家計調査によって、3つの主要なだし(出汁)材料であるこんぶ・煮干・かつお節の支出額割合について、地域別(県庁所在市)別の1964年前後3か年平均から2013年前後3か年平均への49年間の変遷を追ったグラフを作成した。最新年次まで追っていないのは、煮干が独立の項目だったのが2014年までだからである(2015年以降は「他の塩干魚介」に統合)。またかつお節は「かつお節・削り節」の値である。

 3大食肉といえる牛・豚・鶏の肉消費の構成の変遷については図録7238a、3大飲み物である緑茶・紅茶・コーヒー消費の変遷については図録7238fに掲げたので参照されたい。

 この半世紀の変化としては、全国的に煮干が縮小し、それに代わってこんぶとかつお節、特にこんぶが埋め合わせている。こんぶ・煮干・かつお節の全国における支出額構成比は、それぞれ、25%、40%、35%から45%、18%、40%へと変化しており、煮干は半減、こんぶは20%ポイント増、かつお節は5%ポイント増となっている。

 地域別の特徴については以下のような点が見て取れる(ページ末分布図参照)。
  • 煮干シェアの縮小を埋めるかたちで全国的にこんぶ使用がかつては余りこんぶを使わなかった地域にまで広がっている。
  • こんぶは1964年当時には富山、金沢、福井の北陸3県や大津、京都など関西地方で特に多く使用されていたが、こんぶ使用が全国的に広がった今でも、こうした地域(大阪を加えて)は、なお全国の中でもこんぶ使用の多い地域として目立っている(昆布の歴史は図録0668参照)。東北の青森、山形、山陰の松江、九州の長崎なども、かつても今もこんぶ使用が多い。
  • 煮干の発祥は江戸時代、18世紀初めの瀬戸内海地域と考えられている。かつては一般家庭で手に入りにくかったかつお節など高級なだし材料の代用品として全国に普及した煮干は、高度成長期以降、多くの地域で使用が縮小したが、広島、山口や高知を除く四国諸県、あるいは九州の大分、宮崎といった瀬戸内海地域では、なお3割前後のシェアを保っている。
  • かつお節は、今も昔も、静岡、和歌山、高知、鹿児島といったかつお節の産地を抱える太平洋岸の地域で消費が多い。
 まとめると、煮干が縮小、こんぶが躍進し、かつお節が堅調を保つ中で、北陸・京阪のこんぶ、静岡・高知・鹿児島など太平洋岸のかつお節、瀬戸内海沿岸の煮干という地域の特色は基本的に不変である。

 3大食肉といえる牛・豚・鶏、あるいは3大飲み物である緑茶・紅茶・コーヒーの消費については、全国平準化がこの半世紀における主要なトレンドであったが、だし材料の3品目については、平準化は進んでいるものの地域的な特色がなお保たれている点が異なっている。

 平準化の指標としては、データのばらつきの程度をあらわす変動係数が使われることが多い。だし材料の地域別消費額の変動係数を調べてみると、次図で見るように、こんぶとかつお節は平準化が進み、煮干はやや地域特化が進んでいるという結果になっている。



(2022年6月5日収録、2023年5月22日分布図)


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