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旧版(2011年調査):図録3936a | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「読解力」と「数的思考力」は、6段階(高い順に、レベル5からレベル1、レベル1未満)、 「状況の変化に応じた問題解決能力」は、5段階(高い順に、レベル4からレベル1、レベル1未満)で評価されている。 (習熟度レベルの分布) 第2回調査(2022年)の平均得点とその国別順位については図録3936dで示したが、ここでは、各国について、3分野のスキルの得点分布の状態を知力格差と呼び、習熟度レベルの構成比、及び得点のばらつき指標である変動係数(標準偏差÷平均値)によって調べてみよう。
冒頭の表示選択で選べる3分野の図は、OECD報告書で各国の知力格差の状態を示すために作成されている習熟度レベルの構成比グラフである。レベル1未満とレベル1をマイナス方向、レベル2〜レベル5(または4)をプラス方向の積み上げ棒グラフで示しているところは報告書と同じであるが、レベル1以下の構成比とレベル5の構成比の数値を付記したのは、当図録の独自スタイルである。また、移民の影響を知るため、前者の数値に非移民の数値を示したのも当図録オリジナルである。 3分野いずれも、低い習熟度(レベル1以下)の割合は参加国中最少、高い習熟度(レベル4以上) の割合は参加国中第2位(第1位フィンランド)となっている。 つまり、高い知的レベルも少なくないが、むしろ、低い知的レベルが少ないのが、世界の中で目立った日本の特徴と言えよう。 最高のレベル5の構成比を確かめると、読解力では日本は2.5%とフィンランドの6.2%を大きく下回って2位である。数的思考力では日本は3.5%とフィンランドの5.3%、オランダの4.2%に次ぐ3位である。 図録3936dで見たように、平均得点のランキングでは日本がフィンランドに次ぐ第2位(問題解決力では同順1位)であるが、フィンランドが日本を上回っているのは、最高レベルの知力保持者が多いからであることが分かる。 レベル1以下の構成比について、移民の影響を取り除いた結果数値を調べてみると、日本が最少と言うイメージは大きく崩れる。非移民の同値は、読解力では日本は9.2%とスウェーデンの4.0%、ノルウェーの6.6%、フィンランドの6.8%、オランダの8.3%を下回る5位に過ぎない。 数的思考力でも日本は非移民のレベル1以下の構成比は5位、問題解決力でも4位であるにすぎない。 すなわち、日本の知力レベルが低い方が少なく、全体として底上げされているのは、ヨーロッパのように移民を多く受け入れていないからに過ぎないという側面が大きいのである。 ページ末尾にグラフを掲げたが、移民1世より移民2世の知力はかなり上昇し、非移民のレベルにかなり近づく傾向がある(カナダやイスラエルのように移民2世の方が非移民より知力が高い場合もある)。 つまり、移民先の国で教育を受けることによって、知力レベルの同化が進んでいくのである。移民を受け入れると人口減少や少子化、高齢化を遅らせることになる。一方、こうした多様性を引き入れると確かに平均的な知力レベルは低下し、一時的には社会政策上の困難も拡大す。しかし、日本のように異質性の排除で高レベルを保ったとしても将来的な展望では、長期的に見れば必ずしも有利とは限らないとの印象を持たざると得ない。 (知力のばらつき) さらに、各国の成人間の知力のばらつき度合を変動係数(標準偏差÷平均得点)で見てみよう(下図参照)。日本はスロバキアに次いで知力のばらつきが小さい国であることが分かる(数的思考力では最もばらつき小さい)。G7諸国の中では、2位のカナダを引き離してばらつきが小さいのが目立っている。G7諸国の中では米国の知力のばらつきが最も大きく、フランス、ドイツがこれに次いでいる。 最後に、知力のばらつきと知力の平均的な高さとの相関図を下に描いた。ばらつきの大きな国ほど平均的な高さが低く、逆にばらつきの小さな国ほど平均的な高さが高いという傾向が成り立っている(後者の代表が日本、前者の代表がチリ)。もっとも、フィンランドや米国、ニュージーランドのようにばらつきが大きい割には平均的な高さも確保できている場合もあれば、スロバキアやリトアニアのように格差は小さいが平均的な高さは低い場合もある。 対象31カ国・地域を図の読解力の上から順に掲げると、日本、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、オランダ、英国、デンマーク、ベルギー、カナダ、エストニア、アイルランド、スイス、ドイツ、スロバキア、チェコ、ニュージーランド、クロアチア、米国、フランス、オーストリア、シンガポール、韓国、スペイン、ハンガリー、ラトビア、イタリア、イスラエル、リトアニア、ポーランド、ポルトガル、チリである。 (2025年1月12日収録)
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