国難突破を訴える政権与党に対して、野党は民進党が希望の党に合流する判断を示し、希望の党からの「排除」を嫌って一部が立憲民主党を立ち上げるに至ったため、“保守”対“中道”対“リベラル”といった3極構造の選挙戦となり、結果としては、小選挙区制の特色が発揮されて、第1党となった自民党の一方的勝利に終わったことは記憶に新しい。 野党が割れたため自民党が勝利したが、比例票では、自民党は、むしろ低迷しており、希望の党と立憲民主党を合わせた票を下回っていた(図録5231)。 今回の衆議院選で特に目立っていたのは、若者が与党支持、中高年が野党支持の傾向となった点である。この点を、NHKと朝日新聞の出口調査の結果から上に示した。 自民党への投票率が20代で最高、60代で最低だったのは、双方の調査で一致している。また、逆に、立憲民主党への投票率は、20代で最低、60代で最高である点でも一致している(朝日新聞の出口調査では10代も20代と同じ値で最低)。 希望への投票率は、立憲民主党ほど明確ではないが、やはり、立憲民主党と同じような若低老高の傾向となっている。なお、若い層(NHKでは10代、20代、朝日新聞では30代も)では、希望の党が立憲民主党を上回っている点も共通である。 以上のような年代別にはっきりと投票先が反対方向に分かれたのは、今回がはじめてであるが、過去からの推移を見ると、実は、与党支持の若高老低、野党支持の若低老高の傾向は、徐々に進んできていたことが下に示した2012年、2014年衆院選の結果との比較から明らかである(さらにそれ以前の衆院選の結果との比較は図録5232参照)。 こうした世代別の政治支持の構図の理由については、若者の保守化傾向と捉えられることはあっても、本質的な理由についてのコメントは報道や有識者から得られないようだ。そこで、私なりに考えた結果をダイヤモンド・オンラインの連載記事に述べておいたので、興味のある方は参照されたい(ここ)。なお、その記事ではNHKの出口調査しか取り上げていなかったが、ここで見た朝日新聞の結果も同様だったことで事実そのものには反論すべき余地がないことが分かろう。 結論的には、有権者が最大の争点として見守っていた社会保障政策への方向性が、選挙中の与野党の主張では明解でなかったため、高齢者の負担増、給付削減という政府・与党が行っている既存の政策方向に不安を感じている高齢者が、立憲民主党(あるいは共産党)といった何でも与党に対して反対という特徴がはっきりしている野党に投票したということなのであろう。 (2017年11月11日収録)
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