海外から日本を訪問する旅行客数(インバウンド)は2013年についに念願の1000万人を超えた。2003年に政府がビジット・ジャパン事業をはじめた時に2010年の目標とした訪日客数を2008年秋のリーマン・ショック、2011年の東日本大震災による冷え込みを乗り越え、3年遅れで達成したこととなった。それ以降も大幅増が続き、2018年には3000万人を超えた。 2015年には、1971年以降はじめて、訪日客が海外旅行客を上回った。 海外への旅行客数(アウトバウンド)と海外からの旅行客数(インバウンド)の世界ランキングについては、それぞれ、図録7212、図録7213参照。 (出国者数−過去のコメント) 2013〜15年はアベノミクスにより円安傾向となったので日本人海外旅行客数は減少し続けている。 高い円高水準の影響もあって2012年の日本人海外旅行客数は1,849万人と前年より大きく増加し、史上最多となった。 2010年の日本人海外旅行客数は1,664万人と前年から回復した。これは、円高の追い風によるものであるが、景気低迷が続き一時期ほどの人数規模ではなかった。 2009年の日本人海外旅行客数は1,545万人と前年から落ち込んだ。これは、世界的不況と新型インフルエンザの影響である。円高によるプラスの影響もこれを補い得なかった。 2008年の日本人海外旅行客数は1,599万人と前年からかなり落ち込んだ。これは、原油高騰に伴う燃油サーチャージの値上げやリーマンショック以降の世界的な金融危機に伴う景気後退の影響である。 2003年の日本人海外旅行客数は1,330万人と対前年300万人以上落ち込んだが、これは、日本人の渡航先として大きいアジア地域で新型肺炎SARS(重症急性呼吸器症候群)が発生し、その影響で4月から8月にかけて対前年同月3〜5.5割の減少となり、SARSが終焉した後も影響が継続し11月まで対前年マイナスが続いたためである(参照観光白書)。また3月に開始されたイラク戦争の影響もあると考えられる。2004年〜05年は1,683万人、1,740万人と大きく回復したが、その後円安傾向もあって横ばいである。 過去を振り返ると徐々に増えていた海外旅行客数は、1985年を境に急増傾向に転じた。海外旅行の急増はまさにバブル期を象徴するような動きだったといってよいであろう。バブル経済が崩壊した1991年には海外旅行客数が減少に転じ、この傾向が止まったかに思われたが、実際は、1992年以降も急増傾向は続き、1997年に山一證券などの大型金融破綻がはじまるとやっと止まった。その後は増加傾向自体が消失し、むしろ、増減の変動が大きな横ばい傾向が長く続いている。 海外旅行客数の急増がバブルの象徴だとするならば、バブル期は1985年から1996年までだったと捉えられよう。 (訪日客−過去のコメント) 日本政府観光局(JNTO)によれば、2015年の大幅の伸びの「主な要因は、クルーズ船の寄港増加、航空路線の拡大、燃油サーチャージの値下がりによる航空運賃の低下、これまでの継続的な訪日旅行プロモーションによる訪日旅行需要の拡大。円安による割安感の定着、ビザの大幅緩和、消費税免税制度の拡充等も増加を後押しした」(2016年1月19日報道発表資料)。 2014年はビザの大幅緩和や10月からの消費税免税制度拡充のほか、アジア地域の経済成長に伴う海外旅行需要の拡大、円安進行による訪日旅行の割安感の浸透などにより大幅の訪日外客数の拡大となった。「訪日外国人向けの消費税の免税品目は家電製品や衣料、バッグなどに限られていたが、10月1日から食品や化粧品などが加わった。」(東京新聞2014.11.20) 2013年はアベノミクスにより円安傾向となったこともあり、ついに1000万人を突破した。東南アジア向けのビザの発給要件を相次いで緩和したことも増加に影響している(図録7200)。 2012年は前年から大きく回復し、836万人となり、2010年に次ぐ水準となった。 2011年は622万人と大きく落ち込んだがこれは同年3月11日の東日本大震災とこれに伴う原発事故の影響である。 2010年は861万人と過去最多を更新した。「観光立国」を目指す政府は、訪日外国人旅行者数の達成目標として2010年1000万人、2013年1500万人、2016年2000万人を掲げているが、2010年には達成目標には届かなかった。 訪日外国人旅行客数は増加傾向にあり、2008年には835万人と過去最多を更新しているが、08年は景気後退や円高の進行により伸び悩んだ。09年はこれに新型インフルエンザの影響が加わった。特にウォン安により韓国からの訪日客が減少したのが響いた(図録7200参照)。 (海外旅行の流出対流入倍率) 海外旅行の流出対流入倍率は為替レートに大きく左右される。海外での消費と国内消費とのどちらが有利かということに影響するからである。 1970年代〜80年代前半は、為替レート以上にこの倍率が上昇していた時期であり、世界の中での日本人の相対的な豊かさの向上が海外旅行を促進していた時期といえる(所得効果が高かった時期)。 それ以降2000年前後までは為替レートでこの倍率はほぼ決定されていた。 2000年前後以降は、為替レートは上昇基調であるのに、この倍率は低下基調となった。これは、対外と対内のアンバランスを解消し、観光立国を日本の1つの柱にしようと政府では2002年から本格的取り組みを開始し、2004年には首相や国交省大臣が「ビジット・ジャパン・キャンペーン」のPRビデオに出演するなどトップセールスも進め、2008年には観光庁を発足させるなどの「観光立国」へ向けた取り組みを進めているからである(中国へのビザ発給要件の緩和、韓国の短期滞在ビザ免除などの措置も効果があった)。2003年のSARS、イラク戦争による流出激減、2009年の新型インフルエンザ、リーマンショック後の景気停滞による流入激減の影響を除くとほぼ流出対流入倍率の低下は基調となって来た。 この結果、訪日客は日本人海外旅行客の3〜4割程度を占めているに過ぎなかったが2008年、また2010年には5割以上となった。 しかし2011年は大震災、原発事故の影響で再度倍率は上昇した。その後、2012〜13年は、再度、低下、2013年には2倍をかなり下回ることになった。 そして、2015年にはインバウンドがアウトバウンドを上回り、同倍率は1以下となった。 (資料説明) 法務省資料に基づく日本政府観光局(JNTO)集計による。「訪日外国人旅行者数」は法務省「出入国管理統計年報」の入国外国人数から日本に居住する外国人数を除き、これに外国一時上陸客等を加えた数である。「訪日外国人旅行者数」の6割程度が観光客であるが、業務その他の旅行客が約4割、一時上陸客が2〜3%を占めているとされる。 (2004年12月22日、2005年4月14日更新、2006年4月11日更新、2007年4月11日更新、2008年6月9日更新、2009年6月3日更新、2010年8月23日更新、2011年1月27日最新年JNTO推計に変更、2012年6月15日更新、2013年4月29日更新、2014年2月10日更新、2015年1月26日更新、2016年1月19日2015年推計値、2017年9月22日バブル期記述、2020年1月18日更新)
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