東京青山の神宮外苑の再開発において域内競技場の建て替えを含んだ事業費を捻出するため一部地区に高層ビルの建設が予定され、東京都心部の貴重な緑地空間とこれまで受け継がれてきた生活文化的な価値が失われることに懸念が高まっている。

 これと関連して、東京は世界の他の首都と比べてどれだけ緑が多いのか、少ないのかが気になるところである。OECDの報告書から各国首都の緑地比率を比較したデータを掲げた。

 こうした都市比較に際しては、単なる行政区域としての都市データを比較するとどこまで郊外を含んでいるかなど都市の成り立ちの違いでバイアスが生じる。そこで、ここでは、人口の密集度などから機能的都市圏を区画し、その中の都心核における緑地比率を比較している。

 都心核といってもいわゆる都心部よりは広いイメージである点を含めOECD/EUによる機能的都市圏や都心核の定義については図録9391参照(なお、ここでは建物の平均的な高さも示したが、東京はすでに世界有数のノッボ都市である)。

 結論から言うと、世界各国の首都の中でも東京はもっとも緑の少ない都市のひとつである。

 東京の都心核における緑地比率は21.4%であり、OECD37か国の平均46.3%の半分以下であり、各国首都のなかではチリのサンチャゴの11.9%、メキシコのメキシコシティの18.1%に次ぐ低さとなっている。

 人口1人当たりの緑地面積でも東京の都心核は33uと最小のコロンビアのボコタ及び上記2都市に次ぐ小ささとなっている。

 主要首都の都市核の緑地比率を高い順に並べると以下であり、東京の緑はそれらと比較してもかなり希少なものになっていると言わざるを得ないだろう。

 ベルリン 60.3%
 ロンドン 57.3%
 パリ 49.3%
 ローマ 41.7%
 ソウル 35.9%
 東京 21.4%

 なお、東京、ニューヨーク、ロンドンの都心行政区の緑地比率の比較を図録9390に掲げているがこれとも整合的な結果である。

 いずれにせよ、世界の主要首都の中でもっとも緑が少なく建物も高い東京でさらにそうした状況を推し進めることは妥当なことかという議論が起こってもおかしくない。

 取り上げた各国首都名を図の順に示すと、サンチャゴ(チリ)、メキシコシティ(メキシコ)、東京(日本)、テルアビブ(イスラエル)、アテネ(ギリシャ)、ボゴタ(コロンビア)、マドリード(スペイン)、アンカラ(トルコ)、ソウル(韓国)、ローマ(イタリア)、リスボン(ポルトガル)、ウィーン(オーストリア)、オタワ(カナダ)、ブラチスラバ(スロバキア)、レイキャビク(アイスランド)、アムステルダム(オランダ)、ブダペスト(ハンガリー)、ルクセンブルク(ルクセンブルク)、ブリュッセル(ベルギー)、パリ(フランス)、プラハ(チェコ)、リガ(ラトビア)、タリン(エストニア)、リュブリャナ(スロベニア)、ワルシャワ(ポーランド)、コペンハーゲン(デンマーク)、ビリニュス(リトアニア)、ダブリン(アイルランド)、ロンドン(英国)、キャンベラ(オーストラリア)、ベルン(スイス)、ヘルシンキ(フィンランド)、ストックホルム(スウェーデン)、ベルリン(ドイツ)、ウェリントン(ニュージーランド)、オスロ(ノルウェー)、ワシントン(米国)である。

(2024年4月10日収録)


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