米国の各州の移民割合とその変化を知るため、図には2010年の州別の色分けマップ、及び1970年と2010年の割合を相関図に示した。移民割合は外国生れの者の割合である。州別より下位の地区別の移民割合については図録8737に掲げたので参照されたい。

 色分けマップを見れば、米国の西海岸カリフォルニア州から南部海岸部のテキサス州・フロリダ州を経て、東海岸のニューヨーク州周辺に至る沿岸部で移民割合が高く、大陸部では概して移民割合が高いことがうかがえる。

 2010年の移民割合が最も高い州はカリフォルニアであり、27.2%が外国生まれの割合となっている。これに次いで、ニューヨーク、ニュージャージーの2州が20%を越えている。

 カリフォルニア州の移民割合は1970年の8.8%から割合の倍率で3.1倍となっており、増加の勢いも目立って大きい。なお、相関図で原点とを結ぶ直線の傾きの高い州ほど変化が激しいといえる。

 北東部では、隣接するニューヨーク州とニュージャージー州のほか、その周辺のマサチューセッツ、コネチカット、ロードアイランドの各州で移民割合が8%前後と高く、一方、北方にはずれたニューハンプシャーなど3州は、その半分程度と低い。

 北東部では、いずれにせよ、ニュージャージー州を除くと移民割合の変化は、2倍以下であり、そう急激に移民が増えているわけではない。

 これと対照的なのが南部であり、もともとは移民割合が1%未満の州が多く、国内でも最も移民の少ない地域であったが(従来からキューバ系などヒスパニック移民が多かったフロリダ州は例外)、ウェストバージニア、デラウェア、フロリダを除いて、いずれの州も割合が3倍以上と急増している。中でも、もともと移民比率が比較的高かったテキサス州、メリーランド州などでは、更なる移民の増加が目立っている。

 移民が南部より多かった西部では、この40年の変化では南部よりは移民割合の拡大が大きくない。ただし、現在、移民割合が最高のカリフォルニア州、あるいはネバダ州などは移民割合がかなり高くなっている。もともと移民がニューヨーク州に次いで全州2位だったハワイ州の移民割合の拡大は2倍以下であり、今では、6位の高さにまで順位を落としている。

 中西部は、南部と西部の中間的な性格の州が多い。イリノイ州はかなり移民割合が大きくなっているが、ノースダコタ州では移民割合がむしろ低下している。

 全米にわたって、特に沿岸部で移民比率が高くなっているが、これまで移民が少なかった南部などでは、移民割合が急増した州も多く、以前は少なかっただけに社会的な軋轢も大きくなっていると考えられる。トランプ大統領が大統領選の目玉公約として、移民が社会の脅威となっているとして米メキシコ国境に壁を設けるとしたのも、こうした背景によるものと考えられる。

 以下のマップには、各州移民人口の最多出身地をあらわした。1960年にはメキシコとの国境部の州ではメキシコ出身者が多かったが、それ以外では、欧州各国やカナダ出身者が最多であった。2013年には、ほぼ全州でメキシコ出身者が最多となっており、例外的に、フロリダ州ではキューバ、ハワイ州、アラスカ州ではフィリピン、また北東部の諸州では、メキシコ以外の諸国(ニューヨーク州はドミニカ共和国、ニュージャージー州はインド、マサチューセッツ州では中国など)の出身者が最多となっている。

 米国全体の移民比率の推移と先進国の中での位置については図録1171参照。米国人の移民観と先進国内での位置については図録9032参照。


 原データを2010年の移民割合の高い順位掲げると次の通りである(単位:%、州名(移民割合1970年→同2010年)で表記)。カリフォルニア州(8.8→27.2)、ニューヨーク州(11.6→22.2)、ニュージャージー州(8.9→21.0)、フロリダ州(8.0→19.4)、ネバダ州(3.7→18.8)、ハワイ州(9.8→18.2)、テキサス州(2.8→16.4)、マサチューセッツ州(8.7→15.0)、メリーランド州(3.2→13.9)、イリノイ州(5.7→13.7)、コネチカット州(8.6→13.6)、ワシントンD.C.(4.4→13.5)、アリゾナ州(4.3→13.4)、ワシントン州(4.6→13.1)、ロードアイランド州(7.8→12.8)、バージニア州(1.6→11.4)、ニューメキシコ州(2.2→9.9)、コロラド州(2.7→9.8)、オレゴン州(3.2→9.8)、ジョージア州(0.7→9.7)、デラウェア州(2.9→8.0)、ユタ州(2.8→8.0)、ノースカロライナ州(0.6→7.5)、ミネソタ州(2.6→7.1)、アラスカ州(2.6→6.9)、カンザス州(1.2→6.5)、ネブラスカ州(1.9→6.1)、ミシガン州(4.8→6.0)、ペンシルベニア州(3.8→5.8)、アイダホ州(1.8→5.5)、オクラホマ州(0.8→5.5)、ニューハンプシャー州(5.0→5.3)、サウスカロライナ州(0.6→4.7)、インディアナ州(1.6→4.6)、アイオワ州(1.4→4.6)、アーカンソー州(0.4→4.5)、テネシー州(0.5→4.5)、ウィスコンシン州(3.0→4.5)、バーモント州(4.2→4.4)、オハイオ州(3.0→4.1)、ミズーリ州(1.4→3.9)、ルイジアナ州(1.1→3.8)、アラバマ州(0.5→3.5)、メーン州(4.3→3.4)、ケンタッキー/州(0.5→3.2)、ワイオミング州(2.1→2.8)、サウスダコタ州(1.6→2.7)、ノースダコタ州(3.0→2.5)、ミシシッピ州(0.4→2.1)、モンタナ州(2.8→2.0)、ウエストバージニア州(1.0→1.2)

(2018年10月2日収録)


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