日本のジニ係数は戦後と比較して戦前は非常に高かった(図録4660参照)。ここで、東アジアや東南アジアの諸国と比較すると、実は、戦前の日本は、アジアの中では最もジニ係数の高い経済格差が最大の国だったことが分かる。 中国は、戦前は、日本ほどではないにしても、ジニ係数はかなり高かった(戦前は年代によりかなりの上下変動が認められるが実態がそうだからなのかデータの制約の問題かは分からない)。戦後は共産党が政権を取り、基本的には貧しさを分かち合う体制が形成されたためであろうが、ジニ係数は、0.3を下回り、アジア全体の中で最低となったが、ケ小平の「先富論」、すなわち「先に豊かになったものが、遅れたものを助けてやれば、みんなが豊かになる社会が実現する」という考え方にそった1978年の改革開放路線への転換を受け、ジニ係数は上昇をはじめ、2000年には戦前の最高レベルにまで到達している。 2000年には東アジアの中では市場経済の下で都市的な経済発展を実現した香港やシンガポールと並んで中国のジニ係数は0.45前後となっており、経済発展に伴う一時的な格差拡大を軌道修正した日本、韓国、台湾が0.3〜0..35と低いレベルなのと対照的に高くなっている。なお、この資料によれば、日本における大方の理解とは異なり、日本の経済格差の拡大傾向は認められない結果となっている。 東南アジアでは一般的には戦後になって経済発展とともにジニ係数も上昇した国が多いが、その後、年代によっては、富が均分化してジニ係数が下がっているケースもある(図録8120参照)。しかし、東アジアの日本、韓国、台湾のように0.3台まで格差が抑えられることはなく、2000年段階ではベトナムでも0.4台前半、その他のインドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンは0.4台後半とおしなべて格差が大きい状態になっている。 (2016年5月23日収録)
[ 本図録と関連するコンテンツ ] |
|