国際的な学力調査として関心が集まるOECDのPISA調査では、学力テストに合わせて、就学を取り巻く状況の調査として、学校や学校外の生活や生徒の意識について、直接、生徒に聞く調査を実施している(調査の概要や学力調査の結果は図録3940参照)。ここでは、2015年PISA調査で取り上げられたアルバイト、すなわち学校以外での収入を得られる仕事の有無(就業率)についての調査結果を見てみよう。

 アルバイト調査はOECD36カ国、パートナー国21カ国、合計57カ国の結果を得られるが、図にはそれぞれの区分について値の低い順に国を並べた結果を掲げた。

 高校生1年生がアルバイトをしている比率は国によって大きく異なっている。OECD諸国では、最低の韓国の5.9%から最高のオランダの38.0%まで、OECD以外ででは、台湾の11.6%からチュニジアの47.2%までかなりの開きがある。

 高校生の就業率に国ごとの差が大きいには、大人の就業率とは異なって、生活のための就業というより、小遣い稼ぎや社会経験のためのアルバイトをどれだけ親や学校や社会が子どもに許すかという文化的な側面が大きく左右しているからだと考えられる。実際、図の国の並びをよく見ると、国ごとの高校生の就業率の差には国の経済発展度はほとんど関係していないことが分かる。

 日本は8.1%と全57か国の中で、韓国に次ぐ低さである。OECD平均の23.3%と比較しても3分の1の低さである。

 低い国を見ると、韓国、日本のほか、台湾、中国などが目立っており、いわゆる儒教圏の東アジア諸国において高校生のアルバイトが少ない傾向にある。学校の生徒は本来学業に専念すべきであって、アルバイトはどうしても仕方ない場合に限られるというこれらの国で支配的な従来からの考え方が影響していると考えられる。

 高校生が読書する比率が一般には女子生徒が男子生徒を大きく上回っているのに、儒教圏諸国の生徒では男子生徒も結構読書するというデータが別の年のPISA調査で明らかになっているが(図録3942e)、ここで触れたアルバイト率も含めて、少なくとも、東アジア諸国の学校生徒の生活上の特徴にはやはり儒教の影響が大きく認められるといえよう。近代化のプロセスが大きく異なり、特に日本は明治以降「脱亜入欧」の路線を重視してきたので、東アジア諸国の文化に、今更、儒教の影響という共通項は認められないという考え方もありえようが、学校時代の影響は大人になっても残ると見るのがむしろ妥当な見方であろう。

 図で取り上げた57カ国は、以下である。韓国、日本、スロベニア、フィンランド、フランス、ポルトガル、エストニア、スウェーデン、ドイツ、オーストリア、ラトビア、ポーランド、チェコ、アイルランド、スイス、ルクセンブルク、ベルギー、ギリシャ、英国、OECD平均、チリ、ハンガリー、イタリア、メキシコ、スロバキア、アイスランド、スペイン、米国、イスラエル、ノルウェー、デンマーク、オーストラリア、トルコ、カナダ、ニュージーランド、オランダ、台湾、コロンビア、中国、マルタ、インドネシア、クロアチア、キプロス、ウルグアイ、マカオ、カタール、ブルガリア、シンガポール、ドミニカ共和国、マケドニア、アラブ首長国連邦、ブラジル、ペルー、タイ、コスタリカ、ルーマニア、チュニジア。

(2019年10月6日収録)


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