ここでは、日本調査における組織・制度への信頼度について、時系列結果を図録化した(国際比較は図録5215参照)。日本の最新の調査年次は2019年であり、前回の2010年からこれまでの2倍近くのインターバルとなっている点には留意が必要である。 時系列的に比較可能な組織・制度を、2019年における信頼度の高い順に掲げると、自衛隊、警察、裁判所、新聞・雑誌、テレビ、大企業、行政、環境保護団体、国連、政府、労働組合、女性団体、国会、APEC、政党、宗教団体である。 各組織・制度は年次によってかなり信頼度の変動が見られるが、その中で、新聞・雑誌とテレビは高位安定、宗教団体は低位安定が目立っている。 新聞・雑誌やテレビなどジャーナリズム、メディアに対する信頼度が高く、国会や政党などの政治分野、あるいは宗教団体に対する信頼度が低いという基本構造は不変であるが、その理由についての私見は図録5215に掲げた通りである。 政治と関係する組織・制度である行政、政府、国会、政党は、この順で信頼度の水準が低くなっており、政治的な要素が強くなるほど信頼度が低くなることを示している。 また、これら政治的な組織・制度は、毎回の信頼度の変化パターンが相似形である点が目立っている。すなわち、第3回(1995年)から第6回(2010年)まで低迷を続け、その後2019年には一気に10%ポイント前後回復している点が共通である。 小泉政権の退任後、2006年9月からの第1次安倍政権、及び福田、麻生、鳩山、菅、野田と自民党3内閣、民主党3内閣の短期政権が続き、信頼度が低下したのが、2013年1月以降の第2次安倍政権で長期政権となり、安定政権下で信頼度も回復してものと見なせよう。 政治と関係する組織・制度である行政、政府、国会、政党は、信頼度も連動して変化するのだと考えられよう。 逆に、自衛隊や警察といった実力組織、あるいは裁判所の信頼度がこうした政治的な組織・制度と連動せず、政治から独立した存在であることを示しているのは好ましいこととも考えられる。 傾向的な変化として目立っているのは、自衛隊への信頼度の上昇であろう。 自衛隊については、1995年の阪神・淡路大震災以降、内外の防災面で果たしている役割が評価されているためと考えられる(図録5221a参照)。2005年については米国における2001.9.11同時テロ後の国際協力活動の影響もあろう。 警察への信頼度が2000年に大きく落ち込んでいるのも目立っているが、これは、1999年9月の神奈川県警の覚せい剤使用モミ消し事件以後、新潟の女性監禁事件に端を発した新潟県警および特別監察での一連の不祥事(県警本部長が深夜まで飲酒、マージャンをしながら事件の指揮)、女子大生刺殺事件で明らかになった埼玉県警上尾警察署の捜査の失態など、2000年にかけて不祥事が次々明らかになったためと考えられる。また、当時、見かけ上、犯罪認知件数が急増していたことも影響していよう(図録2786参照)。 警察と同様大企業についても、信頼度が2000年に大きく落ち込んでいるのが目立っているが、これは、2000年夏、食中毒事件の雪印(6〜7月)、経営が破綻したそごう(6月)、リコール隠しの三菱自動車(7月)と日本を代表する名門企業が相次いで不祥事を起こした影響と思われる。 2010年までは労働組合に対する信頼度の傾向的な低下も目立っていた。これは、労働組合が労働者の保護と言うより既得権益の擁護に傾いているというイメージによるものと思われ、組織率の低下(図録3810)ともリンクしている。もっとも2019年には信頼度が大きく回復している。非正規労働者にも配慮するようになった結果だろうか?
(2006年8月17日収録、2014年5月14日更新、7月22日調査概要表追加、2021年1月28日更新)
[ 本図録と関連するコンテンツ ] |
|