自衛隊に対する国民意識の変化を内閣府世論調査の結果の推移でたどった。

 2018年1月調査では「良い印象」はほぼ横ばいであるが、「身近な人が自衛隊員になることに賛成」は70.4%から62.4%へとさらに下がった。これは、2018年2月のピョンチャン冬季五輪開会式への北朝鮮幹部参加や3月の米朝首脳会談の合意までは、北朝鮮による米本土を攻撃できる核・ミサイル開発をめぐって対立する米朝間で戦争勃発の可能性も感じられていたからである。

 2015年1月調査では前回に比べて「良い印象」はほぼ横ばいであるが、「身近な人が自衛隊員になることに賛成」は72.5%から70.4%へと下がった。これは下にふれるように、安倍政権下で集団的自衛権の行使容認を閣議決定した影響と考えられる。

 2012年2月調査では前回2009年1月に比べて、「良い印象」が80.9%から91.7%へとかなり上昇し、また「身近な人が自衛隊員になることに賛成」が64.7%から72.5%へとかなり上昇している。

 これは、2012年3月の東日本大震災、福島第一原発事故での自衛隊の活躍によるところが大きいと言える。

 1969年からの長期推移については、徐々に自衛隊に対する見方は良くなってきている。無謀な太平洋戦争を招いた軍事組織への反感からゆっくりと離脱しつつあるともいえよう。

 1988年から1991年にかけて自衛隊に対する印象がかなり悪化したが、この時期の変化には、1988年のなだしお事件(7月23日に海上自衛隊潜水艦と遊漁船が衝突)への反感や1991年1月のイラク空爆にはじまる湾岸戦争への協力要請への対応に伴う不安が影響していると考えられる。

 1994年から1997年にかけては、逆に、印象が改善しているが、1995年の阪神・淡路大震災に伴う災害派遣(1月17日)が影響していると言えよう。

 その後、以下のような事象も自衛隊への印象に影響を与えていよう。

・イラクへの自衛隊派遣(2003年〜06年)
・防衛庁から防衛省への昇格(2007年1月)
・元防衛事務次官・守屋武昌夫妻の収賄事件(山田洋行事件)(2007年11月逮捕)
・集団的自衛権の行使容認を閣議決定(2014年7月)

 以下には、自衛隊員になることへの反対理由の推移を追った図を掲げた。自衛隊員になることに反対と回答した人に、その理由をきいた結果では、2012年から2018年にかけて、最多の回答である「戦争などが起こった時は危険な仕事だから」が71.3%から81.3%へと他の選択肢が減少傾向である中で目立って増え、また過去最高の値を更新している。

 これは、安倍政権の安全保障政策の傾向から、自衛隊が戦争にコミットする可能性が高くなったと国民は感じ(戦争に巻き込まれるおそれについては図録5222参照)、さらに最近は上記のような米朝対立への懸念があるためであろう。

 なお、反対理由の「自衛隊の社会的評価が必ずしも高いと思えないから」は10%台とそう多くないが、1991年には30%以上と今の倍以上とかなり多かった点が目立っている。同じ敗戦国のドイツでも兵士の仕事を批判的に見る傾向がある点については図録5223参照。


(2012年4月16日収録、2015年3月9日更新、反対理由図追加、2016年3月26日コメント改訂、2018年4月6日更新)


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