各国の国民は、子どもたちが自分の国で育った場合に、将来、親たちの世代に比べて、経済的に、暮らしが良くなると考えているのか、あるいは悪くなると考えているのかを調べたピューリサーチセンターの調査結果を見てみよう。

 2015年の結果を収録した時は、先進国では、暮らしが良くなると考えられず、途上国では、良くなると考えている傾向が認められた(その際のコメントと図を下に掲げておいた)。

 2018年においてもそういう傾向は認められる。「良くなる」が「悪くなる」を上回っているのは、先進国では、18か国中、余り先進国らしくない2か国(ポーランドとロシア)だけであり、途上国では、9か国中4か国にのぼっている。

 ただし、2015年当時と比較すると途上国の経済が悪化しているため、「良くなる」の割合が増えているのは、インドネシアとフィリピンというアジアの2か国のみであり、中南米、アフリカの諸国は、むしろ、割合がかなり減っている(先進国に区分されているがアルゼンチンもかなり減っている)。

 「良くなる」の割合が「悪くなる」を下回るのが通常の先進国の中でも、日本とフランスは「良くなる」が15%と最低水準となっている。これは、2015年の時と同じである。日本の場合は当時と比べてもさらに3%ポイント悪化となっている。日本の経済状況は、失業率は最低水準、就職率は改善と、そう悪いとはいえないし、国民の自国経済に対する現状認識(図録4512)は改善しているにもかかわらず、将来性についてはより悲観的になっているというのが大きな特徴といえよう。

 以下には、参考までに、対象国が多かった2015年の結果とコメントを掲げた。
(2015年データ収録時のコメント)

 各国の国民は、子どもたちが自分の国で育った場合に、将来、親たちの世代に比べて、経済的に、暮らしが良くなると考えているのか、あるいは悪くなると考えているのかを40カ国で調べたピューリサーチセンターの調査結果を見てみよう(下図参照)。

 孔子は次のように言っている(論語子罕第九)。

 後生おそるべし、いずくんぞ来者の今にかざるを知らんや

 「自分より後の世代の進歩は畏敬するべきである。これから出てくる人が、どうして今の自分たち程になれないと言うことができようか」という意味であろう。

 しかし、実際上、そう感じられるのは発展途上国の国民であり、すでに経済が発展した成熟国であればあるほど、将来世代は現世代より暮らしが悪くなると考える傾向が明確である。例えば、欧州・北米の総ての国、また、アジア・太平洋のうちの韓国、マレーシア、オーストラリア、日本では、「良くなる」より「悪くなる」の方が多くなっている。

 それ以外では、イスラエルを除く中東の諸国、ラテンアメリカのメキシコ、ベネズエラ、アフリカのタンザニアのみが、やはり、「良くなる」より「悪くなる」の方が多くなっているが、これらは、直近の経済状態が悪化しているか、紛争が深刻という理由によるものであろう。

 ただし、紛争のさなかにあるウクライナでさえ、「良くなる」の方が「悪くなる」を大きく上回っているのは印象的である。ロシアにも似たところがある。こうした旧ソ連圏では、ソ連崩壊後のこれまでの状況がひどすぎたので、将来は今より悪くなるとは考えられないためという側面も強かろう(図録8985参照)。

 「良くなる」が少なく、「悪くなる」が多い国としては、特に、イタリア、フランス、日本が目立っている。日本は、「良くなる」の少なさでは世界3位、「悪くなる」の多さでは世界2位である。当面の経済状態がそう順調でないことと高齢化に伴う社会保障の将来負担増による将来展望の暗さが原因であろう。

 他方、経済成長が著しい国では、どんなに困難な国内問題があろうとも「良くなる」が「悪くなる」を大きく上回っているのも印象的である。これは、ベトナム、中国、インド、ナイジェリア、エジプトなどに見られる状況である。

 先進国の中では、日本、イタリア、フランスの低調と比べて、ポーランド、ドイツ、米国については、将来展望がそう暗くはなっていないのが目立っている。スペインは失業率も高く(図録3080)、債務問題もあるが、将来展望はそう暗くない。

 関連するデータとしては、同じくピューリサーチセンターの調査結果である図録1215(老後の安心の国際比較)も参照されたい。


 図で取り上げている国は、図の順番に、ポーランド、ロシア、韓国、イスラエル、アルゼンチン、ドイツ、ハンガリー、スウェーデン、オランダ、米国、オーストラリア、カナダ、スペイン、英国、イタリア、ギリシャ、日本、フランス、インドネシア、フィリピン、インド、ナイジェリア、ブラジル、南アフリカ、ケニヤ、メキシコ、チュニジア、2015年は、ポーランド、ドイツ、米国、スペイン、カナダ、英国、イタリア、フランス、ロシア、ウクライナ、ベトナム、中国、インド、インドネシア、パキスタン、フィリピン、韓国、マレーシア、オーストラリア、日本、イスラエル、トルコ、ヨルダン、パレスチナ、レバノン、チリ、ペルー、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、ベネズエラ、ナイジェリア、エチオピア、ブルキナファソ、セネガル、ガーナ、ウガンダ、南アフリカ、ケニヤ、タンザニアである。

(2015年7月25日収録、8月19日旧ソ連のコメント補訂、2017年8月22日論語引用、2018年9月24日更新)


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