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 インスタントラーメンは、レトルトカレー、カニカマと並んで、戦後の食品三大発明のひとつと言われる。

 インスタントラーメンは1958年に発売された日清食品のチキンラーメンが最初(同年に販売された長寿麺という先行商品もあったが)。米国で発明されたレトルトカレーの世界初の商品化は、1968年に阪神地区で限定販売し、翌年全国販売をはじめた「ボンカレー」。カニカマは、石川県七尾市の水産加工メーカーであるスギヨが1972年に発売した商品が最初と言われる。

 2008年4月8〜9日、大阪市の「ザ・リッツ・カールトン大阪」などで「第6回世界ラーメンサミット」が開催された。世界ラーメン協会(WINA)会長の日清食品社長は「安藤百福(ももふく、日清食品創業者)が、ここ大阪でチキンラーメンを作って50年。即席麺は毎年成長し、2008年には1千億食に達する」と挨拶した(東京新聞2008.4.11)(注)

(注)インスタントラーメン略史については図録5362参照。

 ここでは、世界の主要消費国における即席麺(インスタントラーメン)の消費量、及び人口1人当たりの消費量をグラフにした。データは世界ラーメン協会HPによる。

 2012年に1,018億食とついに1千食を越えた。2008〜09年には世界不況の影響で920億食台に落ち込み、停滞したが、その後回復し、1千億食の予想は4年遅れで達成された。

 2013年にはさらに1,060億食と増加したが、その後、2年連続でいったん減少した。

 その後は順調に増加を続け、2020年、21年、22年にはコロナ禍による家庭食増の影響もあって、1,166億食、1,182億食、1,212億食と引続き過去最多を更新した。

 消費量全体では、中国が440億食と世界全体の4割を占め最も多く、次ぎにインドネシアの133億食が続いている。日本は世界第5位の59億食である。

 一方、人口1人当たりでは、ベトナムが86.4食と最も多く、一昨年1位の韓国は76.2食と2位になっている。この2国に、ネパール、タイ、インドネシアが続いており、日本は48.2食で世界第6位である。

 日本で開発された即席麺(インスタントラーメン)はいまや世界、アジアの食として普及・定着するに至っている。

 2014年、2015年と2年連続で世界の消費量が減少したのは、中国、インドネシアといった多消費国で減少幅が大きかったためである。毎日新聞(2017.7.1)によれば、減少の要因としては、@体に良くないという悪印象、A中国経済の不振にともない、根強い顧客だった出稼ぎ労働者が減少、B都市部を中心に発達し始めた宅配システムとの競合(中国、ベトナム)が挙げられていた。

 逆に、日本では、需要はむしろ伸びている。「日本では食の多様化が進んだ00年代に需要増が止まり、停滞局面に入った。しかし、各社は消費者の健康意識の高まりを逆手に取り、脂質や塩分をカットした商品を投入。マイナスイメージをはね返してきた。(中略)手軽で安価な食べ物から、健康的でおしゃれな食べ物に--。日本の新たなトレンドを海外に広め、「国際食」の意地を見せることができるか」(同紙)が問われているという。


 2020年には59.7億食と対前年6.0%の大幅増となったが、やはりコロナによる影響が強いといえる。カップ麺の買いだめ行動については図録j030参照。

 各国における即席麺の特徴は以下の表の通りである。最新の各国消費状況は世界ラーメン協会サイトのここを参照されたい。

世界のインスタントラーメン消費
国名 特徴
中国 世界消費量の半分を占める。香辛料の効いたビーフ風味が中心
インドネシア 1人当たり消費は世界第2位(2013年)。汁なしのやきそばタイプが半分を占める
日本 カップ麺割合が60%以上と最も高い。しょうゆ、みそ、とんこつ、塩味基本
米国 スープはチキン味、シュリンプ味、ビーフ味が主流
ベトナム 近年消費量が急拡大。スープは酸っぱくて辛いシュリンプ味が第1位。エースコック(日本)が日本品質を持ち込むとともに味づくりは現地スタッフに任せて開発した袋麺「ハオハオ」が市場をリードし(2010年シェア65%)、消費も拡大。
韓国 1人当たり消費は世界1(2021年)。1958年に日本で開発されて後5年遅れて1963年に韓国で生産開始。袋麺の割合が75%でビーフ味、キムチ味など辛口風味が好まれる
フィリピン 汁物袋麺は朝食としても食べられ、チキン味、牛骨味が人気
タイ 世界3大スープの一つ、酸っぱくて激辛のトムヤムクン味が中心
台湾 カップ麺の割合が50%と高い。ポーク味が半分を占め、次いでビーフ味
ブラジル 日本より柔らかい麺が好まれる。風味のよい地鶏味が第1位
メキシコ チリ辛きかせたエビ味カップ麺が好まれる。フォークで食べる短い麺入りのスープ食品として消費されている(【コラム】参照)
(資料)東京新聞2008.4.11、毎日新聞2013年9月15日(メキシコ)10月7日(ベトナム)など

