歳程度、体力的に若返ったと見なすことが出来る点については図録2168参照。

 こうなると高齢者の定義を、統計上等で、65歳以上としてきたこれまでの慣行もやや揺らいでくる。生理的にはかつての65歳以上は75歳以上と同等になってきているからである。

 日本老年学会などが2013年からこれらの高齢者に関する調査を収集・分析したところ、「若返り現象」がみられたことから、同WGは65〜74歳を「准高齢者」、75歳以上を「高齢者」とする新たな定義を示した。

 こうした背景を踏まえ、また社会保障制度の改善や女性とともに高齢者の活躍による労働力不足解消を目指す政府も新しい枠組みを設定しようとしている。

「政府は16日午前の閣議で、高齢社会対策大綱を決定した。65歳以上を一律に高齢者とみなす考え方からの転換を打ち出し、65歳以降も働き続けられる環境を整えるとともに、年金の受取時期を70歳以降に遅らせることができる制度見直しの検討を盛り込んだ」(毎日新聞2018.2.17)。

 同大綱では、「高齢者の就労促進で労働力を補うため、60〜64歳の就業率について2016年の63.6%を20年に67.0%まで引き上げる目標を設定した」(東京新聞2018.2.17)。

 高齢者の労働力率(失業者を含めた就業率)の推移については図録1400参照。

(2018年3月2日収録、2019年7月17日2007年、2017年データ更新)


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