どの国民がワインを多く消費しているかは、普通、OIV(国際ブドウ・ワイン機構、パリ)がまとめている各国データが参照されることが多い。 ここでは、この資料ではなく、FAOがまとめている各国の食料需給表データから1人当たり日供給量(グラム)を使用した。食料需給表ベースなので、生産、輸出入、在庫変動、流通ロスなどを組み合わせたデータである点に留意が必要である。国際機関が加盟国から得ている情報から作成されているのでそれなりに信頼がおけるデータである。OIVの情報がより正確かは微妙なところだ。巻末にFAOデータとOIVデータの対照表を掲げておいた。 最も1人あたりの消費量が多いのはルクセンブルクの日量141gであり、ポルトガルの111gが続いている。この2か国に次いでワイン好きの国民として目立っているのは、ワインの本場フランスのほかスイス、オーストリア、イタリア、デンマーク、ベルギー、アルゼンチン、ハンガリー、ドイツ、スペインなどである。ワイン文化が根づいている西欧諸国や世界の主要ワイン生産国で消費量が多い点が地域的特徴となっている。 ルクセンブルクがコーヒーやワインの消費量世界一なのは夜間人口が昼間人口に対して少ないからという側面が大きい(コーヒーは図録0478参照、ルクセンブルクの特殊性については図録4575、及び図録4540のコラム参照)。 北欧諸国や英米でワイン消費がそれほど多くないのは、やはり、ビールの方に傾斜しているからであろう(下図参照)。 かつてと比べワインをよく飲むようになったとはいえ、主要国におけるランキングで見ると日本は7gで36位とかなり少ない方である。韓国、中国、台湾といった東アジア諸国も似たようなレベルである。 一方、主要国の中でインドネシア、サウジアラビアといったイスラム圏やインドではほとんどワインが消費されていない。これはアルコールを禁じる宗教的な理由に酔うものだと考えられる。 こうした事情からワインの消費量は各国で大きな差があることが分かる。 ワイン消費の世界分布を概観するために世界マップを掲げておいた。西欧を中心に、やはり、北半球と南半球の高緯度帯でワイン消費が多く、赤道周辺の暖かい地域では消費が少ないという傾向が明らかである。 ビールと同じように気候、由来、宗教、経済発展度、他の酒との関連が総合的に消費に影響していることがうかがわれるのである。 日本の場合は、飲酒好きだがアルコールには弱いという体質的な要素も影響していると思われる(図録1970、図録1972参照)。 最後に、FAOデータとOIVデータの消費量ランキングを対照させた表を以下に掲げた。人口1人当たりの重量と成人1人当たりの容量と単位が違うので量的な違いはあるが、ランキングは上位4位が共通であるほか、それ以外の主要国でも両データでそれほどの違いはないようだ。
冒頭のランキング図で取り上げた主要国50か国は、図の順にルクセンブルク、ポルトガル、フランス、スイス、オーストリア、イタリア、デンマーク、ベルギー、アルゼンチン、ハンガリー、ドイツ、スペイン、スウェーデン、オランダ、オーストラリア、ギリシャ、英国、チリ、アイルランド、ノルウェー、エストニア、リトアニア、フィンランド、カナダ、アイスランド、スロベニア、チェコ、ロシア、米国、南アフリカ、ニュージーランド、香港、スロバキア、ラトビア、ポーランド、日本、ブラジル、中国、イスラエル、台湾、韓国、トルコ、マレーシア、ベトナム、タイ、フィリピン、メキシコ、インドネシア、インド、サウジアラビアである。 (2019年8月30日収録)
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