香川県民のうどん好きはよく知られている。この点を家計調査のデータで確認してみよう。

 総務省統計局の家計調査では、県庁所在市の品目別の消費支出が計上されており、1世帯当たりで、どんな食品を多く購入しているかが分かる。このデータから宇都宮の「ぎょうざ」や、水戸の「納豆」などがよく地域的に消費が多い食品としてよく取り上げられる。

 調査項目になっているすべての食品について、年間購入額の地域ランキングを調べてみると、高松は、3つで全国トップになっている。すなわち、「生うどん・そば」、「乾うどん・そば」、そして外食の「日本そば・うどん」の3つである。しかも、そのうち「乾うどん・そば」以外では全国の消費額の2倍前後となっており、また、すべてで2位以下をかなり引き離している。「そば」と「うどん」が一緒になっているので、データとして少しすっきりしないところもあるが、やはり、香川県民のうどん好きがこうしたランキング・トップを生んでいるのは確かであろう。

 ちなみに、すべての食品で1位はそれら3品目だけであり、その他の品目では2位のたこが目立つぐらいである。すなわち、うどんの消費が多いだけでなく、うどん以外の消費が目立たないという点でも、うどんへのこだわりが際立っているのである。その結果、実は、高松のエンゲル係数は全国で最も低くなっている(図録7717)。

 うどんばかり食べているだけでなく、うどんのコシへのこだわりから逸れるのを嫌ってか、付け合わせにしてもネギやカツオ、卵、天ぷらなどのシンプルな具が多いので、食費はそんなにかからないのであろう。讃岐うどんの店には、いろいろな流儀があって(例えば、店の裏の畑からネギを自分で収穫して、うどんとともに食べるなど)、地元の人でも初めての店では緊張するときく。一種のグルメ志向なのであるが、お金のかからないグルメ志向という点で特異な文化だと言わざるを得ない。

 そうひた意味で香川のうどんはソウルフード化しているといえる。

 図録には、全国の消費額の2倍前後となっている「生うどん・そば」と外食の「日本そば・うどん」について、2000年以降毎年の高松の値を他の46都道府県の県庁所在市の値と比較した図を掲げた。

 こういうグラフを描いてみると、高松は2位以下を引き離したトップを維持しており、香川県のうどん好きが視覚的に明確になる。

 そのほか、グラフをよく見るといろいろなことに気がつく。

 高松以外の地域のばらつきが、家庭食として購入する「生うどん・そば」より、外食の「日本そば・うどん」の方が大きくなっている。うどん屋、そば屋で、うどん・そばを食べるかどうかの方が地域性が反映されやすいということであろう。

 また、高松の「生うどん・そば」の購入額が少なくなっている点にも気がつく。一時は年間1万円以上使っていたのに、今は、7000円を切っている。全国的にも「生うどん・そば」の購入額は縮小傾向だが、高松の方がより落ち込んでいる感じである。

 外食の「日本そば・うどん」の方はというと、2000年頃は1万円以下しか使っていなかったのに2010年には1万5千円を上回るまでに増加したが、その後は、縮小傾向に転じている。全国では、下がっていた消費額が高松とは反対に2010年前後からむしろ増加に転じており、まったく、逆の推移を示している。

 香川のうどん特化度は、高松の消費額を全国の消費額で割った倍率で示すことができる。以上の2つの品目でその値の推移を見たものが末尾のグラフである。うどん県として広く知られるようになった香川県であるが、家庭で買う生うどんは全国以上に減る傾向だ。また高まっていた外食のうどん熱は、皮肉なことに、うどん県への改名が宣言された2011年以降、むしろ、急速に冷めているようである。

 その理由としては、私が2019年11月に香川県の「統計セミナー」で講演を行った時の統計課の担当者によると、うどん県が有名になり、他県からの客でうどん店に行列ができるようになり、県民はむしろ敬遠するようになった点が挙げられた。さらに、講演会における聴衆からの質問で、隣の徳島県が糖質制限で健康アップという報道が県民に影響を与えて、うどん摂取が控えられるようになったのかもしれない、という意見が開陳された。


(2020年12月13日収録)


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