職業分類には「宗教家」という項目がある。日本標準職業分類(平成21年12月統計基準設定)による「宗教家」の定義は「神道・仏教・キリスト教又はその他の宗教の、布教、伝道、法要、式典などの祭式の執行、その他の宗教活動に従事するものをいう。」であり、例示として「神職;宮司・権宮司;ねぎ・権ねぎ(禰宜);僧侶;住職・副住職;司教;司祭;神父;修道者;牧師;宣教師;教主;教会長;教導師;布教師;伝道師;教師;神主」があげられ、含まれないものの例示として「宗教研究員〔人文・社会科学系等研究者〕;みこ(巫女)〔他に分類されないサービス職業従事者〕;祈とう師〔同〕」があげられている。

 国勢調査は職業の欄に調査対象者自らが書き入れた職名をいずれかの分類に区分(格付け)するかたちで就業者の職業分類を行っているが、1930年の調査以降の人数をグラフに掲げた。

 戦前15〜16万人ほどであった宗教家が戦後急減し10万人前後となった。敗戦によって「神の国」が否定されたためと考えられる。

 その後、宗教家の人数は横ばいであったが、1970年代から徐々に増加し、1995年には12万人台となった。

 そうした中、オウム真理教によって1995年3月地下鉄サリン事件が引き起こされ、教団代表であった松本智津夫(麻原彰晃)は同年5月に逮捕された。その後、カルト教団、あるいはそう見られがちな宗教教団に対する世間の目が厳しくなった。2000年には95年と比べ宗教家の人数は減少しているが、こうした事情があると考えられる。

 2005年国調の結果速報(1%抽出)では宗教家はちょうど14万人と増加に転じ、2000年の落ち込みもあって職業中分類別の増減率では非常に高くなった。このため、職業別就業者の推移から世相の移り変わりを分析した図録3500で心のケアの時代の到来の予感と述べた。これが日経産業新聞にも取り上げられた(記事はここ)。

 しかし2005年国調の確報(抽出詳細集計)では、11.6万人と若干のプラスに過ぎない結果となった。ちょっと勇み足だったわけである。むしろオウム真理教事件は長く尾を引いていると捉えた方がよいようだ(若者を中心に宗教的な不合理を信じる傾向にある点については図録2927参照)。

 「一度あることは二度ある」とよくいうが、2010年国勢調査の速報(1%抽出)では宗教家が13.7万人と2005年から2.1万人、18.2%と大きく増加したとされ、職業中分類別の増加率で第4位となっていたが、抽出詳細結果(10%抽出)では11.3万人、-2.0%とマイナスという結果となった(図録3500参照)。速報をもとに「ケアの時代が進み、いよいよ心のケアの重要性がましているといえよう」と述べたが、早とちりだったといえる。

 そして2015年である。「三度目の正直」とはこのことか。2015年の国勢調査の速報(1%抽出)では宗教家が14.0万人と2010年から2.7万人、23.8%と大きく増加し職業中分類別の増加率で第4位となった。今回は10%抽出でも増加率上位は確保する予感がする。3回の国勢調査に影響し続けたオウム真理教の影響がやっと薄れて本格的な高齢化時代を迎え宗教による心のケアがいよいよ重要となったといえよう。

 と思ったら、速報の140,400人から抽出詳細結果の115,840人へと再度大幅下方修正が行われ、増加率は23.8%から2.2%へと急落した。またまた早とちりだったわけである。

(2010年4月3日収録、2011年6月29日更新、2013年10月30日国調抽出詳細集計結果による補正、2017年12月15日国調抽出詳細集計結果による補正)


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