世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較する「世界価値観調査」が1981年から、また 1990年からは5年ごとに行われている。各国毎に全国の18歳以上の男女1,000サンプル程度の回収を基本とした個人単位の意識調査である。

 ここでは、自国や世界のことを知る情報源として、テレビニュース、新聞、携帯電話が毎日利用されている比率を図にした(2005年期までのインターネットに代えて2010年期から携帯電話を取り上げた。日本における平均メディア利用時間の推移は図録3960参照。また情報源としての各メディアの世代別の利用度とその変化については図録3961参照)。

 ニュースや情報のメディアとしては、新聞が最も古く、テレビはこれに続き、そしてインターネット、携帯電話はその後、新しく登場した。

 テレビのニュースは、どの国でも最も利用されているメディアであり、ほぼどの国でも70〜90%と毎日利用率は高いが、中には低い国もある。興味深いことに米国は58%と毎日情報源率が低くなっている。

 新聞は、国により情報源としての利用率にかなりの差がある。

 新聞の毎日情報源率が高いのは、日本、スウェーデン、シンガポール、マレーシアといった国である。低いのは途上国や中国などといった国である。オーストラリア、米国といった先進国でも30%台と新聞大国日本で想像するよりは新聞は必ずしも情報源となっていないことが分かる。

 平日に新聞を読んでいる日本人の比率は図録3957にかかげたが、ここでの先週読んだかどうかの比率よりは低くなっている。その日その日の比率と先週のいずれかの日の比率との差と考えられる。

 携帯電話も国により差が大きいが、国によっては重要な情報源となっていることが分かる。カタール、クウェート、リビアといった中東・北アフリカの国、あるいはドイツで毎日情報源率が高い。日本は30%と途上国と比べると低い情報源利用率となっている。携帯電話に頼らなくとも情報を得ることができるからだと思われる。

 対象となった50カ国は、新聞情報源率の高い順に、日本、スウェーデン、シンガポール、マレーシア、カタール、トリニダードトバゴ、オランダ、ドイツ、ニュージーランド、クウェート、スロベニア、エストニア、台湾、ペルー、トルコ、キプロス、アルジェリア、オーストラリア、韓国、チリ、米国、エクアドル、ベラルーシ、キルギス、フィリピン、コロンビア、ルーマニア、メキシコ、ポーランド、レバノン、ウクライナ、ロシア、カザフスタン、パレスチナ、中国、ジンバブエ、ヨルダン、チュニジア、エジプト、ナイジェリア、パキスタン、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、ウルグアイ、アルメニア、ガーナ、リビア、イラク、ルワンダ、イエメンである。

【コラム】情報源相互の相関
     〜インターネット・Eメールは文字文化、携帯電話は無文字文化〜

 世界価値観調査(2010年期)では、情報源については、テレビニュース、新聞、携帯電話のほかに、ラジオニュース、友人同僚との会話、インターネット、Eメールが調査されている。それぞれを毎日の情報源としている国民の割合は、相互に、また所得水準ともどのように相関しているだろうか。以下に、相互の相関係数を掲げた。

 所得水準との相関係数を見るとEメールとインターネットが最も高く、新聞がこれに次いでいる。これらはいわゆる文明国の情報手段であることが分かる。文字理解力が左右する情報手段であることから来ている特性であろう。逆に相関係数が低いのは友人同僚との会話やテレビニュースである。これらは話し言葉の世界(無文字文化)から成り立っており、そのため、国の所得水準とは関わりのない普及度を示しているのである。なお、携帯電話と所得水準との相関係数は0.36と両者の中間程度となっている。

 相互の相関係数の高いものをみると、インターネット、Eメール、新聞は相関が高いのが目立っている。文字文化相互の関連性がうかがわれる。また、携帯電話と友人同僚との会話の相関係数もかなり高い。携帯電話が離れた者同士の会話手段となっていることから当然の結果といえよう。

 同じくIT技術の産物とはいっても、インターネット文化と携帯電話文化とはかなり様相をことにしていることが分かる。

 相関度の低い相互関係にはテレビニュースがからんでいるものが多いことが目立っている。テレビは文字文化とも無文字文化とも関わりなく普及しているのであろう。テレビ文化はインターネット文化や携帯電話文化とは独立しているのである。

相関係数
  新聞 雑誌 テレビニュース ラジオニュース 友人同僚との会話 携帯電話 Eメール インターネット 所得水準
新聞 1.00 0.55 0.25 0.23 0.05 0.32 0.71 0.68 0.71
雑誌 0.55 1.00 0.08 0.12 0.19 0.47 0.49 0.45 0.42
テレビニュース 0.25 0.08 1.00 -0.07 -0.09 -0.09 0.08 0.18 0.08
ラジオニュース 0.23 0.12 -0.07 1.00 0.47 0.34 0.29 0.21 0.12
友人同僚との会話 0.05 0.19 -0.09 0.47 1.00 0.57 0.17 0.07 0.06
携帯電話 0.32 0.47 -0.09 0.34 0.57 1.00 0.51 0.37 0.36
Eメール 0.71 0.49 0.08 0.29 0.17 0.51 1.00 0.94 0.79
インターネット 0.68 0.45 0.18 0.21 0.07 0.37 0.94 1.00 0.78
所得水準 0.71 0.42 0.08 0.12 0.06 0.36 0.79 0.78 1.00
(注)所得水準は2010年の1人あたりGDP(PPPベース)を使用した。相関係数は所得水準データのないパレスチナを除く49カ国のそれぞれを毎日の情報源とする国民の割合データから算出した。
(資料)世界価値観調査、IMF, World Economic Outlook Database, April 2014


相関係数の高いものと低いもの
  何×何 相関係数
相関係数の
高いもの
インターネット×Eメール 0.94
Eメール×所得水準 0.79
インターネット×所得水準 0.78
新聞×Eメール 0.71
新聞×所得水準 0.71
新聞×インターネット 0.68
携帯電話×友人同僚との会話 0.57
新聞×雑誌 0.55
携帯電話×Eメール 0.51
相関係数の
低いもの
Eメール×テレビニュース 0.08
雑誌×テレビニュース 0.08
テレビニュース×所得水準 0.08
友人同僚との会話×所得水準 0.06
友人同僚との会話×テレビニュース 0.05
ラジオニュース×テレビニュース -0.07
携帯電話×テレビニュース -0.09
友人同僚との会話×テレビニュース -0.09
(注)(資料)同上

(2008年11月21日収録、2014年5月26日更新、インターネットの代わりに携帯電話を取り上げた、5月27日コラム追加)


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