OECDのPISA調査では、生徒の読解力と読書する比率(勉強でなく楽しみで読む比率)との関係を調べ、両者には相関があるとの結論を出している。また両者の関係を詳しく分析し、少ない時間でも毎日読書を楽しんだ方が一日に何時間も読書するより、読解力に差が出ることを突き止め、毎日の読書へ向かう方向を政策担当者に勧めている。

 ここでは、この設問を調査した38の国と地域について、読書する生徒の比率を男女別に掲げた。ここで読書とは勉強のための読書ではなく楽しみのための読書をいう。

 男女計では、読書率は、最高、上海(中国)の92.0%から最低、オーストリアの50.0%までにわたっている。日本は55.8%と34位と下から6位である。けっして読書好きな国とはいえない。読書以外にスポーツ、テレビ、ゲームなど楽しみが多いからともいえる。読書率の高い国を見ると上から上海、インドネシア、ギリシャ、ロシア、ブラジル、トルコ、メキシコと途上国やそれに近い国が並んでおり、また、下にはオーストリア、オランダ、ルクセンブルクと先進国が並んでいることからもこの点は裏づけられよう。

 この図録で着目したいのは、読書率の男女差である。

 いずれの国でも女子が男子を上回って読書率が高い。世界的に読書が女子生徒特有の楽しみとなっている傾向が分かる。おそらくいずれの国でも男子生徒はむしろスポーツなどの方に楽しみを見出しているのであろう。

 ところが、経済発展度とも関係した読書率の高低とは無関係に、男女差の小さい点で目立っている国がいくつかある。上海、韓国、日本である。華僑の影響があるインドネシアもこの3国に次いで男女差が小さい。これは明らかに儒教文化圏としての特徴と見ることができる。男子の読書の価値を重んじる儒教の伝統が影響しているのだと考えられる。

 同じPISAの調査から「師弟関係と学級秩序との相関」を見ると、日本は韓国・香港・インドネシアと同様に師弟関係が密でなくとも学級秩序が保たれており、やはり儒教の伝統をそこに見出せるという点については図録3942a参照。儒教文化園では高校生のアルバイトも少ない点については図録3942t参照。

 なお、同じデータを散布図表現であらわした図を以下に掲げる。どちらをメインにしようか両方描いてみて比べた片割れである。総ての国名の表記や男女の実際の読書率のデータ表記が難しいことから冒頭の図をメインにした。こちらの散布図の方が、先進国であればあるほど男女の読書率が低下するとともに男女の差が拡大する様子が明解であり、こうした一般傾向から日本や韓国、上海などが乖離している様子も見やすくなっているので掲げておくこととした。


 冒頭の図に掲げた国を読書率の高い順に示すと、上海、インドネシア、ギリシャ、ロシア、ブラジル、トルコ、メキシコ、ハンガリー、カナダ、ニュージーランド、ポーランド、フィンランド、デンマーク、イタリア、イスラエル、ポルトガル、オーストラリア、スウェーデン、アイスランド、韓国、エストニア、フランス、英国、スペイン、チリ、スロベニア、ノルウェー、スロバキア、ドイツ、アルゼンチン、アイルランド、米国、チェコ、日本、ベルギー、スイス、ルクセンブルク、オランダ、オーストリアである。

(2012年5月28日収録)


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