2年ごとに国連は将来人口推計を発表している(最新は3年後だった)。最新の国連の2022年改訂は2022年7月に発表された。以下は年央ベースの人口である。

 今回も2012年改訂からはじまった2100年までの将来予測がなされた。2100年の世界人口の予測は103.5億人(前回2019年改訂では108.7億人、2017年改訂では111.8億人、2015年改訂では112.1億人、2012年改訂では108.5億人、2010年改訂では101.2億人)である。2058年に世界人口は100億人を越えると予測されている。2012年改訂から2015年改訂へはかなり推計人口が上昇したが、それ以降は下方修正が続いている(下に掲げた地域別人口推計表参照)。

 なお、2050年の世界人口の予測は97.1億人であり、前回2019年推計の97.4億人から若干減となっている。

 今回の予測ではじめて2100年以前に人口が減少に転じると計算されている。ピークは2085年で104.3億人とされている。

 長らく人口大国といえば、第1に中国、第2にインド、そして第3位は米国という順であったが、2100年には、インドが中国を抜いて第1位となると予測されている(2023年に逆転の予測)。かつて大インドを構成していたパキスタンとバングラデシュも人口をかなり増加させ、パキスタンは世界第5位を維持すると予測されているので、南アジアは世界最大の人口集積地となる(図録8280参照)。

 この他、人口順位を上昇させる地域としてアフリカが目立っている。現在(2020年)、アフリカの中で10位以内に登場しているのは、第7位のナイジェリアだけであるが、2100年には、ナイジェリアが世界第3位に躍進するとともに、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア、エジプトが10位以内に登場すると推計されている。

 日本の人口規模上の地位は、1950年には世界第5位、2020年には世界第11位であったが、2100年には世界第33位(7,364万人)と大きく地位を低下させると予想されている。なお、日本の公式推計(社会保障人口問題研究所推計)によれば2100年は6,278万人とされている(図録1150)。末尾コラムでもふれたように国連の推計はかつて楽観的であったが、かなり下方に修正される方向である。

 2020年から2100年にかけての人口増減率を見ると、世界全体では32.0%増(前回予測では39.5%増)、すなわち3割強の増となっている。アフリカ諸国の多くでは100%以上の増、すなわち人口が2倍以上となると推計されている。次いで、アフリカ以外ではフィリピン、米国といった国が世界平均に近い増加率を示す。

 米国は、先進国としては突出した人口増加率が目立っている。出生率の高いヒスパニック系人口の割合が増していくためと考えられる(図録8700参照)。

 世界の中のGDPシェアが大きく拡大した東アジアの日本、中国、韓国については、人口的にはすべて少子高齢化の影響で人口は減少すると推計されている。

 ドイツ、イタリア、そして旧ソ連のロシア、ウクライナなども人口減少が予想されている。

 同じ国連推計から見た先進国の高齢化率の将来推計については図録1157参照。また、同じ国連推計の過去と将来の出生率・平均寿命を使用した南アジア・東アジア・日本の人口転換過程の分析を図録1561に掲げたので参照されたい。

地域別推計人口
人口(億人) 構成比(%) 2100年推計人口の変化(億人)
2020年
実績
2100年
推計
2020年
実績
2100年
推計
2019年改訂
→22年改訂
2017年改訂
→19年改訂
2015年改訂
→17年改訂
2012年改訂
→15年改訂
世界 78.4 103.5 100.0 100.0 -5.3 -3.1 -0.3 3.6
アフリカ 13.6 39.2 17.4 37.9 -3.6 -1.9 0.8 2.0
 東アフリカ 4.5 13.4 5.7 12.9 -1.1 -1.3 0.0 0.2
 中央アフリカ 1.8 7.6 2.4 7.4 0.2 -0.1 0.3 1.8
 北アフリカ 2.5 4.8 3.2 4.7 -0.2 0.4 0.1 0.8
 南アフリカ 0.7 0.9 0.9 0.9 0.0 0.0 0.1 0.0
 西アフリカ 4.1 12.5 5.2 12.1 -2.3 -0.9 0.2 -0.8
アジア 46.6 46.7 59.5 45.2 -0.5 -0.6 -1.1 1.8
 東アジア 16.6 9.1 21.2 8.8 -3.1 0.2 0.2 -0.8
  中国 14.2 7.7 18.2 7.4 -3.0 0.4 0.2 -0.8
 中央アジア 0.7 1.3 1.0 1.2 0.1 0.1 0.1 0.0
 南アジア 19.7 24.3 25.1 23.5 2.1 -0.1 -1.4 1.6
  インド 14.0 15.3 17.8 14.8 0.8 -0.7 -1.4 1.1
 東南アジア 6.7 7.4 8.5 7.2 0.0 -0.3 0.0 0.1
 西アジア 2.9 4.6 3.7 4.5 0.4 -0.6 -0.1 0.8
ヨーロッパ 7.5 5.9 9.5 5.7 -0.4 -0.2 0.1 0.1
 東欧(含ロシア) 2.9 2.0 3.7 2.0 -0.2 0.0 0.1 0.1
 北欧 1.1 1.1 1.3 1.1 -0.1 -0.1 0.0 0.0
 南欧 1.5 0.9 1.9 0.9 -0.1 -0.1 0.0 -0.1
 西欧 2.0 1.8 2.5 1.7 -0.1 -0.1 0.0 0.0
ラテンアメリカ 6.5 6.5 8.3 6.3 -0.3 -0.3 -0.1 -0.2
 カリブ海諸国 0.4 0.4 0.6 0.4 0.0 0.0 0.0 0.0
 中米 1.8 1.8 2.2 1.8 -0.3 -0.1 0.0 -0.1
 南米 4.3 4.3 5.5 4.1 0.0 -0.2 -0.1 0.0
北米 3.7 4.5 4.8 4.3 -0.4 -0.1 0.0 -0.1
オセアニア 0.4 0.7 0.6 0.7 -0.1 0.0 0.0 0.0
(注)中位推計の結果
(資料)国連, World Population Prospects: The 2012-2022 Revision

