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高齢者労働力率を国際比較した図を見ると、第2次世界大戦後、欧米各国では、所得の向上、年金・福祉の充実により、高齢者(60〜64歳、あるいは65歳以上の男)の労働力率は一貫して低下してきた。 日本の場合も同様の傾向にはあるが、低下の程度は低く、日本は主要先進国の中では、高齢者が最も働いている国となっている。またこの20年ぐらいの動きを見ると、欧米諸国に遅れて低下していると言うより、高いレベルで横ばいから上昇に転じている。 所得水準や年金・福祉の水準において日本がとりわけ低いとは言えないので、高齢者の職業構成における農業・自営業の比率の高さ(図録1220参照)、あるいは、良く言えば働き者という国民性、悪く言えば働き続けることにしか生き甲斐を見出せないという価値観などに理由を求めるのが妥当であるように思われる(国民性等については図録0218、図録3277参照)。 細かく見ると、65歳以上では2010年頃まで低下傾向、それ以降やや上昇。60〜64歳では2005年頃を底に反転上昇の傾向。といった動きが認められる。これらには定年制延長の影響があらわれていると考えられる(次図参照)。 改正高年齢者雇用安定法(以下については、2006年4月1日施行)によると、事業主は65歳までの安定した雇用を確保するために、次のいずれかの措置を講じなくてはならないとされた。@継続雇用制度の導入(労使協定により、継続雇用制度の対象となる基準を定めることができる)、A定年年齢の65歳への引上げ、B定年制の廃止(※これらには経過措置がある)。つまり、高齢人口比率の高まりから、年金等の社会保障制度を維持するため高齢者の労働力率を高める必要が出てきていることが、高齢者が働く一因となっている訳である。この結果、2005年から10年にかけて主たる収入源を仕事からの収入とする高齢者が増え、年金を主たる収入とする高齢者が減った点については図録1260参照。 なお、欧米の動きは、1990年代から2000年代にかけて高齢者労働力率は下げ止まり、反転の傾向が認められる。欧米諸国においても財政再建等を目指し年金給付開始年齢の延長などの対策が取られているためと考えられる。 年金収支赤字の解決法のひとつとして高齢者も働き続けて所得を得続ければよいという点をあげることが出来るが、日本の高齢者はすでに多くの者が働いているという事実を踏まえた議論とすべきであろう。 韓国のデータを2010年更新では追加した。高齢者労働力率の推移が欧米や日本と異なり低下傾向にない点、また65歳以上では日本より値が高い点が目立っている。社会保障の遅れ、高齢者の農業比率の高さなどが影響していると思われる(図録1220参照)。 図で掲げた諸国で近年労働力率の反転上昇の傾向があらわれている背景には、社会保障制度の維持のほか、体力的に高齢者が若返っている影響もあると思われる。この点については図録2169参照。 (女性高齢者について) 女性60〜64歳の労働力率推移については、いったん下がってまた上がるという男性と同じカーブを描いているのはフランスぐらいであり、多くの国では、それまでの横ばいから2000年代に上昇傾向に転じている。スウェーデンや英国では2000年代以前からたどっていた上昇傾向をそれ以後も継続するというかたちになっている。 女性65歳以上の労働力推移については、男性よりレベルは全体的に低いが、下がっていた労働力率がかなり以前から上昇傾向に転じている点は男性の動きと同じになっている。 (2010年7月6日更新、2015年4月21日更新、2018年2月17日更新、3月8日毎5年データを各年データに変更、3月9日女性の図を選択可能に、11月6日更新、2023年3月21日更新、2024年10月23日更新)
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