スポーツ庁(以前は文部科学省)では、生徒・学生だけでなく成年層、高齢者層を含めて、体力・運動能力を毎年継続的に調査している。ここでは、新体力テストがはじまった1998年度から20年間の成年層と高齢者層の時系列変化をテストの合計点で追ったグラフを掲げた。

 得点基準が男女で異なるので同じ年齢層の男女の体力を合計点で比較することはできない(そういう意味ではこのデータを報道した新聞各紙が掲載した男女の推移を重ね描きしたグラフは誤解を招きやすいものだったといえる)。ただし、時系列比較は有効であるし、成年調査あるいは高齢者調査のそれぞれの中での年齢別の比較も可能である。

 65歳未満の「成年」(グレーの線)について、年次を通した年齢差を見ると、男女とも若年層より中高年層の方が体力が落ちていっているのは当然であるが、男性の場合は、年齢に比例して落ちていくのに対して、女性の場合は40代後半から50代後半にかけての体力の低下が著しい点が目立っている。これは女性の更年期における変化の大きさを反映しているものと考えられる。

 もっとも50代後半の年次的な体力向上がそれより若い層と比較して大きいため、この20年間の当初期には非常に大きかった更年期を経る中での女性の体力低下は、以前ほど目立たなくなってきている。

 体力の時系列変化としては、男女の各年齢層で体力向上が一般的な中で、女性の30代後半の体力低下が目立っている。女性の40代後半も当初は体力が向上していたが、2000年代後半から30代後半と同じように体力低下が目立つようになっている。さらに2019年には40代後半や50代後半の女性の体力が大きく低下している。

 同時に実施されている運動習慣に関する申告調査からも裏づけられるように、こうした年代の女性は、仕事、出産、子育てで忙しくなっており、運動・スポーツなど体力の向上を図るチャンスが小さくなっているのが理由と考えられる。

「この世代は子どもの頃から体力低下の傾向があり、テレビゲームの普及による運動不足や、週休2日制の導入で体育の授業が減ったことなどが原因として指摘された。分析を担当した内藤久士・順天堂大教授(運動生理学)は「子ども時代に運動に親しまなかったため能力を高めきれず、苦手なままの人が多いのではないか」と指摘した」という(朝日新聞2019.10.13)。

 「高齢者」(ブラックの線)についても、「成年」と同じように、年齢比較上、上から下に歳を重ねるごとに体力が落ちていく状況は変わらないが、時系列的には、男女ともに体力向上が目覚しい点が目立っている。これは、健康づくりのための運動習慣が高齢者で普及してきているためであろう(図録2244参照)。

 体力テストの点数から見ると、男性については、70代前半の現在の体力はほぼ2000年代はじめの60代後半の体力に匹敵している。また女性の70代前半の現在の体力はほぼ2000年代半ば過ぎの60代後半の体力に匹敵している。すなわち、男性はほぼ20年では5歳若返り、また女性はほぼ10年で5歳若返ったといえよう。

(2018年10月21日収録、2019年10月14日更新、女性30代後半の体力低下理由、2021年2月13日更新)


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