全体的な傾向としては、東日本はラーメン(中華麺)好き、西日本はうどん・そば好きという傾向が明らかである。内食の麺のうちインスタント麺(カップ麺と即席麺の計)はラーメンが多いと考えられるので、インスタント麺好きの地域(緑)と中華麺好きの地域(ピンク)を合わせると、ほぼ、外食の中華そば好き地域(ピンク)と重なる点から、外食の麺の地域分布がほぼすべてを語っていると解することができよう。 つまり、東日本の麺好きは、うどん・そばというよりラーメン好きによっているのである。 若干例外的な地域分布として目立っているのは、外食の麺で、東日本の中でも北関東の群馬、埼玉、茨城で日本そば・うどん好きとなっている点である。これは北関東のうどん文化をあらわしていよう。 家計調査によると、麺類に対する年間支出金額(2020〜22年平均)は、内食の麺では、うどん・そばが生と乾を合わせて5,867円、パスタが1,378円、中華麺が4,556円、カップ麺と即席麺を合わせたインスタント麺が7,611円となっている。今やインスタント麺が最も多くなっているのが印象的である。パスタは千円台と少ないが、グラム単価も安価なので量的にはそう少ないわけではない。しかし、順位の高さで区分したパスタ好きの地域の数は、食のウエイトからするとやや多めになっている点については注意が必要である。 内食の麺の消費支出額上位4位の地域を掲げると以下の通りである。
外食の麺の年間支出金額(2020〜22年平均)では、日本そば・うどんが5,260円、中華そばが5,891円と後者の方がやや多くなっているがほぼ同等である。 外食の麺の消費支出額上位4位の地域を掲げると以下の通りである。
外食の中華そば(ラーメン)については山形と新潟が1位を争っている。2013年から20年まで8年連続で全国1位だった山形市は21年、新潟市に王座を明け渡した。山形市はラーメン店の紹介サイト開設など首位奪還に向け約2300万円の税金を投入。両者とも強力なブランドラーメンは見当たらないものの「総合力」でラーメン好きの県民性を競い合っているという(産経新聞2023.1.14)。22年には、再度、山形市が首位を奪還している。 新潟県の「5大ラーメン」は、燕市の背脂ラーメン▽長岡市のショウガしょうゆラーメン▽新潟市のあっさりしょうゆラーメン▽新潟市の割りスープつき濃厚みそラーメン▽三条市のカレーラーメン。新潟には昭和初期から中国出身者「華僑」の中華料理店が多く、それらがやがてラーメン店になっていったという。全国的に有名な背脂ラーメンもそうした店の1つである「杭州飯店」(燕市)が元祖。 山形県のラーメンは、みそベースのスープに辛みそが乗った赤湯ラーメンや、鶏がらと煮干しの米沢ラーメン、魚介系の酒田ラーメンなど、新潟に劣らず多様性を誇る。日本そば店もラーメンを出す店が多い。多様性が消費量の多さにつながっている上、消費の落ち込みがちな夏場は冷やしラーメンが観光客にも人気で、需要は途切れないという(以上、産経記事による)。山形県のラーメン好きは、1923年の関東大震災で横浜中華街で料理屋を営んでいた中国人が被災して全国各地に移り住み、そこでラーメンを出すようになり、県内では、最初に酒田や米沢に移り住み、そこから広まったのがきっかけという(県のHP)。 信州そばで名高い長野は、内食ではうどん・そばが6位と高いが、外食では、日本そば・うどんは19位と中華そばの9位を下回っており、ラーメン圏に区分されている。信州人は、そばはウチで食べ、外食ではむしろラーメンを好んでいるらしい。北陸地方も同様の傾向にある。 長野や北陸と正反対なのが静岡であり、内食では中華麺が5位と多いのに、外食では日本そば・うどんが香川に次ぐ2位となっており、麺好きである点は同じであるが、長野と反対の外食と内食の使い分けを行っているようだ。 大阪、京都、兵庫といった阪神圏地域は、上位10位までに大阪のインスタント麺しか登場しておらず、実際、順位を調べてみると、特に外食の麺で全国の中でもランキングが非常に低くなっている。肉やパンでおなかが満たされているとともに、小麦粉食品としては、麺というより、お好み焼き、たこ焼きといった方面に特色を見出しているせいであろう。 今後も、引き続き、麺好き地域どうしの熱い戦いが繰り広げられそうだ。 全国各地に名物の麺料理が存在している。参考までにその一覧表を以下に掲げた。中華麺系、うどん系、そば系などが東西に偏らず各所に分布していることが分かる。
(2023年5月26日収録、図録7710の一部を移動、6月18にしんそば画像)
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