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 商業流通は、かつて商店街の小売店舗での販売が中心だった時代から、高度成長期以降、百貨店の繁栄、郊外型のスーパー・大型専門店の進出、そしてさらに最近では、ネット販売の躍進と次々と流通の大変革が起こり、かつての問屋街は、全国各地の小売店主による買い付けの足も遠のき、その結果、多くの場合、単なるオフィスビル街へと変貌を遂げている。

 ここでは、そうした変貌を遂げる前の「大阪」の問屋街の状況を二宮書店の「日本地誌15」(1974年)によって見ておきたい。

 類似事例として、「東京」の問屋街については図録7832参照、「京都」の同業者町については図録7834参照。

 かつての「天下の台所」、大阪の中心商業地は、大阪城の西側、各藩蔵屋敷があった旧淀川中之島の北側及び南側(特に南側)に形成され、現代でも大阪の賑わいの中心となっている。

 核となっているのは、南北を「筋」、東西を「通り」と呼ぶ、いわゆる「橋筋」の街路によって整然と区画された「船場・島ノ内」地区であり、大阪の問屋街は、この地区およびその四囲にそれぞれの業種に応じ発達した。

 表示選択で、もう少し時代が下った時点の「大阪の主な問屋街」の図も掲げている。

 図に掲げた1970年前後における問屋街の状況を一覧表で整理すると次の通りである。

大阪の問屋街一覧(おおむね北から南へ)
品目 場所 特長
繊維 梅田地区 戦後の駅前露店から成長した新しい問屋街
自動車部品 上福島 松下幸之助の創業地も近く。
乾物 天満地区 かつての天満青物市場の周辺。面影を伝える白壁の蔵が現在も点在。
薬品 道修町・平野町・淡路町 吉宗の薬種取引公許により江戸、長崎をむすぶ全国中心地となった経緯
既製服 谷町・内本町 谷町筋北側の既製服問屋は一部を残して枚方市長尾谷町に集団移転
繊維 船場地区 (本町〜丼池〜南長堀)
”大阪の顔”というべき専門化した繊維問屋街
瀬戸物 横堀 夜店「陶器市」の風物に郷愁を感じる町
木材 長堀 水運の便の良い堀江付近の材木業者
小間物
・雑貨
船場地区 (博労町・南久太郎町・備後町)
菓子玩具 松屋町筋 (材木町・住吉町・松屋町)
松屋表500軒と呼ばれた。文房具和洋紙も。
機械・金属 立売堀・新町・空堀 鋲・ネジの国産化につづく第一次大戦後の鉄鋼ブームの時代から。中小企業が多い。
金物 島之内地区(八幡筋) 欧米からの輸入洋風金物の取引から建築金物の卸・製造拠点に
家具 立花通り 幕末より道具屋筋と称された南堀江上通。たんす・長持・諸道具仏具・仏壇・建具
家具 河原町 難波河原町。大火後、映画館・演芸場の興業街となると同時に古物家具商が集まった。
はきもの 御蔵跡 各種はきもの(西四条の靴、各地散在のゴムはきもの以外)
電気器具 日本橋筋 小売兼業。あらゆる種類の商品が安価に見いだされる。
皮革 西四条・大国町 西成区西四条の革靴
木材 小林町 大正区の貯木場に近い



(2021年9月23日収録、コラムは図録7832から引継ぎ)


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