国別の軍人の戦死者数については、ソ連の1,360万人が図抜けて多く、ドイツの325万人、日本の193万人がこれに次いで多くなっている。この他データがある中では、フランスが34万人、英国とイタリアが33万人、ユーゴスラビア、米国が30万人とほぼ同レベルとなっている(米国は市民を含んだ計であるが、海外で戦われたのでほとんどが軍人である)。 一般市民の死者数では、ソ連が700〜770万人と最大であるが、ポーランドの600万人も非常に大きい。この他、ドイツの360〜381人、ユーゴスラビアの140万人も目立って多くなっている。これらと比べると日本の39.3万人(外地での死亡は含まず)はかなり少ないレベルである。図録5227における外地を含む80万人であったとしてもヨーロッパの諸国には到底及ばない。 この図録では、軍人と一般市民の人命の損失数の対人口比を比べている。 これを見ると、最大の被害国は、ポーランドであり、実に、人口の17.2%が第2次世界大戦の犠牲となっている。ソ連が10.4〜11.0%、ユーゴスラビアが10.9%、ドイツが9.5%と1割前後となっており、非常に大きな犠牲を払ったことがうかがわれる。この他、ギリシャやオーストリアも7.2%となっている。ソ連の犠牲の大きさがロシアの現在の人口ピラミッドからも見て取れる点については図録8980参照。 こうしたヨーロッパ諸国の対人口比で見た犠牲者の大きさと比較すると日本の場合は3.2%(別推計でも4.2%)とおおむね半分以下の水準である。 数字での比較ですべてを語ることは出来ないが、こうした事実を頭に置いて議論しないと独りよがりになってしまうことは明らかであろう。北方領土交渉におけるロシアとの議論もまた然りである。 満州における残留日本人へのソ連兵の蛮行がロシアへの悪印象として現代にまで引きずられていると思われるが、ドイツの場合は、日本で言えば、いわば内地で、直接の敵だったソ連兵の蛮行を蒙ったことになる(小説であるが深緑野分の名作「ベルリンは晴れているか」2018年がこれを描いている)。それもソ連の軍人、一般市民の犠牲の大きさが背景にあることはいうまでもない。 ソ連に比べて米国の人的被害の少なさから、米国は本当に第2次世界大戦の勝利者なのだろうかという感情も生じる。エマニュエル・トッドによれば「私見によればドイツ人は、第二次世界大戦における米国の勝利を正当なものと見做していません。というのも、真の勝利は地上戦における勝利であり、その勝利はロシアのものであったということを、ナチス・ドイツと熾烈に戦った連合国側兵士の90%がロシア人だったということを、ドイツ人は知っているからです」(「問題は英国ではない、EUなのだ」文春新書、2016年、p.32)。 なお、アジア太平洋戦争におけるアジアの犠牲者数、及び日本の戦没者の地域別のデータについては、図録5225に、空襲被害の日欧比較は図録5227bに掲げた。 (2019年1月24日収録、2020年1月23日エマニュエル・トッド引用)
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