輸送量をあらわす指標にはトン数とトンキロとがある。トンキロはトン数に輸送距離を掛け合わせた数字であり、同じ1トンの貨物でも2倍の距離を運べば2倍の輸送量と計算する。平均輸送距離が異なる国別や輸送モード別の輸送量を比較するにはトンキロが用いられる(図録6480参照)。

 図には、ITF(International Transport Forum:国際交通フォーラム、OECDの下部組織)及びEUが公表しているデータを使って、日本の輸送モード別のトンキロ・ベース輸送量の推移を主要国の動きと比較した。なお、ロシア、ウクライナ、ポーランドについては図録6403で詳しく見ている。

 図を見ると以下のような点を読み取ることができる(最近年における主要国の輸送モード別分担率比較している図録6410もあわせ参照されたい)。
  • 道路輸送はいずれの国においても戦後の経済発展とともに伸びが目立っているが、米国や日本では、近年、頭打ちの状況にある。
  • 鉄道の果たす役割は国により大きく異なり、重要性が最も高いのはロシアであり、米国がこれに次いでいる。日本はもっとも重要性が低くなっている。中国、EUはその中間である。
  • 米国の鉄道輸送の発展は西海岸と東海岸を結ぶ路線などでダブル・スタック・トレイン(海上コンテナを上下に2個積み、ページ下の画像は、デンマークのコンテナ海運最大手マースクの40フィートコンテナが鉄道輸送されている様子)という高効率の輸送方法が開発され、規制緩和の潮流の中で1980年代にそれへの投資が加速されたことによる(マルク・レヴィンソン「物流の世界史」ダイヤモンド社、p.96)。
  • パイプラインの果たす役割も国により大きく異なっている。ロシアで重要性がもっとも高く、米国、中国、EUはこれに次いでいる。日本はほとんど役割を果たしていない。エネルギー源にせよ輸送方法にせよ技術変化が激しい時代には、出来てしまえば安価な輸送が可能となると考えてパイプラインのような長期固定施設をもつより、10〜20年で更新される船舶による輸送の方が結局は安くつくことが多いので、この点に関して日本が特に不利な条件にあるとは思えない。
  • 島国の日本では近代に入って衰退したが、大陸国では域内を流れる大河を利用した内陸水運の役割がなお大きい。中国では、経済成長を支える動脈の一つとして内陸水運の輸送量が大きく拡大している。
  • 沿岸海運は重厚長大の時代には日本で特に大きな役割を果たしていたが、近年は道路と逆転している。中国やEUでも域内海運はなお大きな役割を果たしている。
  • ロシアは1991年のソ連崩壊後の経済の落ち込みで大きく輸送量が減った点が目立っているが、最近は、いずれの輸送モードでもほぼソ連崩壊前の水準に回復している。
  • 経済の躍進が続いている中国とインドは貨物輸送量も大きく増大している。中国は種々の輸送モードを総動員して輸送需要に対応しているが、インドの場合は道路輸送に頼る部分が大きい。


(2011年10月3日コメント追加、2021年12月6日ダブルスタック・トレインの画像、2022年2月10日更新、インド追加、4月15日2009年以前日本道路輸送量の接続係数を新しものに変更、5月7日マルク・レヴィンソン、10月19日EUデータ更新、2024年1月19日更新)


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