2010年5月1日に開幕する中国・上海万博が近づいており、テーマソングの盗作問題、リハーサルの様子などマスコミ報道等でかなりの話題となっている。テレビで報ずる上海市民の声では、上海万博を通じて、世界の人々に中国はこんないい国なんだということを知って欲しい、また世界経済に貢献している中国の実力を知って欲しいという内容が多い。

 それでは、現在、世界の人々は中国をどう考えているのであろうか。英BBCが実施した世界世論調査からこの点を探ってみた(時系列変化については図録8015、中国の経済力への世界の見方については図録8192参照)。

 英国BBC放送が定期的に行っている世界世論調査では主要国に対する各国国民の評価(世界にプラスの影響を与えているか、それともマイナスの影響を与えているか)を調べている。同調査はBBCの委託を受け、民間調査機関グローブ・スキャン及び米メリーランド大学が実施したものであり、2010年調査では世界28カ国(中米6各国は1カ国扱い)に住む約3万人を対象にアンケート調査を実施している。留意すべきは、評価する対象は国であるが、評価者は各国国民である点である(例えば日本国への評価であり日本人への評価ではない)。すなわち国家間の外交的立場を直接表現しているものではない。

 ここでは、中国に対する各国国民の評価をグラフにした。なお別のBBC調査によって中国に限り、経済力と軍事力の伸張に対する世界の見方を図録8192、図録8194に掲げた。

 調査対象28カ国のうち中国人を除く平均では、肯定的評価(概してプラスMainly positive)が41%、否定的評価(概してマイナスMainly negative)が38%であり、評価対象となった17カ国・国際機関の中では、プラスからマイナスを引いた値の順位でインドに次ぐ11位であった。功罪相半ばというのが感想を世界の人々はもっているといってよいだろう。

 17カ国・国際機関への各々の評価結果については図録8014参照。また日本を世界がどう見ているか、については図録8016参照。

 それでは、各国国民はどう中国を見ているだろうか。プラスからマイナスをひいた値では、以下のように、16カ国がプラス超過、12カ国がマイナス超過となっている。

中国への評価
プラス超過(16カ国) マイナス超過(12カ国)
中米諸国、チリ、ブラジル、メキシコ、ロシア、英国、エジプト、ケニア、ナイジェリア、ガーナ、中国、パキスタン、フィリピン、タイ、インドネシア、アゼルバイジャン カナダ、米国、ポルトガル、フランス、スペイン、ドイツ、イタリア、トルコ、オーストラリア、韓国、インド、日本

 中国人は自国を非常に高く評価している。世界からの見方と比べると自信過剰なほどである。特に、中国が世界にマイナスの影響を与えていると思っている批判的な中国人は8%と極めて少ない。各国国民の自国評価でマイナス評価の割合については、図録8016の参照図に掲げた。

 プラス超過では、途上国の国民がほとんどである。特に、中東エジプトを含めアフリカ諸国の国民からの評価が高いのが目立っている。資源開発や国際社会での地位向上を目指して中国の経済援助はアフリカ諸国に対して活発だと報じられることが多いが、その成果が現れているようにもみえる。

 アフリカ諸国に次いでは、ラテンアメリカ諸国の国民からプラス評価を得ている。アジア諸国の中ではパキスタン、フィリピンからの評価は高いが、その他からは必ずしも評価は高くない。アジアの中で対中評価の最も高いパキスタンの中国に対する親密度については図録8194参照。

 主要先進国の中では英国人だけがプラス超過である。

 マイナス超過は、英国以外の欧米諸国とアジアの周辺諸国の国民である。米国人の半分はマイナス評価である。ヨーロッパでは特にドイツ人、イタリア人の評価が低い。欧米人は地理的に遠いので領土的な関心は低いが、人権問題、一党独裁体制、地球環境問題などへの反発が大きいと推測される。

 アジアでは、国境問題を抱え、またライバル視されているインドの国民、あるいは同じ東アジアにあって国境を接し、中国の大国意識による圧迫を感じている韓国、日本の国民からの評価が低い。アジアでは、人権問題もさることながら国境を接していることから生じる具体的問題での反発が大きいと考えられる。

 韓国人と日本人を比べると、韓国人は反感が多く、日本人は好感が少ないという特徴がある。中国から高句麗は必ずしも朝鮮民族の国ではなかったといわれた韓国人は、領土的な将来不安の中で、韓国テレビの歴史ドラマでは対中国の複雑な歴史を描いたものが人気を博している。日本では領土問題もさることながら、歴史問題が中国共産党の政権確立に利用されていると感じていることから逆反発の意識が強いと思われる。

 中国の経済成長は日本経済をはじめ世界経済に大きなプラスをもたらしているといえるが、中国人が期待するほど世界はそれを高く評価していないといえよう。

(2010年4月26日収録)


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