人口の違う国、また人口規模が変化する時期を比較するので、人口10万人当たりの死者数を指標として採用している。なお、同じ指標で主要国だけでなくOECD29か国の3時点比較を図録6826に掲げているので参照されたい。 いずれの国でも交通事故死者数は減少傾向にあることが分かる。ただし、減少がはじまった時期にはかなり差がある。 1970年代はじめに交通事故が多かった国は、フランス、米国、そして日本といった主要先進国だった。英国も主要先進国だがすでに1970年代はじめにはレベルが低くなっていた。 まだ経済成長のさなかにあって、こうした主要先進国の交通事故はかなり深刻だったわけであるが、その後は、傾向的に低下を続けてきたという点も共通である。ただし、現在では、フランス、日本、英国は10万人当たり5人未満のかなり低いレベルに達しているのに対して、自動車大国米国ではなお10人以上の高いレベルにとどまっている。 まだ経済が低開発状態だった1970年代には交通事故も少なかった韓国は、その後の著しい経済成長とともに交通事故が急増し、1990年前後には10万人当たり30人という高いレベルに達した。日本でも1950年代には速度制限無視の「神風タクシー」が横行したが、この頃の韓国はそれに近い状況だったと考えられる。しかし、韓国もその後、交通事故は減少傾向に転じ、今では、日本の2000年代前半のレベルにまで落ちてきている。 ロシアは1991年のソ連崩壊の時期前後に交通事故死者数が増えたが、その後の経済低迷で減った。しかし、経済がかなり好転した2000年代には再度、過去のピークに近い増加を示した。その後、2000年代後半からは減少に転じ、現在では米国と同じか下回る水準にまで落ち着いて来ている。ロシアの道路交通が物流面でなお低水準である点については図録6410参照。 新興国として経済の躍進が著しい中国とインドについては、正反対の傾向が認められる。すなわち統制が厳しい中国ではもともとそう多くない交通事故は減少傾向であるのに対して、インドは経済成長とともに自動車保有率も高まり、交通事故死者数の増加傾向が目立っている。 こうした異なる経緯をたどっているものの、米国、ロシア、インドは現在10万人当たり10人台という主要国の中で比較的高い交通事故死亡者の国グループとなっている。 (2022年4月2日収録)
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