旧版(2011年調査):図録3936 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
今回のデータは2011年の第1回調査に続く2022年の第2回調査の結果である。第2回調査には31か国・地域から約16万人が参加した(1か国・地域当たり5,200人程度)。 日本では5,165人が参加。住民基本台帳から無作為に抽出された日本国在住の16歳以上65歳以下の個人を対象に、2022年9月〜2023年4月にかけて実施された(未成年の対象者については保護者の同意を得た上で調査を実施)。 テストは、「読解力」と「数的思考力」と「状況の変化に応じた問題解決能力」IT活用力の3点にわたっていた(前回の3番目は「IT活用力」)。 知力の得点分布、格差、ばらつきについては図録3936gを参照。 調査の分野と内容については以下の表を参照されたい。
日本の結果を順位で見ると「読解力」と「数的思考力」は前回の世界1位が、いずれも、フィンランドに次ぐ第2位となった。「状況に変化に応じた問題解決力」はフィンランドと同順位1位だった。
前回のように「世界一頭がいい」とは言えなくなったが、世界トップクラスの知力を日本人が有するという結果だったことには変わりがない。 なお、知力調査と呼ばずに成人スキル(Adult Skills)調査と呼んでいるのは、単なる学力調査でなく、世の中を渡っていく知的な能力の調査という意味を込めているというのが公式見解だろうが、知力調査と呼ぶと生じる可能性がある毀誉褒貶のトラブルを避けるためでもあろう。 順位の全体的特徴を見ると、日本を除いて、北欧で高く、南欧や東欧で低いという一般傾向が認められる。また、PISA調査による学校生徒の学力の結果を比較すると、シンガポールや韓国といった東アジアでも学校生徒の好成績(図録3940)と比較すると成人力は日本を除いてそれほど高くない。 読解力と数的思考力について前回との比較を順位の変化で見てみると、北欧諸国や英国、アイルランドで順位が上昇、フランス、スペイン、韓国、東欧などで順位が低下しているのが目立っている。 (主要国比較) 成人スキルの3分野の順位を主要先進国(G7諸国)および韓国で比較した図を上に掲げた。 主要先進国の中では日本人はすべての分野で2位をかなり引き離して、紛れもなくトップである。 3分野の成績はほぼ並行して上下していることがうかがえる。ただし、ドイツは数的思考力が読解力を上回り、逆に、米国では読解力が数的思考力を上回る傾向があることにも気づかされる。 こうした能力差は成人後の時間的経過で生じている側面が無視できない。図の下には16〜24歳の若い頃の3分野の成績を示した。成人全体より若い頃の方が頭がやわらかいせいか得点は10点ほど高い。しかも読解力と数的思考力のでこぼこが小さい(米国は例外)。 なお、韓国はこの数十年で知力・学力が伸びたせいだろうが、高齢者と若者の知力差が大きい。そのため、成人全体では下から2番目の成績であるのに対して、16〜24歳では下から4番目に順位が上昇する。なお、カナダや米国は昔と比べて知力が上昇していないせいか、韓国とは逆に順位が若者の方が落ちる傾向にある。 (移民の影響) 欧米の場合、移民を除くと結果がかなり違うという点は、誰でも気になることなので移民を除いた平均点もグラフに付加した。 前回2011年には、自国生まれでない生徒(移民)を除いても読解力では日本は相変わらず1位であったが、数的思考力では、移民を除くとスウェーデンに次ぐ第2位という結果であった。移民の影響はこの程度だったということが分かる。 今回は、かなり状況が変化した。移民を含んだデータだと、日本の順位は読解力、数的思考力、問題解決力が、それぞれ2位、2位、1位であったが、親子ともに自国生まれでない非移民ベースだと4位、6位、4位とかなり後退する。日本は移民をほとんど受け入れていないので成績がよかったという側面がクローズアップされてきているのである。 対象31カ国・地域を読解力の高い順に掲げると、フィンランド、日本、スウェーデン、ノルウェー、オランダ、エストニア、ベルギー(フランドル地方)、デンマーク、英国(イングランド)、カナダ、スイス、ドイツ、アイルランド、チェコ、ニュージーランド、米国、フランス、シンガポール、オーストリア、クロアチア、スロバキア、韓国、ハンガリー、ラトビア、スペイン、イタリア、イスラエル、リトアニア、ポーランド、ポルトガル、チリである。 (2025年1月10日収録)
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