カレーはいまや国民食に近いので地域ごとにもそう大きな消費量の違いはない。家庭で消費されるカレールウの購入量の全国トップは鳥取市、第2位は青森市、第3位は新潟市、第4位は山形市となっている。逆に購入量が少ないのは少ない方から那覇市、岐阜市、千葉市、東京都区部である。

 カレーには、外食による摂取やカレールウを使用しない作り方もあるので、カレールウの購入量でカレー好きかどうかを、必ずしも判断できないかも知れない。

 鳥取市は、購入金額でも全国トップである。鳥取市はカレールウだけでなく、イワシ、カレイ、カニといった海の幸が購入金額全国トップであるのと並行して、即席麺、マヨネーズ、カレールウなどの購入金額も全国トップであるという独特の食生活文化を有している(図録7724参照)。

 2005年、この総務省統計局家計調査でカレールウの購入量・金額が全国トップになったのを機に鳥取市で「鳥取カレー倶楽部」が誕生。地元の食材を最低3種類使って作るのを基準とし、「うち(我が家のこと)のカレーコンテスト」など市民を巻き込んだイベントも盛んという(東京新聞大図解「ニッポンの国民食カレー」2010.10.31)。

 鳥取砂丘を有する鳥取は、鹿児島(吹上砂丘)、宮崎(シラス台地・都城盆地)と並ぶらっきょうの三大産地の一つであり、このためつきもののカレーライスの消費も多いという説があるが、鹿児島や宮崎の消費額は全国平均以下なので有力な要因とは見なしがたい。なぜ、鳥取でカレーなのかについては、女性の就業率が高く、夫婦共働きの家庭が多いことから手軽に作れるカレーの人気がある、という説もあるが、「鳥取カレー倶楽部」の会長である筒井洋平氏は「本当のところはよく分からない」と話しているという(ここ)。

 全国各地の消費量を地図にすると、東北日本海側、北陸、山陰、福岡・佐賀といった日本海側で消費量が多いのが目立っている。京浜、中京、京阪神の3大都市圏では相対的に購入量が少なくなっている。

 念のために15年ほど前に当る2000年代前半の消費地図も掲載した(注)。凡例の区分が最近より概してレベルが高いことから全体としてカレールーの消費量は以前はもっと多かったことが分かる。鳥取市は2,388gとやはりトップであり、2位の青森市を10%上回っていた(最近もやはり2位の青森市を8%上回っている)。また全体の分布状況は現在と類似していた。しかし、鳥取周辺の広島・岡山・島根や福岡・佐賀は以前は現在と異なり相対的に消費量が少なかったことが分かる。カレーが好きなのは西日本では鳥取だけの特徴であり、全体としてはカレー消費は鳥取を除いて東高西低の状況だったといえる。なお、現在東北の中で例外的に消費量が少ない秋田市は以前は消費量は少なくなかった。

(注)2000年代前半には東北や東日本のカレー好きが今より鮮明であった。これを東北・東日本のB級グルメ、ごった煮文化のあらわれと見なす見方もある(図録7708参照)。

 こうしたカレールウの分布状況と関連があるかもしれないと考えられるのは、松本清張の「砂の器」でよく知られるようになったが、東北弁と出雲弁とがズーズー弁と呼ばれる同じ音韻上の特徴を持つ点である。下図には参考までにこの点を示す方言地図を掲げた。また、全国の中でも、塩分の多い食品の消費が多い地域、あるいは消費量が多い食品の品目数が多い地域ともエリアがダブっている(図録7758、図録7724参照、これらで掲載した図を以下に再掲)。

 どうしてこれらの分布が重なっているかについては縄文直系地域での減塩代償消費仮説を図録7758に述べておいたので参照されたい。


(2016年4月5日収録、4月6日2000年代前半の消費地図追加、4月7日らっきょう説紹介、4月8日消費トップ食品が多い地域図参照、4月17日塩分の多い食品の消費地図追加)


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