米国は「移民の国」であるといわれる。しかし、その内容は時代により異なってきている。ここでは、米国における移民人口の動きからその点を探ってみよう。

 ここで移民、あるいは移民人口の統計上の定義をはっきりさせておこう。通常、国際的には、外国生まれの人口を移民人口と定義する場合が多い。日本は移民流入が少なかったせいもあって、移民人口を把握しようという意識が低く、人口統計で海外生まれかをきく設問が欧米各国では当然となっているのに対して、国勢調査など定期的に行われる統計調査では、国籍はきいていても、どこ生まれかという設問が欠落しているので、海外諸国と移民人口比率を比較できない状況となっている。

 なお、移民を外国生まれと定義すると移民2世、3世は外国生まれではないので移民にはカウントされなくなる。2世を捉えるには両親の出身地、3世を捉えるには祖父母の出身地を調べる必要がある。

 英国からの移民が中心となって18世紀後半に建国した米国では、その後も、アフリカからの黒人の強制移住は別にして、重点をシフトさせながら、西欧、北欧、アイルランド(1845年からの飢饉)、ドイツ、中国(奴隷制の廃止による労働力不足)、南欧・東欧(新移民)、日本、中南米と世界から移民が到来してきた。

 図を見ると、移民人口比率は19世紀後半から1910年までは14%台という非常に高い水準を維持していた(現在でもなお14%台には達していない)。ピークは1890年の14.8%である。

 新旧移民の間で軋轢がたかまったため、1924年に成立した移民法は、いわゆる新移民を国別に厳しく数で制限し、さらに日本人移民は禁止された。これをもって「自由な移民の国アメリカ」が終わったといわれた。その後は、確かに、移民人口比率も低下に転じ、1940年には10%を切るに至っている。

 第2次世界大戦後、米国も大きく経済発展したため、1965年の移民法ではようやく国別制限と日本人移民禁止も解除された。このため、移民人口比率は1970年の4.7%をボトムに上昇に転じ、その後、再度、大きく上昇して、2016年には13.5%と過去のピークに近づいている(欧米諸国の移民比率推移との比較は図録1171参照)。

 図の下半に掲載した移民の出身地の推移を見ると、1960年の段階では、欧州・カナダからの移民が、なお、アジア、中南米からの移民を圧倒していたが、その後、アジア、メキシコ、それ以外の中南米出身の移民人口が大きく増えてきた様子がうかがえる。

 また、近年の移民流入者の構成を見ると、中南米からのヒスパニック系をインド、中国、フィリピンなどのアジア系が上回るに至っているのが新しい動きである。新たに流入した移民の国別出身地内訳(2016年)は、多い順に、インド(12.6万人)、メキシコ(12.4万人)、中国(12.1万人)、キューバ(4.1万人)となっている。

 将来の移民構成は現在とは大きく変化すると考えられている。「米国における最大の移民集団は2055年までにヒスパニック系をおさえてアジア系が最大となると予想される。ピューリサーチセンターの推計によれば、2065年の移民人口構成はアジア系38%、ヒスパニック系31%、白人系20%、黒人系9%と予測されている」(図と同じ資料)。

 分かっている範囲で先祖が移民である割合は米国の場合高く、一般論として多文化主義(人種・民族の多様性)を受け入れる国民は、保守層でも、欧州各国の左派層並みか、それより多い点については図録9032参照。米国場合は、トランプ大統領の言動に見られるように反移民の意識が高まっているとしても、欧州ほどではないのである。

 州別の移民人口比率とその変化については図録8736に掲げた。なお、この図録に掲げた州別の移民人口の最多出身地についてのマップを以下に再掲した。1960年にはメキシコ国境を除くほとんどの州で欧州各国(あるいはカナダ)からの移民が最多であったが、現在では、メキシコを中心とする中南米からの移民(あるいはアジアからの移民)が最多の州がほとんどとなっている。


(2018年10月7日収録)


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