中央調査社は、1954年(昭和29年)に時事通信社調査室と(旧)国立世論調査所を母体に、(旧)総理府が主務官庁の社団法人として発足した調査実査機関である(2012年2月に一般社団法人へ移行)。全国に立地する支社は各地域の時事通信社内に事務所を置いている。同社は時事世論調査を実施しているほか、内閣府世論調査など政府調査を多く受託実施しているが、独自の調査も行っており、毎年実施している「人気スポーツ」調査もそうした調査の一つである。同じ調査から図録3976gでは人気スポーツ選手トップテンの推移を掲げたが、ここでは、どんなプロスポーツが好きだと思っているかの推移を追った。

 2024年は「プロ野球」の1位が1996年から続いている。「プロサッカー」が3年連続の2位、「大相撲」も同じく3年連続の3位。「プロバスケットボール」の4位は過去最高。

 2023年はWBCにおける侍ジャパンの優勝や大谷翔平選手の活躍もあってプロ野球の人気が昨年に続きかなり上昇した。

 2022年は「どれもない」が20.3%へと大きく低下し、コロナ禍からやや脱し、観客が戻ってきている反映だろう。プロ野球とプロサッカーの復調が目立っている。

 2021年(4月調査)はコロナの影響でスポーツ観戦への制約が大きかったせいか、「どれもない」が20.2%から27.8%へと急増し、他のスポーツはいずれも値を下げている。

 2018〜20年は順位には変化なく、19年は全体にやや値が下降した。

 2018年も「野球」が首位であり、2年連続人気上昇。17年に回復した「大相撲」の人気は、18年は一転下落して再び3位。

 2017年に稀勢の里が横綱になったこともあって大相撲がプロサッカーを抜いて2位に浮上した。現状の人気順位は、プロ野球、大相撲、プロサッカ、プロテニスが人気をもっており、これにプロゴルフが13%程度で続いている。プロボクシング、カーレース、プロレスは10%未満と好きな日本人はやや少数派である。

 2015年には錦織圭選手の活躍でプロテニスが10%未満から一気に倍増した点が目立っている。

 大きな動向としては、プロ野球と大相撲の長期低迷とプロサッカー(Jリーグ)の躍進が目立っている。

 2003年までは60%にまで上昇したプロ野球の人気は、2004年以降は低下傾向に転じ、最近では40%台前半まで落ち込んでいる。

 大相撲は、下図のように、1994〜95年には、当時の若貴人気に支えられて(図録3976g参照)、プロ野球をしのぐ50%以上の人気を博していたが、曙、武蔵丸、朝青龍、白鳳と続く外国人横綱時代に移行する中で人気は大きく後退し、2000年代後半からは、ほぼ20%前後の水準で横ばいとなった。

 プロサッカーは、1993年のJリーグ発足以来、起伏はありながら、サッカー・ワールドカップの予選や本選での日本人選手の活躍などを通して人気が上昇し、プロ野球に次ぐ二番人気を確保するまでに至っている。

 こうしたプロスポーツの盛衰に影響を与えているものを思いつくままに列挙すると、(1)各プロスポーツの歴史や経緯、(2)改革が成功しない場合にどんな組織でもたどると考えられる躍進・成熟・衰退という一般傾向が各プロスポーツ団体にどの程度あてはまっているか、(3)時代への適合性@(企業所属チームから地域所属チームへの転換がどの程度進んでいるか)、(4)時代への適合性A(チーム競技としての各スポーツの特性(コラム参照))、(5)時代への適合性B(グローバル時代に対応して国際的な試合や選手の国際的活躍があるか)、(6)時代への適合性C(親世代への子世代の反発などによる世代的な好き嫌い)などである。

 なお、同じ調査による「日本人の好きなプロ野球チーム」については図録3977a参照。


【コラム】ドラッガーの考える競技チーム進化論

 ドラッガーは「ポスト資本主義社会―21世紀の組織と人間はどう変わるか」(ダイヤモンド社、原著1993年)の中でスポーツの競技チームの特性になぞらえて、経営の中でのチーム組織のあり方が時代の進展とともに進化していく姿を叙述している。

 ドラッガーがあげる3種類のチームは以下の通りである。(p.158〜160)

1.野球型チーム(スポーツ以外だと例えば病院の手術チーム)

 固定したポジションを各人が果たせばよい。お互い助け合う必要はないし、サッカー型チームと異なり監督・指揮者も要らない。反復仕事やルールが固定した仕事ではこのタイプが理想となる。近代的大量生産に適したチームである。

2.サッカー型チーム(スポーツ以外だと例えばオーケストラ・チーム)

 野球型チームと同様、固定したポジションをもつが、協働のため、監督・指揮者が必要であり、また、楽譜や下稽古が重要な役割を果たす。まとまりさえよければ野球型チームより柔軟で迅速に動く。

3.テニスのダブルス型チーム(スポーツ以外だと例えば少人数編成のジャズ・バンド)

 ポジションが固定しておらず、互いの領域をカバーし合う少人数(せいぜい7〜9人)のチーム。あらゆるチームの中で最強だが、極めて強い自己規律が必要であり、実際に機能するためには長期にわたって共に働く経験が必要。アメリカ企業の「経営本部」やドイツ企業の「経営委員会」。

 日米の自動車産業は野球型チームで仕事をしていたが「日本は、1970年頃に情報を利用したサッカー型に変えはじめた。その結果、デトロイトは新車の導入の早さにおいても、また柔軟性においても、大きな遅れをとることになった」(p.162)。

 1980年以降デトロイトもサッカー型チームに変化し、いまや、「従来の組み立てラインの野球型チームから、「フレキシブル・マニュファクチャリング」のチーム概念たるテニスのダブルス型チームへ移行をもたらしている」(p.162〜3)。

 こうした見方によれば、スポーツも仕事のやり方とパラレルなところがあるとすれば、時代の変化にあわせて、野球からサッカーの方に人気がシフトしていくのが当然ということになる。

(2014年10月25日収録、2016年9月6日更新、2017年7月21日更新、2018年8月14日更新、2019年6月29日更新、2020年10月16日更新、2022年1月3日更新、6月13日更新、2023年6月23日更新、2024年8月3日更新)


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