 前回と比較した2022年推計の変化としては前回に引き続いてアフリカが下方修正されているのと今回初めて中国についても下方修正されたのが目立っている。また南アジアの推計が上昇修正されているのも目立っている。前回のアフリカの下方修正はエイズの影響がかなり加味されていたが、今回の修正は最近の出生率動向が反映されたものと考えられる。

(以下は2010年推計の際のコメント)

 2年前の推計と比べて、アフリカ諸国の将来人口の増加が著しくなっているが、これは推計方法の違いによっている。この点を英国エコノミスト誌はこう述べている。

「人口変化のエンジンは出生率(女性が一生の間に平均して何人子供を産むかの数)である。出生率はどこでも低下傾向にある。このため、国連は前回の推計で総ての国の出生率が1.85まで低下すると仮定していた。2008年の予測では、2050年までに111カ国が1.85〜2.1の「置換水準」といわれる出生率水準となるとしていた。

 新しい推計では、各国のトレンドを考慮に入れた異なる将来出生率を仮定する方法に変更している。国連は以前より多くの国が高い水準の出生率、あるいはなかなか上がらない低い出生率が継続すると仮定している。これは、アフリカで起こりつつある出生率低下のいわゆる「休止」を一部反映しているものである。この結果、国連は2050年までに1.85〜2.1の出生率水準に達するのが51カ国にすぎないとしている。

 この変更は世界人口の数字には影響を与えないが、国別には大きな意味をもってくる。今日、ナイジェリアは1億5800万人の人口をもつ世界で7番目の人口大国である。ナイジェリアの出生率が国連の仮定ほどしか低下しないとすると、2100年には7億3000万人の世界第3位の人口規模をもつことになる。これは、現在のヨーロッパの人口に相当する。ルワンダの人口は4倍の4,200万人に増加し、人口密度は現在の日本の5倍となる。中国の人口は2025年のピーク時から4億5000万人少ない9億4100万人となる。

 こうした将来予測は信じがたい面がある。それは予測と言うより警告であろう。しかし、全体像は多分正しい。サハラ以南アフリカは世界の中で最も成長する地域である。今日ヨーロッパやラテンアメリカより大きくないが、21世紀末には両者を上回り、アジアの半分の規模に達する(現在は5分の1)。結果は深刻である。サヘル地帯は西アフリカの増加し続ける人口によって砂漠に転じるであろう。中国の従属人口比率(生産年齢人口に対する年少人口と老年人口の割合)はヨーロッパよりも早く上昇するので、一人っ子政策はうち捨てるしかないだろう。また、中国とインドは国連が予想する性別人口のアンバランスが起これば騒動がおこって引き裂かれるであろう。中国は2025年には20代男人口が9600万人に対して女は8000万人しかいないのだ。インドも同年代男1億2600万人に対して女は1億1500万人に過ぎないのである。

 いずれにせよ、世界人口はますます安定化する。しかしその裏で、緊張は高まりつつあるのである。」(The Economist May 14th 2011)

【コラム】将来人口推計についての国連推計と社人研推計の違い

 以下は2100年までの将来人口推計についての国連推計(2012年改訂)とわが国の公式推計ともいうべき社会保障・人口問題研究所推計(平成24年1月推計)との違いを整理した資料である。国連推計は全世界の国々の将来人口を同一基準で推計するための仮定に基づいている。合計特殊出生率が世界平均より高い国でも低い国でも将来的には人口置換水準に近づくと仮定しているのもそのためである。わが国の出生率を取り巻く状況を考えれば少し無理な仮定となる。

 しかし、最近の政府の人口目標では「2030〜2040 年頃に出生率が人口置換水準の2.07 まで回復した場合、2060 年には1億人程度の人口を確保し、その後 2090 年頃には人口が定常状態になる」(平成26年12月27日閣議決定「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」による)とされている。すなわち、国連推計の仮定は日本においてはむしろ目標水準に近いのである。

 なお、国連推計(2017年改訂)も基本的には同じ線に沿っていると考えられる。


(2009年4月21日収録、4月21日主要国増減率追加、2011年5月5日更新、世界人口毎年推移図追加、5月20日エコノミスト記事引用、2013年7月12日更新、2015年8月20日更新、10月1日2100年日本値、及びコラム追加、2017年7月3日2017年改訂により更新、2019年6月28日2019年改訂による更新、2022年11月29日2022年改訂による更新)  


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