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まず、項目別の結果を30か国平均(単純平均)と日本の結果を示した。 設問文は「次の各分野については、教師や学校と保護者のどちらが主に責任を負うべきだと思いますか? 」であるが、この図では「主に教師や学校」と回答した割合、すなわち学校教育が主として責任をもつべきだとする回答率について、世界30か国平均の高い順に項目を並べた。 最も回答が多かったのは、世界も日本も「基本的な読み書きの能力と理数系の基礎知識を教えること」、すなわち日本で言い慣わされている表現でいえば「読み書きソロバン」であった。基本的な学力習得が学校教育の基本原理である点については世界の共通理解となっているといえよう。 回答率は世界が73%、日本が65%であり、また日本の順位は30か国中24位となっており、学校教育の責任に関して日本人の意識はやや低いようにも見える。ただし、後段でも見るように、それでは日本の場合家庭教育の役割が大きく考えられているかというとそうではなく、どちらも重要と考える人が多いと見られる。 世界の回答率2位は「キャリアに関する指導をすること」の70%であり、職業教育のような学校を出た後の生徒の人生に役立つ教育が重視されている。日本は52%と比率が低く、順位も世界最下位となっている。日本の場合、職業教育など学校を出た後に役立つ教育といういう側面への意識が低いと言わざるをえない。 世界の回答率3位〜4位はデジタルリテラシー、いじめ対策という、時代の変遷とともに教育課題として強く意識されるようになってきた項目である。 日本の場合は、いじめ対策についての学校教育への期待が62%と世界平均の59%より高くなっており、学校教育上の課題として大きく意識されていることがうかがわれる。 これに対して最近、必要性が叫ばれるようになったオンラインの安全性も含めたデジタルリテラシー教育については世界の62%に対して日本は45%、順位も世界最下位と意識が低いと言わざるを得ない。日本ではオンラインで処理する生活分野の広がりがやや小さく、ネット上のリスクも他国よりもやや小さいからという側面もあるかもしれない。 表示選択でいくつかの項目の各国データを掲げた。 「基本的な読み書きの能力と理数系の基礎知識を教えること」すなわち「読み書きソロバン」という学校教育の一丁目一番地については、さすがに、主に教師や学校の責任だとする回答がすべての国で主に保護者の責任だとする回答を上回っている。 ただし、インド、シンガポール、インドネシア、マレーシアといった国では、主に保護者の責任だとする回答が30%を越えて大きくなっており、家庭教育を重視している。こうした国のサンプルが富裕層に片寄っている影響もあり、金持ちは学校教育に頼っていられないという意識が強いのであろう。 日本の場合も主に教師や学校の責任だとする回答は低く、こうした国に近い比率であるが、日本の場合は家庭教育重視の回答も少ない点で異なっている。日本の場合は、どちらが主ともいえないという意識が強いと言えよう。 「いじめへの対処」については、英国では、主に教師や学校の責任だとする回答が73%と最も高く、主に保護者の責任だとする回答の20%を大きく上回っている。他方、トルコでは前者が38%と少数派であり、後者の55%と下回っている。 英国に近い意見は、スウェーデン、スペイン、ベルギー、韓国と言った先進国に多く、トルコに近い意見は、ルーマニア、インド、ブラジル、メキシコなど全体として途上国に多い。アジアの中でもマレーシア、インドネシアなどマレー系諸国では例外的に先進国に近い。 主要先進国(G7諸国)では、ドイツ、フランス、日本などは中間的であり、カナダ、米国、イタリアなどは途上国に近い意見が多い。 「社会的スキル指導」については、「いじめへの対処」とは正反対に、マレーシア、インドネシア、ペルーなど途上国では学校に期待するところ大であるが、ドイツ、オランダ、英国、スウェーデンなどヨーロッパ先進国では、むしろ、保護者の責任という意見が多数派である。 日本は主に教師や学校の責任だとする回答は42%と世界各国平均と同じだが、主に保護者の責任とする回答は39%と30か国中ランキングが最低である。日本人は子どもの社会的スキルの成長についてひとまかせで、親としての責任感に欠けると言わざるを得ない。 「デジタルリテラシー」については、ハンガリー、ルーマニア、コロンビア、チリといった東欧や南米の諸国で教師や学校への期待が大きい。他方、米国、カナダ、そして日本は教師や学校への期待が低い点が目立っている。日本の場合は、米国やカナダと異なり、だからといって家庭で親が子どものデジタルリテラシーに責任を持とうという意識も低く、放置状態であるのが困ったものである。 「性教育」についての回答は、先進国、途上国といった経済発展度による違いはない点が特徴である。 例えば、性意識の高いことで知られるスウェーデンとオランダを比較すると、スウェーデンでは主に教師や学校の責任だとする回答が81%と最も高く、主に保護者の責任だとする回答の27%を大きく上回っており、性教育は教師や学校の責任と考えられている。ところが、オランダでは前者が24%であるのに対して後者は68%と高く、性教育は親の責任と考えられている。 スウェーデンでは高い税金を払っているので、貧困救済でも性教育でも政府や公的機関に責任があると考える傾向が強いようだ(図録1102コラム参照)。 日本の場合は、主に保護者の責任だとする回答は33%と平均程度だが、主に保護者の責任だとする回答は40%と最低に近く、どちらかを選択しなかった割合が高い。つまり、子どもの性教育に対する意識が低い(余り考えていない)と言えよう、 当図録で取り上げた30カ国は、英国、マレーシア、スウェーデン、スペイン、ベルギー、韓国、インドネシア、ハンガリー、オランダ、ドイツ、シンガポール、南アフリカ、フランス、日本、ペルー、アイルランド、オーストラリア、ポーランド、タイ、カナダ、米国、イタリア、アルゼンチン、コロンビア、チリ、メキシコ、ブラジル、インド、ルーマニア、トルコである。 (2025年5月7日収録)
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