 ベトナムに次ぐ世界2位の消費国韓国では、インスタントラーメンはラーミョンという名で親しまれている(普通のラーメンは生ラーミョンという)。ラーミョンは日本メーカーの協力で韓国で開発された(図録0331)。ラーミョンは韓国において高度成長とともに工事現場や軍隊の間食、学生の夜食などの簡便食として普及したが、いまではトウガラシ味インスタントラーメンが開発されたほか、韓国式ファーストフード店である粉食(プンシク)店のメニューとして、またブデチゲ(部隊チゲなる軍隊・闇市で考案されたというハム・ソーセージなども入れる闇鍋風のチゲ鍋)の最後に必ず入れて調理する食材としても利用されるなど応用範囲が広い食べ物となっている(図録88858890参照)。

 表示選択で見られる世界の地域別の消費量(一人当たり販売量)によると世界各地域でインスタント麺の消費は伸びており、今後も増勢が予想されている。

 なかでも「中央・東アジア」の消費量が世界の中でも最も多いが、2012年以降は頭打ちとなっている。「中央・東アジア」に次いで「南・東南アジア」、「北米・大洋州」の消費量が多くなっている。今後の伸びとしては、「南・東南アジア」に加え、「中東・北アフリカ」や「アフリカ」でも伸びが高いと予測されている。


 即席麺の歴史については、上記図録0331のほか、図録5362(主なロングセラー食品)も参照。

 図録0432ではナットウ類(大豆加工品)のアジア圏内における普及をインスタントラーメンの普及と比較したので参照されたい。

【コラム】メキシコのカップ麺:東洋水産「マルチャン」が「すぐできる」の代名詞に

 メキシコでヒットし、約8割のシェアを占めるに至っている東洋水産のカップ麺は、同社が1977年に米国で現地生産をはじめたものがメキシコ人出稼ぎ労働者の間で流行。労働者らが帰国する際、友人や家族への土産として大量に持ち帰ったのがはじまりとされる。以下、毎日新聞の記事「日本発・世界のヒット商品:メキシコ★チリ味利かせたカップ麺−東洋水産」(2013年09月15日)から引用する。

「同社のシンボルマークの「マルちゃん」は「簡単にできる」「すぐできる」という意味の言葉として知られるようになり、国会で審議が早々に打ち切られれば「議会がマルチャンした」とニュースが流れ、2006年サッカーワールドカップでのメキシコ代表の素早いカウンター攻撃は「マルチャン攻撃」と名付けられた。メキシコの食文化への浸透ぶりがうかがえる。(中略)

 メキシコでの発売当初から、チリ味を利かせた商品を展開したが、それでもスープが真っ赤になるほどチリソースをかけて食べる人が多い。麺の長さは、日本の約半分の15センチほど。麺をすすって食べる習慣がないので、フォークですくって、そのまま口に運べる長さにした。「カップ麺がスープ感覚で食べられている」(同社CSR広報部の吉澤亮さん)ため、日本のカップ麺よりも薄味に仕上げ、飲み干しやすいよう工夫した。

◇辛口エビ味が人気

 メキシコでの販売は、エビ、辛口エビ、チキン、ビーフの4種類の味でスタート。その後、カップ焼きそば、即席麺などの品ぞろえと、照り焼きビーフ、ハバネロ、ローストビーフなどの味を多様化。庶民的な価格設定(6ペソ=46円)もあり、カップ麺の販売個数は現在、発売当初の約650倍に達している。ジェトロのリポートによると、カップ麺の売り上げの約8割がエビ味で、そのうち3分の2を辛口が占めるという。」

(2008年4月28日収録、2010年1月30日更新、4月30日更新、2011年7月16日更新、2012年6月14日更新、2013年4月28日更新、5月16日世界推移図追加、9月15日メキシコ事情追加、10月7日ベトナム事情追加、2014年5月16日更新、2015年5月22日更新、2016年5月15日更新、2017年7月2日更新、2018年5月23日更新、2019年6月10日更新、2021年6月26日更新、2022年2月18日表示選択図世界地域別販売量、5月4日戦後の食品三大発明コメント、5月20日更新、2023年12月24日更新)


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