日本人ノーベル賞受賞者の出身高校・出身大学
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2021年真鍋氏受賞の際の同様のネット記事はこちら(AERA dot.)。ド田舎だからこそ画期的な研究者が生まれるというネット記事はこちら(現代ビジネス)。こちらでは循環器医師の職を大きく失わせたとも言われるペニシリン並みの画期的コレステロール低減薬スタチンを微生物から発見した、ノーベル賞候補の1人遠藤章氏のことも紹介されている。 出身高校を見ると、ほとんどが、地方の県立高校である。私立は江崎玲於奈(敬称略、以下同様)の私立同志社高校と野依良治の私立灘高校のみであり、東京は、驚いたことに、利根川進の都立日比谷高校のみである。 しかも、早い時期には、東京でないまでも、大阪や京都も多かったが、近年では、それ以外が多くなっている。 近年では、東大合格者ランキングの上位に顔を出すような高校出身者はまったくいない。 都会ずれせず、地方で思いを凝らし続けた高校生でないとノーベル賞にまでは達しないようだ。 作家の村上春樹氏の文学賞受賞が期待を集めているが、村上氏の出身高校は県立神戸高校であり、こうした傾向の例外ではない。 出身大学を見ると、これまた驚いたことに、私立大学出身者が一人もおらず、すべて、国立大学出身者である。国立大学の中でも、当初は、京都大、東京大が多かったが、近年では、地方の国立大学出身も増えている。ノーベル賞は、各界に多くの人材を輩出している慶應、早稲田といった有名私立大には無縁の世界となっている。 作家の村上氏が出た大学は早稲田大であり、この点で受賞がかなわないのかもしれない(冗談)。 自然科学分野のみで京都大と東京大をカウントすると、京都大が8人、東京大が6人と京都大優位である。益川敏英、小林誠、山中伸弥の3氏は、それぞれ、元・京都大基礎物理学研究所長、元・京都大理学部助手、現・京都大iPS細胞研究所長なので、在籍したことがあるゆかりの者というレベルでは、京都大が11人と東京大を圧倒している。 受験競争に勝ち抜くというパターンからは、やや、ベクトルのずれた方向の先にノーベル賞があるようだ。 自然科学分野のノーベル賞受賞者を一人も出していない韓国では日本人の受賞者が発表されるのを複雑な気持ちで見守っている。韓国でも基礎研究にもっと力を入れるべきだという前向きな受け止め方ももちろんある。2019年の受賞者発表に際して韓国の主要新聞の1つである中央日報は社説で次のように論じている。 ノーベル賞につながるような研究には「蓄積の時間が必要だ。このためには一分野を深く掘り下げた科学者はもちろん、研究を支援する社会的システムが必ず定着する必要がある。韓国の現実は道のりが遠い。教育や文化、政策がいずれも実用一辺倒だ。教育は直ちに大学入試に役に立つ国語・英語・数学に焦点が当てられている。幼い生徒が創意的に考え、それを発展させる余裕を許さない。粘り強い研究よりは直ちに使える技術を研究することにこだわっている。日本と米国のような先進国から見習って生産技術の発展に固執してきた韓国式発展モデルの限界だ。政策も基礎技術よりは直ちにモノを作ることに役立つ実用技術を開発することに重きを置いている。企業はもちろん政府の研究政策が純粋科学に目を向け始めた時間も短さすぎる」(日本語版、2019年10月11日)。 日本でも私立の受験校には似たような反省が必要なのかもしれない。 この図録のテーマに関連して、ノーベル賞、五輪金メダル、内閣総理大臣の3つのタイトルホルダーを同時に輩出した「三冠王」ともいうべき高校はどこかという雑誌記事をみつけた(アエラ、2024/10/17)。それによれば、該当する高校は、都立日比谷高校、県立横須賀高校の公立高校2校のみである。すなわち日比谷高校は、1987年利根川進、1932年西竹一(馬術)、1939年安倍信行の3氏であり、横須賀高校は、2002年小柴昌俊、1964年猪熊功(柔道)、2001年小泉純一郎の3氏である。 自然科学分野のノーベル賞受賞者の国別ランキングについては図録3933参照。 (2017年5月16日収録、2018年10月1日・2日更新、10月4日コメント改訂、2019年10月9日更新、10月11日中央日報記事、2021年10月5日更新、10月8日村上春樹氏、2024年8月4日スタチン記事、10月18日三冠王)
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