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 元筑波大学教授の原田勝二氏が調べた酒豪型遺伝子(アセトアルデヒドを分解する酵素の力を増す遺伝子の型)の出現率によると、日本人全体の60%が「酒が強い酒豪」、35%が「そこそこ飲めるがあまり酒には強くない中間派」、そして残りの5%が「酒がまったく飲めない下戸」という比率になるという(原資料はここ)。

 この酒豪の比率をさらに都道府県別にまとめてみると、県別の棒グラフ、あるいは分布図のように「東北・北海道・九州・四国には酒豪が多く、近畿・中部・中国には少ない」。こんな興味深い“勢力分布図”が浮き上がる。

 酒豪が最も多いのは秋田県の76.7%であり、岩手県、鹿児島県、福島県がこれに次いでいる。逆に酒豪が少ない下戸県は三重県の39.7%が最少であり、愛知県、石川県がこれに次いでいる。

 こうした分布図が形成された経緯は原田氏の仮説によるとこうである。

 人間は本来、発酵した果実を食べられるように進化したため、酒に強い酒豪ばかりだったが、アフリカ起源の現人類が黒人、白人、黄色人へと分岐するプロセスを経て、今から3万〜2万5千年ほど前に中国南部あたりで突然、遺伝子が変異し、酒に弱い下戸が生まれた。

 それが渡来人として日本に渡り、混血を重ねながら国内に広がった。日本に渡った渡来人は中央権力のあった近畿地方を目指しながら、九州北部から瀬戸内、近畿、中部などに多く移り住んだ。このため「移動ルート」にあたる地域には下戸が増えた。逆にこの「移動ルート」から離れている北海道、東北、九州南部、四国南部には、結果として下戸の遺伝子があまり入り込まず、もともと酒に強い酒豪が数多く残った。

 「東北や九州には酒豪が多い」。これまで何となく抱いていたイメージが、科学的に“証明”された格好となる。

 渡来人の定着ルートに沿った地域分布としては、このほか、頭のかたち、血液A型頻度、憑きもの、方言、食べ物などの分布図でも共通である点については図録7720に掲げたので参照されたい。酒に弱い遺伝子が出来た背景については図録1970のコラムでふれた。

 下図には、飲酒習慣者がどの県で多いかという国民健康・栄養調査データとここで取り上げた酒豪型遺伝子の出現率との相関図を描いてみた。酒豪県の中でも青森は呑める以上に呑み、秋田、岩手は呑めるから呑むのに対して、福島は呑めるのに呑まないといった県民性の違いがあることが分かる。

 逆に、三重、愛知、石川、岐阜などは呑めないから呑まない地域である。呑めないのに呑むことで目立った県はなかった。

 図録7335には、飲酒習慣と喫煙習慣の国民健康・栄養調査データを散布図であらわしたので参照されたい。


(2020年11月19日収録)


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