中国の経済力躍進に対する世界の見方については図録8192で見たが、ここでは、同じBBCの国際世論調査の結果から、中国の軍事力増強に対する世界の見方を図示した。

 経済力躍進については、25カ国中、17カ国で肯定的とする割合が否定的とする割合を上回っていたのに対して、軍事力増強に対しては、肯定が否定を上回っているのは6カ国に止まっている。軍事力増強についての世界の見方は、経済力躍進に比べて、はるかに否定的であるといえよう。

 中国の軍事力増強を肯定的に評価している国はパキスタンやインドネシア、アフリカ諸国、ブラジルなどである。中国からの経済援助を含めて中国との経済関係が深まっていることの影響の他、中国からの軍事援助、武器調達が期待されている要素も無視できないだろう。

 中国の軍事力増強に対してパキスタンは肯定的な者が61%と否定的な者11%を大きく上回っていることで目立っている。インドに対する牽制力が大きく評価されているのではないかと考えられる。パキスタンでは、中国と戦闘機の共同開発を行う(2007年)といった軍事協力の他、近年、中国との貿易協定で経済関係も強まっている。こうした動きを背景にパキスタンでは政府主導のもと公立の学校で中国語を必修科目にしようとする動きが出ているという(NHK海外ネットワーク2011年11月19日放映ワールドトレンド)。

 インドネシアは1999年の東チモール騒乱にインドネシア軍が関与したとして、米国が軍事援助を凍結したのを受け、兵器の老朽化に対応するため中国からの武器調達を積極化させたという。

 中国の経済力躍進についての見方は、肯定から否定を除いた値が、ほぼ同等であった日本と韓国であるが、軍事力増強に関しては、韓国は21%が肯定的と回答しており、1%しか肯定的と回答した者がいない日本とは大きく異なっている。韓国にとっては、日本やロシア、北朝鮮に対する牽制力を中国軍事力が有していることを評価する者も一定存在するためだと思われる。

 なお、対象となっている25カ国は、肯定マイナス否定の大きい順に、パキスタン、インドネシア、ガーナ、ブラジル、ナイジェリア、ケニア、スペイン、フィリピン、エジプト、ペルー、南アフリカ、英国、インド、メキシコ、トルコ、フランス、ロシア、韓国、オーストラリア、イタリア、米国、ポルトガル、カナダ、ドイツ、日本である。

(2011年7月19日収録、12月3日パキスタン対中関係のコメント追加)


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