OECDでは世界の15歳児童(高1)を対象に学力(学習到達度)に関して実際にテストを行う調査を3年ごとに行っている。このPISA(Programme for International Student Assessment)調査の2006年の得点順位は図録3940に掲げたが、ここでは科学の問題の得点の分散(平均からの乖離の二乗の平均でばらつき、学力格差を表す)を図示した。分散度は学校間と学校内に分け、学校間の分散の大きい順に国を並べてある。全体の分散はカッコ内に記した。

 2018年調査の読解力得点における学校間・学校内の学力格差については図録3941a参照。

 全体の分散については日本は109とOECD平均より1割弱大きい。英米など英語圏諸国よりは小さいが学力上位のフィンランド、香港、カナダ、台湾がいずれも100以下であるのと比べると学力格差の大きな国となっている。

 学校間の得点の分散(格差)が大きいのは、ドイツ、オランダ、日本などであり、逆に小さいのは、フィンランド、スウェーデン、エストニア、カナダなどである。科学の得点の高い国のうち香港、台湾、日本など東アジアの諸国以外は学校間の分散は小さいのが目立っている。世界一の高得点国であるフィンランドは学校間の分散が最も小さい。

 学校内の分散は学校間の分散が小さいほど大きいという傾向が認められる。また英米、ニュージーランド、オーストラリアといった英語圏の諸国は特に学校内の分散が大きい。

 PISAの結果は全世界的に話題になる。ロンドンの経済雑誌"The Economist"はこの図録と同様のデータを掲げ、こうコメントしている。「ドイツの学校間の分散は大きい。これはドイツではほとんどの学校が児童を能力で選んでいるので予想された通りの結果である。一方、名目的には包括的なシステムを採っている国でも日本のように結果が異なっている場合もある。得点の最も高いフィンランドでは対照的に学校内の分散はほとんどない」(2007.12.8-14号)。

 フィンランドは数的リテラシーの成績が2006年の世界2位から2012年には12位へと大きく低下するなど成績が悪化したので、「落ちた偶像」状態となった。フィンランドの学者の中には「モチベーションの低下、また熱心さを喚起するうえでの数学教師やカリキュラムの失策を非難する者がある。また、フィンランドの教育の平等主義的な性格が実は問題なのではと疑う者も出始めた」(2013.12.7号)。

 学校内の学力差が大きいと学力差にあわせた対応のため先生の数も多く必要と考えられる。日本の場合先生が少ないから学校間の格差を大きくせざるを得ないということも考えられる。教育改革のためには多面的な検討が必要であると考えられる。

 なお、図で取り上げた対象国は15カ国であり、学校間分散の大きい順に、ドイツ、オランダ、日本、イタリア、台湾、香港、韓国、米国、英国、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、エストニア、スウェーデン、フィンランドである。

(2007年12月17日収録、2013年12月19日コメント追加)


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