【コラム】機能的都市圏(FUA)について 独立ページ表示

 当コラムは、図録1169b(人口)、図録6859(公共交通)、図録9391(建物の高さ)、図録9392(緑地比率)の共通コラムである。

 OECDとEUが設定している機能的都市圏(FUA、Functional urban areas)は、行政的な市域とは別に、機能的・経済的に一体となっている都市域を国際比較が可能なように定義したものである。例えば人口や緑地率などで東京とパリを比較するのに東京23区とパリ市のデータを比較するよりFUAの東京とパリを比較した方が厳密な比較となる。人口では東京23区965万人、パリ市225万人であるがFUAでは東京3,647万人、パリ1,124万人であり、FUAの方がずっと大きい範囲となっている。


 機能的都市圏(FUA)は、人口の集中した「都市核」(city core)とその都市核と高度に結合された労働市場を有する「後背地」(commuting zone)からなる経済的に機能している地域単位をいう。また、他の同様な地理的な都市圏設定と異なり、各国の行政区域との最低限のリンクが確保されるように配慮されている。

 具体的な定義は以下の通りである。

 「都市」(a city)は少なくとも50%以上の人口が都心地域(urban centre)に住んでいる地方行政単位(市や自治体)であり、通常、複数の地方行政単位の集合体である。ここで都心地域とは、人口密度が1ku当たり1,500人以上の1kuメッシュが連坦した地域であり、合計人口が5万人以上の区域を指す。「後背地」(commuting zone)は少なくとも15%の労働力がその都市に通勤している地方行政単位からなっている。「都市」と「後背地」を合わせて「機能的都市圏」を構成する。その場合、「都市」は「都市核」(city core)とも呼ばれる。

 機能的都市圏は、衛星等による1kuごとの人口データや人口センサスの通勤データ等を用いて区画されており、日本では76、OECDでは約1,200の都市圏からなる。

 機能的都市圏は人口規模によって小都市(5〜10万人)、中都市(10〜25万人)、大都市Metropolitan(25〜1500万人)、巨大都市Large metropolitan(1500万人以上)に区分される。

 日本では行政的な市が拡大し農村的な地域まで含むようになったため1960年以降国勢調査で市内の連坦した高人口密度地域を人口集中地区(DID)として設定し、その区域で各種の集計が行われるようになった。FUAもこれと同趣旨であるが、@国際的な共通性をもっている、A都市中心部と通勤でむすばれた地域が行政域を越えても一体の都市圏とされる、B複数の行政市をまたがる都市圏の設定がある、といった点で異なっている。

 DIDについては、原則として人口密度が1ku当たり4,000人以上の基本単位区等が市区町村の境域内で互いに隣接して、それらの隣接した地域の人口が国勢調査時に5,000人以上を有するこの地域を「人口集中地区」としている。

 下に、日本の機能的都市圏の配置図と人口を掲げた。

 また、参考に機能的都市圏と類似するにゃんこそば氏作成の「スターバックス都市圏」マップを掲げた(「ビジュアルでわかる日本」)。これはスターバックス店5km圏が連続している圏域を都市圏ととらえたものであるが、少なくとも日本について、圏域の区画や人口がOECD/EU定義の機能的都市圏とほぼパラレルである。実態的に都市をとらえようとすると結局似た結果になるのだろう。

 近畿圏のスタバ都市圏については、「大阪」都市圏が兵庫の加古川、大阪の岸和田から京都を経て、滋賀の草津まで4県にまたがっている点、また機能的都市圏では「大阪」都市圏に呑みこまれている「奈良」都市圏が一番近いところで約200mまで近接しているもののギリギリ「大阪」都市圏と隔てられている点が興味深い。


(2024年5月3日作成、5月10日日本の機能的都市圏の人口、5月16日スタバ都市圏)